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歯周病は口の中だけの病気にあらず!放っておくと怖い歯周病について

JIJICO 2016年11月7日 15時0分

心臓の冠動脈から歯周病菌の遺伝子が…

90年代までは、歯周病は口の中だけの病気と考えられてきました。
しかし、遺伝子解析技術の進歩などにより、口以外の全身の様々な部位から、本来そこには存在しないはずの歯周病菌の痕跡が見つかるようになり、歯周病が全身にもたらす影響がクローズアップされています。

実際に心筋梗塞の患者さんの冠動脈(=直接心臓の筋肉に栄養や酸素を送る主要な動脈)から歯周病菌が検出された報告例もあり、動脈硬化などはストレスや生活習慣に起因しているだけでなく、別の要因として、細菌が産生する動脈硬化を誘導する物質の存在が明らかになってきました。

歯周病が早産や低体重児出産のリスクを高める

また、循環器以外にも気道に入れば気管支炎や、肺炎を引き起こしたり、間接的ではありますが、細菌感染で生じたプロスタグランジンなど炎症性物質が子宮を収縮させ、早産の要因にもなると言われています。

実際に早産と低体重児出産が歯周病に罹患している母親に多いことが統計的に明らかになっています。
妊娠中は歯周病になり易く、進行しやすいために母親の歯周病菌が血中に入り、胎盤を通して胎児に直接感染するのではないかと推測されています。
その危険率は、歯周病がない妊婦さんと比べると実に7倍にもなるといわれ、タバコやアルコール、高齢出産などよりもハイリスクとも考えられるようになりました。

歯周病と糖尿病は悪友みたいなもの…もはや国民病です

歯周病と関係が深い疾患の代表格と言えば、ずっと以前より糖尿病が知られています。
歯科的に歯周病は罹患率の非常に高い疾患ですが、日本糖尿病学会によると我が国の糖尿病患者数は急増中でして、現在なんと約890万人が罹患していると推定され、平成19年国民健康・栄養調査によると予備群を合わせて約2,210万人などとも言われていますから、もはや国民病と言った方が正しいのかもしれません。

糖尿病が油断ならない疾病である理由は、「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」「糖尿病神経障害」など様々な合併症を生じる可能性がある点で、これらはいずれも細小血管障害=末梢血管、毛細血管が脆くなる病気と言えます。
「細かな血管が脆くなる」=身体の末端組織の血液循環が悪くなりますから、栄養や酸素がしっかり運ばれずに、傷が治りにくい、化膿しやすい体質になることに繋がります。

糖尿病の方から見ると、歯周病は合併症の一つと言われてきましたが、逆に歯周病の患者さんは、非歯周病者に比べて糖尿病の有病率が高いこと、糖尿病発症のリスクが高いことも確認されています。
さらに歯周病をコントロールせずに放置しておくと、血糖値の上昇を認め、血糖コントロールが悪化することも報告されています。
これは歯周病(歯周炎)という慢性の炎症を起こした歯肉の病巣から、血液を介して全身へ炎症性物質が放出され、インスリンの働きを邪魔することによるとされています。

糖尿病と歯周病は互いに悪影響を及ぼし合う間柄ですから、定期健診などで糖尿病を指摘された患者さんには、歯科検診も忘れずに受けていただきたく思います。
歯周病を治療し炎症を改善することで、血糖コントロールが良くなることも証明されており、内科的治療の助けにもなるのではないでしょうか。

<参考資料>
1)日本臨床歯周病学会HPより「国民の皆様へ」「歯周病が全身に及ぼす影響」
2)QOL向上のために歯科医療ができること「口腔が全身の健康に及ぼす影響」
3)鴨井久一, 花田信弘, 佐藤勉, 野村義明編:Priventive Periodontology; 医歯薬出版, 東京,2007

(飯田 裕/医学博士・歯科医)

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