2022年6月現在、国内新車市場では長い納期が問題となっています。ユーザーは欲しくても手元に届かない。そして販売店では売りたくてもクルマが入ってこない。という状況です。なぜそのような事態となっているのでしょうか。
■半導体不足にウクライナ危機、納期が長引く要因とは?
昨今の国内新車市場では、多くの車種がこれまでには考えられないほど納期が長期化しています。
2022年6月現在においても以前として納車時期が長い状態ですが、なぜそのような事態となっているのでしょうか。
そして、比較的にすぐ買える国産新車にはどのようなものがあるのでしょうか。
これまで、新車を購入してから実際にクルマがユーザーの元へと納車されるまでの期間は、早ければ2週間程度、遅くても1か月程度というのが一般的でした。
もちろん、特殊なメーカーオプションを設定したり、そもそも受注生産だったりするような高級車などであればその限りではありませんが、新車販売台数ランキング上位にランクインするような車種で、納車までに数か月を要するということは極めてまれでした。
しかし、現在は多くの車種で3か月から6か月の納期となっていることが珍しくなく、場合によっては1年以上という例も見られます。
クルマに限った話ではありませんが、納期を左右するもっとも重要な要素は、需要と供給のバランスで、購入希望者に対して生産台数が少なければ納期は長くなるということです。
近年の長納期化の主要な原因とされているのは半導体不足です。
現代のクルマにはあらゆる部分に半導体が用いられていますが、同時に「産業のコメ」と呼ばれる半導体はクルマのみならずあらゆる電子機器に用いられています。
しかし、半導体を生産できる企業は世界でも非常に限られています。さらに、コロナ禍によるリモートワークや巣ごもり需要の高まりをうけて、パソコンやゲーム機などの電子機器を求める人が増えました。
そのなかで、半導体メーカーは高い基準が求められる自動車向け以外への供給を増やしたことで、自動車向け半導体が不足するという事態がおきました。
さらに、ウクライナ危機も自動車業界に打撃を与えており、とくに深刻なのはワイヤーハーネスです。
クルマのなかにある無数の電子機器をつなぐ役割をするワイヤーハーネスは、人間の神経に例えられますが、その主要な工場のひとつがウクライナにあり、今回のウクライナ危機によって大きく影響を受けています。
ほかにも、上海でのロックダウンの影響など、コロナ禍による影響も少なくありません。
2022年1月21日にトヨタは生産長引く納期に対して以下のように説明しています。
「コロナ感染の拡大並びに世界的な半導体部品不足により、現在、多くの車種で生産遅れが発生しております。
コロナ感染につきましては、各職場・仕入れ先に対し、感染対策を徹底して参るとともに、部品調達につきましても、幅広く部品・半導体メーカーへの協力の呼びかけをして、他地域での生産をするなど、全力で部品の供給確保に努めてまいります」
また、ホンダも同様に以下のような説明をアナウンスしています。
「昨今の新型コロナウィルス感染拡大影響や慢性的な半導体不足、及び不安定な海外情勢等の複合的な要因により、部品入荷や物流に遅延が生じております」
※ ※ ※
このように、自動車業界は複数の要因が重なった結果、思うように生産できていないという状況に陥ってしまっています。
■「国内専用車」の「ガソリン車」なら比較的納期は早い?
とはいえ、できる限り早くクルマを手に入れたいというユーザーニーズがあることも事実です。
では、どういったクルマであれば、比較的早く手に入れることが可能なのでしょうか。
具体的な納期については、メーターや車種、販売店ごとの事情による部分が大きくなりますが「国内専用車」の「ガソリン車」が納期が早い傾向があるようです。
現代のクルマの多くは、「世界戦略車」などと呼ばれるグローバルモデルとなっており、基本構造が同じクルマを各国向けにカスタマイズして販売しています。
そのため、生産されるクルマのすべてが日本向けに販売されるわけではなく世界中の市場との「取り合い」となります。
残念ながら、多くの自動車メーカーにとって、日本市場の優先順位はそれほど高くありません。
そのため、世界の各市場で販売されている車種は、どうしても日本向けの割り当て台数が少なくなってしまい、結果として長納期化する傾向があります。
加えて、グローバルモデルでは、使用される部品や物流網など世界中に及ぶため、世界情勢の影響を受けやすいという点もあります。
また、各自動車メーカーが発表している納期状況を概観すると、ハイブリッド車は長納期化している傾向があるようです。
ハイブリッド車は、ガソリン車に比べて半導体の使用量が多くそれにともない、より多くのワイヤーハーネスも必要となり、昨今の部品不足の影響を受けやすいと考えられます。
これらを総合すると、そもそも国内専用である軽自動車は比較的納期が早い傾向があるといえます。
また、ミニバンも国内専用車が多いため、ガソリン車を選べば比較的早く手に入れることができるかもしれません。
車種や仕様などにこだわらず、とにかく納期優先ということであれば、在庫車から選ぶという方法も考えられますが、その場合でも人気車種やハイブリッド車の在庫は全国的にもほとんどないようです。
なお、現在の納車状況に関して前出のホンダは次のように説明しています。
「生産状況の変化に伴い、既にご注文頂いておりますお客さまにおかれましては、車種によっては当初ご案内した納期に間に合わない場合がございます。
また、今後ご注文頂くお客さまにおかれましても、現在ご案内している納期は現状の納期見通しであり、お届け迄に当初のご案内よりお時間がかかる可能性がございます」
※ ※ ※
現在、自動車メーカーは納期の短縮化に向けてさまざまな取組みをおこなっていますが、先の見通しが立たない昨今の情勢を見ると、かつてのような納期でクルマを手に入れられるようになるためにはまだまだ時間がかかりそうです。
現状では、納期を優先するなら車種や仕様にこだわらないようにするか、あるいは中古車なども視野に入れるかといった選択肢をとらざるを得ないようです。
そのため、中古車市場でも相場価格が高騰するなどの影響も出ており、人気車種では新車価格を超えている値が付けられることもあります。