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【海外発!Breaking News】「精神疾患を持つ人が警察に殺害される可能性は16倍」のデータ 拳銃自殺を図った男性、特殊部隊に射殺される(米)

TechinsightJapan 2020年7月26日 14時10分

アメリカで昨年、銃で自殺を図ろうとした男性が警察の特殊部隊に射殺されてしまうという事件が起きた。このほど男性の妻が警察と市を相手取って訴訟を提起したことで、当時の詳しい状況が明らかになった。『WMC Action News 5』『VICE』などが伝えている。

米テネシー州シェルビー郡コリアーヴィルのある家で昨年6月3日午前8時頃、この家に住む当時59歳のデイヴィッド・リチャード・ホールさん(David Richard Hoal)が警察の特殊部隊によって射殺された。

デイヴィッドさんは精神的な問題を抱えていたことから自殺願望を抱きはじめ、銃を持って裏庭で自らの命を絶とうとしていた。この時、妻のアリス・ホールさん(Alice Hoal)がデイヴィッドさんの自殺を止めるために警察へと緊急通報したのだった。

アリスさんはオペレーターに「夫は鬱状態にあるも薬は服用しておらず、自殺願望から銃を持って命を絶とうとしている」と伝え、デイヴィッドさんを救ってもらうために状況を詳しく説明した。

ところが現場には、デイヴィッドさんを説得するための危機対応チームではなくコリアーヴィル警察の特殊部隊(SWAT)がやってきたのだ。そして彼らは裏庭にいたデイヴィッドさんを包囲しライフル銃を構え、銃を捨てるよう指示した。

デイヴィッドさんは持っていた銃を捨てることはなかったが、銃口は地面に向けたままでただ立ち尽くしていた。しかし特殊部隊はこれを危険とみなし、指示を出して5秒も経たないうちにその場でデイヴィッドさんを射殺してしまった。その瞬間、アリスさんは驚きと悲しみで絶叫したという。

その後アリスさんは警察の対応に納得がいかず、先月1日にテネシー州の裁判所に訴訟を提起したが、今月に入ってから彼女の意志により訴訟を連邦裁判所へと移したようだ。

コリアーヴィル警察側の弁護士であるエド・マッケニー氏(Ed McKenny)は、今回の件について状況は避けられなかったとし、警察の対応とデイヴィッドさんを射殺したオースティン・ワゲスパック巡査(Austin Waguespack)について次のように擁護した。

「これは非常に厳しい状況だったと言えます。ホール氏は銃を持っており、ワゲスパック巡査と他の警察官は『当時の彼は興奮して怒っているように見えた』と話しています。あの時ホール氏は、彼の妻と他の警察官に対して危害を加える危険がありました。」

「銃を捨てるよう指示を出してから5秒も経たずに発砲したとありますが、相手が銃を持っている時の5秒間というのは決して短い時間とは言えないのです。私達はご家族に対してお悔やみの気持ちを持っているとともに、この結果は残念だと思っています。しかしホール氏は誰かを傷つけていたかもしれないのです。」

ちなみに米トリートメント・アドボカシーセンター(Treatment Advocacy Center)の2015年の調査で、警察が対応する事態に直面した深刻な精神疾患を持つ人は、精神疾患のない人と比較して警察によって命を奪われる可能性が16倍も高いというデータが発表されている。

また『Washington Post』が2015年から調査を行っているデータでは、アメリカ国内で警察官によって命を奪われた人の約4分の1が精神疾患を患っていたとのことだ。昨年だけでも999人が警察官に殺害されたが、そのうち197人が精神疾患を患っていたことが明らかになっている。

今回亡くなったデイヴィッドさんは白人男性で、彼を知る友人達は思慮深い穏やかな男性だったと話している。

画像は『WMC Action News 5 2020年7月14日付「Collierville woman sues town, officer for fatal shooting of husband」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)

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