2020年10月22日よりレクサス初EVとなる「UX300e」の商談申込み(抽選)の受付がスタート。UX300eとは、どのようなモデルなのでしょうか。
■今年度は限定135台!? レクサス初のEV「UX300e」とはどんなクルマ?
2019年東京モーターショーでレクサスは電動化ビジョン「レクサス エレクトリファイド」を発表しました。
その内容を要約すると「電動化技術用いてもう一度クルマの原点に立ち戻り、高級車の有り方を根本から変える」ということです。
とはいうものの、実はレクサスはプレミアムブランドのなかではいち早く電動化を進めているのはあまり知られていません。
今から15年前の2005年に登場した「RX400h(日本ではハリアーハイブリッド)」は、3.3リッターV型6気筒エンジン+フロントモーター+リアモーターを統合制御するシステムにより、「ハイブリッド=パフォーマンス」をアピールしたモデルで、何とその年のニュル24時間にも参戦をおこなっています。
このRX400hを皮切りに、レクサスはハイブリッドモデルをラインアップ。
現在はLX/GX以外のすべてのモデルに設定済みですが、次のステップとなるのはEVです。
その第一弾となるのが、今回紹介する「UX300e」で、このモデルはハイブリッドで20年以上に渡る電動化技術を持ちながらも、EVに関しては慎重に見ていたトヨタ/レクサスが出したひとつの答えといってもいいでしょう。
このUX300eはどのようなモデルでしょうか。今回発表された詳細と合わせて、筆者(山本シンヤ)が以前試乗したプロトタイプ(バージョンL相当)の印象を交えて解説していきたいと思います。
エクステリアは右側に追加された給電ポート(右側は普通充電、左側は急速充電)と、専用デザインのアルミホイール。
インテリアは走行可能距離や回生ブレーキ力インジケーターが見やすく表示される専用メーターや電子シフト化されたことでスッキリしたセンターコンソール周りが異なる程度で、ガソリン/ハイブリッドとの見た目の違いは僅かです。
室内も後席ヒールポイントが若干上がっている以外は、居住性/積載性(ローデッキ仕様)共にガソリン/ハイブリッドとほぼ同じです。
これに関して筆者はこう解釈しています。レクサスにとってEVは決して特別なモデルではなく、ガソリン/ハイブリッドに加えてパワートレインの選択肢がひとつ増えたと。
モーターは203馬力/300Nmを発揮、ホイールベース内の床下に搭載されるリチウムイオンバッテリーは54.4kWhの容量となっています。
実際に乗るとEVの「アクセルレスポンス」、「高応答」、「高精度」の良さは走り始めから即座に体感できますが、アクセルを踏んだ瞬間からグッと湧き出る強烈なトルクではなく、アクセル操作に合わせた自然な特性です。
例えるならば、初代LSのように物凄く静かでスムーズで滑らかな内燃機関のよう特性で、いい意味で「EVらしくない」です。
とはいうものの、実際のパフォーマンスは、0-100km/h加速は7秒代と意外と俊足です。
バッテリー容量は他社のEVと比べると平均的ですが、ハイブリッド車で培ったモーター、インバーター、トランスミッション、バッテリーなどの主要装備の効率最大化も相まって航続距離はWLTCモードで367km。
EVが求められる走行環境/ボディサイズ、充電時の時間、さらにはレクサスオーナーならではの複数所有といったさまざまな要件を踏まえると、実はいいバランスかもしれません。
■ただUXをEV化させただけではない!? 進化を極めたUXの実力とは
プラットフォームはガソリン/ハイブリッドと同じTNGA「GA-C」ですが、バッテリーパック搭載のために鋼鉄製アンダーフレームをプラス。実はこれによってキャビン全体の剛性も引き上げられています。
加えてフロント周りはサイドメンバー間をクロスメンバーで繋ぐと共にステアリングギアボックスへのブレースの追加やギアボックスの両側のリジット化。
リア周りは大断面アルミ製バンパーリーンフォースや専用セットアップのパフォーマンスダンパーをプラスするなど、車両全体の剛性バランスも整えられています。
これらはバッテリー搭載による重要増の手当だけでなく、音/振動とのトレードオフにより今までやりたくてもできなかった部分に手が入れられたのでしょう。
この体幹を鍛えた車体に専用セットアップのサスペンションと非ランフラットタイヤの組み合わせで、バージョンCは17インチ(ダンロップ)、バージョンLは18インチ(ミシュラン)を装着しています。
元々UXは「足を硬めてスポーティ」ではなく「足を動かしながら正確にクルマを動かす」という、基本素性の良さを活かした走りが特長でしたが、UX300eはその良さを継承しながら、すべての部位がより精緻、より滑らかになっています。
前後重量配分の適正化や重心も下がったことで、ロール感が減ったうえに4つのタイヤをより効果的に使えています。
加えて、ゆらゆら動くエンジンがない(振動との兼ね合いでマウントを硬くできない)ことも相まって操舵に対してノーズがスッと入る点など、意外とコーナリングマシンに仕上がっています。
乗り心地に関しては、重量増がいい方向に働いているのと非ランフラットタイヤの採用、より緻密になった加減速ピッチ制御も相まって、RXやNXといった兄貴分を超える動的質感も備えていると感じました。
また、レクサスの特徴のひとつでもある静粛性も、音/振動の一番の発生源(=エンジン)が無くなったことに加えて、床下バッテリーに遮音壁の機能を持たせています。
さらにアコースティックガラスの採用により風切り音やロードノイズ低減も相まって、末っ子ながらも親分のLSに勝るとも劣らずといった印象でした。
ただし、完全な無音ではなくASC(アクティブサウンドコントロール)の採用により遊び心も忘れていません。
グレードは2種類で、バージョンCが580万円、バージョンLが635万円、ハイブリッドモデルの同グレードと比較してみると100万+αの価格アップとなっています。
ちなみに販売は2020年度分限定135台となっており、10月22日13時30分から11月4日23時59分まで公式Webサイトで商談申し込み(抽選)受け付け中です。
EVに慎重だったコーポレートトヨタがUX300eを皮切りに動き始めましたが、どのように評価されるのか注目です。