大学4年生のAさんは、関西の大学で経済学を学んでいます。来年春の卒業に向けて、現在はゼミでレポートを書く日々を送っています。就職活動ではなかなか最終面接にたどり着くことができず、思うような結果が出ていませんでした。
Aさんは大学を卒業したら働いて稼がなければならないという義務感にかられ、どこでもいいから入社したいと考えはじめていました。その後、Aさんはなんとか内定を勝ち取りますが、同級生からはブラックと噂されている企業だったので「不本意な内定だ」とAさんは嘆いています。
このような、就職活動での焦りからブラック企業に内定をして嘆いている学生は増えているのでしょうか。キャリアカウンセラーの七野綾音さんに話を聞きました。
ーなぜ学生は不本意な内定を受けてしまうのでしょうか
不本意内定、不本意就職の背景にあるのは、義務感で就職活動をしている学生が多いからではないかと考えています。大学を卒業したら生活のために稼がなければならないという思いが強く、自分の興味・関心を理解しないまま企業を選んでしまっています。
このような学生は求人情報を見るときに、給料や週休、福利厚生など条件面ばかりを優先してしまうのです。条件しか見ていない学生と話をすると、履歴書や面接の指導をした際に、その会社を受ける固有の理由が答えられません。なぜその業界がいいのか、その業界の中でもなぜこの会社がいいのか、この会社で何がしたいのか、という動機がないのです。
ー企業が求める人材とはどういうものでしょうか
企業が本来的に求めている「人材」は、自分の頭で考えて行動するという意識・意欲のある人ではないかと思います。
例えば営業職であれば、自分でリサーチするところから始まり、契約獲得後も顧客との良好な関係を築き次の提案につなげる。この一連の過程の中で、業界の課題やお客様が求めていることを自分で考えて能動的に動ける人は、企業が求める「人材」といえるでしょう。
このような人は自分が売る商品への思い入れや、この会社で何がしたいかなどの動機がしっかりしている場合が多いです。
一方で、一連の過程を細分化して分業制にしている企業では、テレアポだけ、アフターフォローだけ、というスポット業務のみを担当する人員を、「人手」として採用することもあります。しかし与えられた業務をこなすだけでなく、その業務が全体の中で担う役割や、一連の過程を考えた上で行動できる人は、結果的に企業に求められる「人材」となっていくように思います。
ー不本意にならずに内定を得るためにはどうしたらいいでしょうか
数打てば当たるという就活をやめて、ちゃんと職業を理解した上で、その企業で働く動機を探ることです。動機というのは「心が動く機会」という意味があると考えています。自分の過去を振り返って、どのような場面で心が動いたかを思い起こし、興味関心から業界や会社を選ぶことが大事です。
条件はもちろん大切ですが、動機がないまま条件だけで選べば、どの会社を受けても納得のいかない不本意な内定になってしまうでしょう。自分の動機を言語化して、どのようなビジョンを持って企業や社会に貢献していくかを語れる人であれば、企業も人材として評価してくれるはずです。
◆七野綾音(しちのあやね)キャリアカウンセラー/キャリアコンサルタント やりがいを実感しながら自分らしく働く大人を増やして、「大人って楽しそう!働くのって面白そう!」と子ども達が思える社会を目指すキャリアカウンセラー/キャリアコンサルタント。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)