2020年はたくさんのコンパクトSUVが登場しましたが、どのモデルも全幅が1700mmを超える3ナンバーサイズです。3ナンバーサイズでも「コンパクトSUV」と呼ばれるのはなぜなのでしょうか。
■3ナンバーなのにコンパクトSUVっていうのはナゼ?
トヨタ「ヤリスクロス」や日産「キックス」、マツダ「MX-30」といった新規モデルに加え、そしてマイナーチェンジした三菱「エクリプスクロス」や改良モデルが登場したスバル「XV」など、2020年も魅力的な「コンパクトSUV」がたくさん登場しました。
「コンパクト」といえば、5ナンバーサイズをイメージする人も少なくないでしょう。しかし、2020年に登場した上記の5台は、一般的には“コンパクトSUV”と呼ばれているものの、3ナンバーサイズ。違和感を覚える人もいるかもしれません。
“コンパクト”と分類されるのは、一体何がコンパクトなのでしょうか。
結論からいえば、コンパクトなのは「全長」です。冒頭で掲げたモデルのうち、もっとも全長が短いのはヤリスクロスで4180mm。全幅が1765mmなので5ナンバー枠の基準となる1700mmを超えていますが、全長が短いことからコンパクトに分類されるのです。
キックスの全長を見ると4290mmで、これも違和感なくコンパクトとして受け入れることができるサイズ。
あくまで厳密な基準はなく一般的な認識ですが、このくらいだと異論なくコンパクトカーとして受け入れられるのではないでしょうか。
「3ナンバーだけど全長が短いからコンパクト」というのはSUVに限った話ではありません。
輸入コンパクトカーとしてメジャーな存在であるフォルクスワーゲン「ポロ」やルノー「ルーテシア」、そしてプジョー「208」などはコンパクトカーですが、いずれも3ナンバーサイズです。
そもそも全幅によって5ナンバーと3ナンバーが分かれるのは日本独自の仕組みであり、その縛りがない輸入車は全幅を5ナンバーの基準となる1700mmに収めるという考え方自体がないのです。
そして国産コンパクトSUVでもヤリスクロスやキックスは海外向けの比率が高いので、日本独自の事情である5ナンバー枠にとらわれない設計を施したといえるでしょう。
輸入車ではフォルクスワーゲン「ゴルフ」などもコンパクトと呼ばれます。イメージ的にはコンパクトと呼ぶには大きい気もしますが、全長が4300mmを下まわるので十分にコンパクトなのです。
■5ナンバーサイズのSUVが少ないのはナゼ?
一方でエクリプスクロスは、2020年12月のマイナーチェンジで全長が伸び、4545mmに達します。
全長が4500mmを超えてくると、さすがにコンパクトとはいい難い気もします。
しかもその全長は「ミドルクラス」に分類されるマツダ「CX-5」の全長4545mmと同じです。
全幅はエクリプスクロスの1805mmに対してCX-5は1840mmと広いのですが、そうなるとますます車体サイズとクラス分けの定義があいまいになってきます。
しかし、ここでのポイントは「サイズ」が絶対的な基準ではなく、あくまでも「車格」が重要だということ。いわゆる「セグメント」と同様の考え方と理解すればいいでしょう。
では、真のコンパクトボディといえる5ナンバーサイズのSUVは日本にあるのでしょうか。
調べてみたところ、ハイトワゴンとクロスオーバーモデルまで確認しても、スズキ「ジムニーシエラ」(全長3550mm×全幅1645mm)、トヨタ「ライズ」&ダイハツ「ロッキー」(全長3995mm×全幅1695mm)、スズキ「クロスビー」(全長3760mm×全幅1670mm)くらいしかありません。
自動車メーカーの商品企画担当者は、SUVに5ナンバーサイズのモデルが少ない理由を次のように説明します。
「輸出するモデルが多いこともありますが、ハッチバックは同一車種でも日本向けは全幅を抑えて5ナンバーサイズに仕立てることが多いです。それは根強く5ナンバーサイズにこだわるお客さまがいるからです。
一方でSUVはカテゴリー的に保守的な購入者が少ないので、1700mmを超える国際的なサイズのまま日本でも販売するパターンが多いのです」
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ちなみに日本ではかつて、5ナンバー車に対して3ナンバー車の税金が大幅に高かった時代があり、3ナンバーは贅沢品という風潮があったのです。
しかし1989年の消費税導入のタイミングでその制度はなくなり、現在ではエンジン排気量で税金が決まることから、同じ排気量であれば5ナンバーでも3ナンバーでも税金は変わりません。
つまり、運転のしやすさや駐車スペースの問題を抜きにすれば、いまでは5ナンバーにこだわる必要はないといえます。