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全国学力テスト結果公表の是非

JIJICO 2014年8月31日 15時0分

全国学力テストの結果、情報公開の方向にシフト

全国学力テストとは、小学6年生・中学3年生を対象にした「全国学力・学習状況調査」のことで、2007年度から全員参加式のテストとして始まりました。学力テストの目的は、その結果を教育現場に生かし、児童生徒の学力向上に役立てることにあります。文部科学省は、「学校間の序列化や過度の競争を招く」「学力テスト対策に授業が偏る」などの懸念から、これまで市町村教育委員会による学校別成績の公表を禁止してきました。しかし、「到達度を知るために公表は当然」という考え方があり、独自の教育改革に取り組む地方自治体からは公表に積極的な意見が出始め、都道府県教育委員会も市町村教委の同意があれば公表できるようになるなど、現在は情報公開の方向にシフトしています。

成績公表によって、「教育への関心が地域で高まる」という前向きな考え方がある一方、学校の序列化の弊害を避け、学力向上に生かす道を模索することが重要とする慎重な姿勢が多くの教育委員会、学校現場で見られることも事実です。

数字だけでなく、本質的な人間的なところに目を向ける必要がある

そもそもテストとは何なのか。「ある分野の理解度を表す物差し」と定義できます。「出来る子」「出来ない子」を二元論で分類したり、才能を評価したりするものではありません。今どこが出来ていないのか、なぜ出来ていないのか、それを信頼できる先生と分析するためのものです。そして、過去の分野に欠けている部分があれば、戻り学習することです。過去に戻れる学習環境さえあれば、全てのこどもたちに基礎学力をつけることは容易です。

テストの点数・偏差値という数字ばかり見るのではなく、「もっと本質的な人間的なところに目を向ける必要がある」。私たち教育に携わる人間は、このことも伝えていかなければなりません。改革のためには必ずリスクが発生するものかもしれませんが、教育は子どもの将来、そして日本の未来に直結する分野です。学力テスト結果公表の是非を論じることは、地方自治の在り方、学校間の競争の在り方など、地域住民が考える「地方自治の時代」を確かに築くための重要なステージと捉えることが大切なのではないでしょうか。

(田中 正徳/塾講師)

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