最近、やたらと明るいヘッドライトを見かけることが多くなっています。社外品の「HID」や「LED」が明るすぎて、対向車からしてみたら眩しくて危険ですらあります。法律上でヘッドライトの規定はどうなっているのか、ヘッドライトが明るくなっている理由を調査してみました。
■問題視される「眩しすぎるヘッドライト」
最近、ヘッドライトがとても明るいクルマを見かけることが増えました。
これには、いままでの「ハロゲン」だけでなく、より明るく省電力の「HID」や「LED」を採用するクルマが増えたことが関係しています。
さらにカー用品店なども社外品の「HID」や「LED」が販売されており、通常のバルブを交換する感覚で取り付けられるようになったことも影響しているのでしょう。
しかし、この明るすぎるヘッドライトが近年は問題視されています。「明るすぎる=眩しい」と感じる人も多く、対向車や前走車からすれば危険ですらあるというのです。
ヘッドライトの明るさ規定などはどうなっているのでしょうか。また、明るすぎて取り締まられることはないのでしょうか。
まず、ヘッドライトの明るさに関する規定は、「道路運送車両法」にある「前照灯等」のみです。
つまり、警察が取り締まりの根拠としている「道路交通法」では、前照灯の規定などがなく、ヘッドライトが明るすぎるという理由だけでの取り締まりはできないということになります。
道路運送車両法よると、基本的に道路を走行する車両は夕暮れ以降やトンネル内などでは「前照灯」と「車幅灯」を灯火する必要があります。
この場合、保安基準で個数や取り付ける位置や色、照射範囲なども細かく規定されているのですが、原則「前照灯(ハイビーム)」を灯火させて走ることが基準で、一般的に使用している「すれ違い用前照灯(ロービーム)」は、都市部などで対向車がいる場合に切り替えて点けるものという規定になっています。
そして保安基準では「ロービームで前方40mまで、ハイビームなら100mまでの視認性を確保すること」という規定があり、明るさの規定は「最高光度の合計が22万5000カンデラを超えないこと」とされています。
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道路運送車両法では前照灯(ハイビーム)点灯が基本とされているわけですが、実際は「すれ違い用前照灯(ロービーム)」だけで走行しているケースがほとんどでしょう。
これを解消すべく、一時「オートハイビーム」という機能が採用されましたが、これは単純にハイとローを切り替えるだけのものでした。
ここからさらに一歩進化したヘッドライト制御機構として、「アダプティブヘッドライト」が登場しています。
アダプティブヘッドライトは、ハイビームを基本的とし、フロントに設置されたカメラで対向車や先行車を識別。ハイとローを切り替えるだけでなく、ハイビームの照射バルブの個数を減らしたり、ロービームの照射範囲を左右に広げたりするなど自動で照射範囲を制御してくれるというものです。
明るくて耐久性があり、消費電力も少ないLEDが主流になったことで実現できた機能ともいえます。
ただ、フロントカメラによって対向車や先行車を識別できた場合に自動制御するものなので、場合によっては対向車が一瞬眩しく感じたり、信号待ちで明るすぎると感じたりすることがあるかもしれません。
■自分で社外品に交換するときに注意することとは
最近は手軽にヘッドライトを明るくできるとあって社外品のHIDバーナーやLEDバルブへ換装する人も増えています。
ちなみにHIDとは「High Intensity Discharge Lamp」の略で、以前は「ディスチャージヘッドランプ」と呼ばれていました。
しかしこの社外品が正しく装着されていないケースも多く、それがヘッドライトの眩しさや明るすぎの原因になっている可能性もあります。
社外品に交換する場合の注意点などを、栃木県の整備工場に勤める整備士のT氏に聞いてみましたが、社外品のHIDは個人で装着しないほうがいいといいます。
「HIDで放電される『アーク放電』は溶接などにも使われる非常に強力なもので、だいたい2万5000ボルトもの電流が流れます。
HIDのバーナー自体の交換は、通常のヘッドライトバルブの交換と同じ手法でできますが、取り付けを間違えたり、カプラへの取り付けが不十分だったりすると、皮膚や周囲に放電されて黒焦げ状態になるなど非常に危険です。配線なども一瞬で溶かしてしまうので、非常に取り扱いが難しいのです」
HIDバーナーへの交換に限っては、できる限りプロに取り付けを依頼したほうが安全なようです。
では、最近急速に普及しているLEDバルブはDIYで取り付けられるのでしょうか。
「LEDバルブは放電による危険性がはるかに低いので自分で取り付けても大丈夫です。
ただし、HIDにしてもLEDにしても、メーカー純正品なら本体のカバーに遮光板(カットライン)がプリントされているケースが多いのですが、社外品の場合はこの遮光板が付いていないものもあり、必要以上に眩しくなってしまうことがあります。
また遮光板と本体に隙間があるものもあり、光が漏れて眩しさの原因になることもあります」(整備士 T氏)
眩しさとは別の話ですが、社外品のLEDバルブをハロゲンの代用品として使用する場合、そのまま装着すると電圧の違いによって、いわゆる「ハイフラッシャー現象(ハイフラ)」が起きやすくなります。
そのためには「抵抗(流れる電流を調整するもの)」を配線内に装着する必要があります。「抵抗器」なども販売されているので、一緒に購入しておいたほうが良さようです。
「社外品に交換すること自体は決して悪いことではありません。多少の知識があれば誰でも簡単に交換できます。ただ、このバルブの遮光板に隙間があったり、なかったりすると光源が広がりすぎたり、カプラの位置が正しくないと光軸もズレてしまいます」(整備士 T氏)
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近年の車検はヘッドライトのチェックが厳しくなっており、車検対応品でも車検が通らないケースもあります。
車検場に直接持ち込む前に、ディーラーや専門業者などに光軸をチェック・調整してもらったほうがいいようです。