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スズキが新型「クーペSUV」発売へ! 「小型クロスオーバーの本命」登場か!? 新型「フロンクス」に速攻試乗! 驚きの実力とは

くるまのニュース 2024年7月25日 11時30分

スズキは2024年秋に新型コンパクトSUV「フロンクス」を国内で発売します。それに先立ち、ひと足お先に試乗しました。新型フロンクスの走りの実力はどうなのでしょうか。

■小型SUV市場にスズキが新モデルを投入!

 2024年7月17日、スズキは10年先を見据えた技術戦略を発表しました。その内容をざっくり言うと、経営理念「小・少・軽・短・美をより極める」でした。
 
 ミニマムエンジニアリングへのこだわりは、プロダクトや顧客は全く異なりますが、クルマづくりのアプローチは、かつての「ロータス」に近いと感じました。

 そんなスズキは軽自動車だけでなく登録車も販売しています。恐らく、多くの人の頭に浮かぶモデルは「スイフト」だと思いますが、そのコンポーネントを活用したクロスオーバーSUVもラインナップされていました。

 それはWRCマシンのベースにもなった「SX4」、そしてラダーフレーム×縦置きレイアウトから刷新された4代目「エスクード」です。

 この2台は欧州仕込みの走りで実力は非常に高かったものの、地味なキャラクターが故にメインストリームにはならず、日本ではひっそりと販売終了。

 しかし、Bセグメントの“アフォーダブル”なコンパクトクロスオーバー市場は、トヨタ「ヤリスクロス」、トヨタ「ライズ」/ダイハツ「ロッキー」、ホンダ「WR-V」、日産「キックス」、マツダ「CX-3」などがラインナップされ、スズキとしてもこのカテゴリーを放っておくわけにはいきません。

 そんな中、新たなモデルが登場。それが新型「フロンクス」です。

 2024年秋の正式発表・発売に先駆け、プロトタイプを伊豆サイクルスポーツセンターの5kmコースで試乗してきました。

 やはり気になるのは、「SX4やエスクードに代わるモデルなのか?」ということでしょう。

 チーフエンジニア・森田祐司氏に聞くと、キッパリ「クロスオーバーSUVですが、後継ではなくブランニューモデルとして開発。チームメンバーと決めたことは、とにかく『自分が欲しいと思えるクルマを創る』でした」と教えてくれました。

 新型フロンクスは、2023年1月にインドで開催された「オートエキスポ」で世界初公開されたグローバルモデルです。

 同年4月からインドを皮切りに、中南米や中近東、アフリカなどで販売がスタート。日本向けは約1年半遅れの発売となりますが、数多くの日本専用スペックが奢られています。

 エクステリアは流麗なクーペフォルムながらも、「スペーシアカスタム」や「ソリオバンディット」に似た堂々したフロント、コントラストの効いた塊感のあるサイド、そして踏ん張りを感じるリアと、ボディサイズ以上に堂々とした出で立ちです。

 シンプル系のデザインが多いスズキの登録車のなかで“個性”は強めと言えるでしょう。

 日本仕様の新型フロンクスのボディサイズは未公表ながらも、インド仕様は全長3995mm×全幅1765mm×全高1550mmと発表されており、ヤリスクロスよりちょっと小さなサイズに加えて、クラストップとなる4.8m最小回転半径により、街中での取り回しのしやすさも強みのひとつとなります。

 ボディカラーは、ルーフをブラックに塗り分けた2トーンカラー5色、モノトーン2色を用意しますが、オレンジ以外は意外とシックな色合いが多め。個人的にはもっと明るい色のほうが絶対に似合うと思ったのも事実です。

 インテリアは機能レイアウトこそスイフトとほぼ同じですが、左右からセンターコンソールに繋がるシルバー加飾を用いた専用デザインで、クロスオーバーSUVらしい力強さと逞しさをアピール。

 ソフトパッドをはじめとする高価な素材はあまり使われていませんが、精度の高さや部品の調和なども相まってスイフトを超える質感を実現しています。

 ただ、スバルの「STIスポーツ」と被るブラック×ボルドーのコーディネイトは賛否があるかもしれません。

 クーペスタイルなので「居住性はいまひとつなのでは?」と思われがちですが、大人でも余裕の足元スペースとフロントシートよりも高めのヒップポイントによる開放感も相まって、ファミリーカーとしての素性もかなり高いレベル。

 パワートレインは日本専用で1.5リッター直列4気筒+ISG(モーター機能付発電機)を組み合わせたマイルドハイブリッドで、トランスミッションは6速ATとの組み合わせです。

 動力性能は日常域では十分以上のパフォーマンスなうえに、6速ATの小気味良さも相まって想像以上にキビキビしたフィーリングです。

 この辺りはCVTを組み合わせる多くのライバルたちとは異なる部分。ちなみに下り坂では「君はスポーツカーなのか?」と思うくらいの積極的なダウンシフト制御に驚かされました。

 静粛性の高さもポイントのひとつで、遮音性を重視した各部の板厚設定、骨格断面内への遮音壁の設定、サイレンサーの効果的な使用、騒音源から遠い位置のベンチレーター配置と言った様々な工夫により、後席との会話明瞭度はまさにクラスレスな印象でした。

 ただ、定常走行からの加速や登坂路などアクセル開度が高い領域(3000rpm以上)だと途端にノイジーになってしまうのは残念なところ。特にFFよりも重量が重い4WDは少々厳しいと感じました。

 恐らくISGがスイフト/ソリオと同じ2.3kW/60Nmなのでアシストが足りないようです。個人的には技術戦略で語られた次世代マイルドハイブリッド(スーパーエネチャージ:10kWくらいの出力)の投入を期待したいと思います。

 フットワークはスイフト譲りの新プラットフォーム「ハーテクト」を採用。SUVとしては低重心、ロングホイールベース、ワイドトレッドと言った基本素性の良さに加えて、サスペンション(スプリング&ショックアブソーバー)、EPS制御、タイヤ(195/60R16:グッドイヤーASSURANCE)は日本の路面に合わせて専用チューニングが施されています。

■FFに加え、日本専用の4WDも設定!

 実は筆者(山本シンヤ)は、選考委員を務める「ワールド・カー・アワード(WCA)」の試乗会(2023年末にアメリカ・ロサンゼルスで開催)で新型フロンクスに先行試乗しています。

 その時の乗ったのは左ハンドルの1.2リッター直列4気筒(恐らくインド仕様)でしたが、ハンドリングは大味のモヤっとしたモノで、「スズキの登録車は、走りより価格重視なのかな?」とガッカリでした。

 なので、正直言うと今回の日本仕様にもあまり期待していませんでしたが(失礼)、走り始めて「えっ、全然違う」。もちろん「いい意味で」です。

スズキ新型「フロンクス」(プロトタイプ)

 具体的には、正確性の高い上に芯の強いステア系、背の高さを感じさせないボディコントロール、ロールを抑えながらも前輪依存ではない旋回姿勢、ドシっと構えるリアの安定感など、フットワークに関しては「クロスオーバーSUV」というよりも「目線の高いスイフト」といっていいレベルです。

 キビキビした走りと落ち着きある挙動とのバランスは、スイフト以上と言ってもいいかもしれません。

 タイヤはグリップ重視ではありませんが、想像以上に粘るので不安な感じは全く無し。

 今回の走行は「スキール音NG」でしたが、そのギリギリを楽にコントロールできるハンドリングの懐の深さは、コンパクトクロスオーバーSUVの中ではトップレベルと言ってもいいでしょう。

 ちなみに重箱の隅をつつくと、FFは比較的軽快なクルマの動き、4WDは比較的重厚で落ち着いたハンドリングに感じました。フロンクスのキャラを考えると、個人的には4WDのほうが似合っているかなと思った次第です。

 なお、4WDは日本専用に新開発されたものとなっており、海外では設定されていません。

 今回は路面環境が良かったので、快適性については断定できないものの、比較的硬めでコツコツとした感じは受けたのですが、雑味が抑えられた足の動きと衝撃を上手に丸め込むショックの吸収性などから、シャキッとしているけど“いなし”の効いたドイツ車的な乗り心地に仕上がっています。

 もちろん、予防安全技術・運転支援機能も抜かりなしで、進化したデュアルセンサーブレーキサポートII、全車速追従&停止保持機能付アダプティブクルーズコントロール、車線維持支援機能(LKA)などを用意。コネクテッド機能も充実しています。

※ ※ ※

 これまでのスズキのクロスオーバーSUVは「隠れた実力者」と言った印象が抜けませんでしたが、新型フロンクスはデザイン・走りともに「コンパクトクロスオーバーの本命」と言っていいモデルに仕上がっています。

 価格はまだ公表されていませんが、ライバルも驚くプライスを掲げてくると予想しています。

「個性的」、「走りがいい」、「お買い得」と三拍子揃った新型フロンクスは、スイフト/ソリオと並ぶ、スズキの基幹車種に短期間で成長するのは間違いないと思います。

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