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仕事による「心の病」労災認定が過去最多

JIJICO 2015年8月18日 14時0分

長時間の時間外労働が「心の病」を発症する大きな要因

6月25日に厚生労働省が公表した、平成26年度「過労死等労災補償状況」によると、仕事上のストレスが原因でうつ病などの「心の病」を発症し、「労災を請求した人数」と「その請求が労働災害と認められた人数」がともに過去最多であったことが分かりました。

精神障害の出来事別支給決定件数(労働災害と認めた原因別)の類計でみると、「事故や災害の体験・目撃(病気やケガを含む)」が最も多く、次いで「仕事の質・量(仕事内容等の大きな変化・1カ月80時間以上の時間外労働等)」、そして「対人関係(嫌がらせ、いじめ・上司とのトラブル等)」が続いています。

最も多い「事故や災害の体験・目撃」は明らかな労働災害であり、原因としては従来から多く報告されています。このことから、「心の病」による労災の請求及び認定件数が近年増加傾向にある原因として「仕事の質・量」、次いで「対人関係」の問題が強く関係していることが読み取れます。仕事の量、すなわち長時間の時間外労働が「心の病」を発症する大きな要因であるとの論調が多く見られる理由です。

労災認定の内、月80時間以上の時間外労働を行っていた人は約35%

確かに長時間の労働は心身を疲弊させます、実際に労災認定された件数の内、月に80時間以上の時間外労働を行っていた人は約35%にものぼり、「心の病」の発症に強く関係しているように思われます。

しかし、長時間労働という状態だけを「心の病」の原因と考えるのは少し安易な気がします。なぜなら同じ長時間労働でも自らの意思で行ったものと、上司からの命令・法外なノルマ、人員の不足などにより本人の意思に反してそれを行わざるをえなかったものとでは、本人が受けるストレスの量は大きく異なると考えられるからです。

自責的かつ他者配慮的といった性格の人がストレスをため込みがち

うつ病など「心の病」が起こるのは、ストレスの慢性化によってセロトニンなどの脳内物質が不足することに起因すると考える説が有力です。そしてこのストレスを感じる度合いは同じ状況下でも個々人によって差があるのです。

また、うつ病など「心の病」を発症しやすい人の性格傾向として「真面目で責任感が強く人と揉めごとになるのなら自分が我慢する」「頼まれると嫌と言えない」など、一般的には周りから信頼が厚く高い評価を受けている人が多いのです。そして自責的かつ他者配慮的であるため、仕事が進まない状況や遅れを「自分が何とかしなければ」と考え、すべてを一人で抱え込む傾向が強くストレスをため込みがちです。

またこのようなタイプの人は、意に反した要求にも「NO」と言えないためパワーハラスメントの対象にもなりやすい。このように考えれば「仕事の質・量」に加えて「対人関係」も含めた職場の環境と、働く人のストレスを感じやすい性格傾向が「心の病」を発症させる原因なのでしょう。

追いつめられて病を発症する前にストレスから逃げる勇気を

労災保険を受け取ることは働く人の権利です。しかし自らの心身の不調と引き換えにいくばくかの支給を受けるくらいなら、不調を感じたら「休暇をとって心身を休める」「明らかに無理な要求は断る」「人員不足などの環境に問題があれば増員を提案する」など、ストレスに立ち向かうよりも、ストレスから上手に逃げる勇気を持つことが大切なのではないでしょうか。

もちろん職場内で、上記のようなことが簡単にできるとは考えていません、それを行うことによってあなたが不利益を受け、望まない立場に追い込まれることもあるでしょう。しかし無理を続けて「心の病」を発症し長期に仕事を休む状況になるよりは、短期で回復し元気に働ける方が長期的に見れば職場のためでもあるし、何よりもあなたが頑張って働いているのはあなた自身が健康で幸せであるためです。

追いつめられて「心の病」を発症する前に少しだけ自分をいたわる勇気を持ち、職場全体でストレスの軽減を考えていけるような環境づくりが急務なのではないでしょうか。

(西尾 浩良/心理カウンセラー)

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