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創業90年3代目ハンコ屋が『脱ハンコ騒動』から観る時代の転換点

JIJICO 2020年10月15日 7時30分

コロナ禍で進むデジタル化への急激な変化

この100年、私たち人間は人類史上まれに見る技術革新や経済における速い変化に翻弄されてきました。そしてそれはコロナ禍でさらに加速されました。コロナ禍での突然のロックダウンによりリモートワークに急激にシフトした社会システムを皮切りに、政府主導でデジタル社会への移行推進が急速に進められた感があります。30年前、パソコンが世の中に普及し始めた頃、『これからはペーパーレス社会になる』と言われはじめ身構えた記憶があります。その後『国民総背番号制』への議論や、2016年頃からすすめられたマイナンバー制度は導入実績も今だ20%に満たないなど、『どこまで管理されるのだろう』や『デジタルへの不信感』や『面倒な感じ』があって思う様に進んでいないのは『根強い抵抗感』があるのだろうと思います。昨今のデジタル口座の不正送金の事件も記憶に新しいところです。

脱ハンコへ世論喚起の大キャンペーン

『ハンコを押すために出社しなければなりません!』 『リモートワークの妨げになっているのは押印です!』 『なぜこんな古い習慣が・・・時代錯誤です!』

TVニュースや新聞にも大々的に取り上げられ『そうだ!そうだ!』と言う人も多いのかもしれません。瞬時に世界中を飛び交うデジタル文書の機敏性、対面することなく情報交換できる便宜性ビッグデーターのデーターベースとしての活用性、デジタル化を進めることによる新たな可能性としての期待は大きいのだと思います。一方で急速に進む脱ハンコに対して『把握しきれない不安要素』を感じている人も多いのではないでしょうか?

暮らしの中で印鑑はなくなるのですか?

実際は、全ての押印がなくなるのではなく、行政手続き文書の中で『不要と思われるものは廃止していきましょう。』と言うもので、印鑑証明が必要な『実印』は今後も残っていくものと想像しています。かえって『自分自身の意志を示すもの』として、『どこにでもあるような既製の認印ではなく』姓名を刻した独自性のある、他に無い『唯一無二の自分だけの印鑑』は持っていた方が自分の意思をしっかりと示すという点において良いと思います。また、遺言や財産の相続などの分野における印鑑の必要性については、まだ充分な議論になっていないというのが実情です。

様々な用途があるハンコ

印鑑の役割は紙面上で本人の意思を証明する役割として、長く社会制度として親しまれてきましたし、個人だけでなく団体や会社や法人の意思を示してきた役割りも持っています。その中には重要度の高いものもあれば、重要度の低い軽度なものもありました。重要度の低い慣例的に行われていた押印を廃止するという目的も今回の政府による押印廃止議論に含まれているのではないかと想像しています。ただ、その代わりに『どうやって証明するの!』の疑念は残ると思います。例えば文書の出どころは『本当にここなの』?『なりすまし』や『偽造』『偽装』がある中で『何を信じたらいいのだろう』はどうやって担保するのでしょうか。

電子認証システムは安全なシステムなのか?

電子認証システムのネット広告を見ることが多くなりました。認証システム運営会社と契約し、第三者認証機関を間にはさんで暗号化した文書をクラウド上に保存するサービスの様です。月額課金のサブスクリプション方式となり月額/費用負担は大きくなると思われます。もしも解約した場合クラウド上の契約書はどうなるのか?デジタル特有の『便利だけど危うい』という『危ういという部分』の特性は解消できるのか?日進月歩の開発で新たな領域を迎えることができるのか混沌とした時間はなおも必要なのではないかと思えます。

デジタルとアナログの二本柱

デジタルとアナログ両方に優位性と欠点がそれぞれあり、それを補い合えるのが『両方を使うこと』だと思います。人類史は新たな局面に入っているのだと思います。刀や鉄砲で戦っていた時代からの変換、油から電気へのエネルギー源の変換、ちょんまげから西洋髪形スタイルへの変換、和装から洋装への変換、馬車から自動車への変換、人類は様々な転換を経験してきました。金融・エネルギー・貨幣・文書がAIやロボット・5G・ブロックチェーンなどのデジタル技術を用いてどの様に変化をしていくのか?文化はどのように位置づけられていくのか?我々はどうこの変化に対応していかなくてはならないのか?日本の国内事情だけでなく世界的な秩序の動向にも関心を寄せながらこの問題に対して考えていく必要があるのではないかと考えています。

昭和4年創業三代目小林印房 小林仁の脱ハンコ騒動に寄せる私感を記してみました。

(小林 仁/記念品オーダメイド)

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