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無人機の夢にあふれた応用法とは - 瀧口範子 @シリコンバレーJournal

ニューズウィーク日本版 2014年12月20日 17時14分

 ドローン(無人機)が、大きな産業になりそうだ。

 ドローンは軍事目的で用いられているものが先に知られるようになったが、産業では農業、商業、救援、科学といろいろな分野にまたがって利用されようとしている。その中でも、既にビジネスとして成立しているのが農業分野だ。

 ドローンは現在、広い範囲では利用ができない。連邦航空局(FAA)が2015年秋までにドローン飛行についての規制を固めることになっており、それまでは商業での利用は不可。趣味の場合でも、一般の空港から離れた地域で特定の高度までしか飛ばすことができない。

 だが、農業の場合は広大な私有地を有しているケースが多いので、先に実用化が始まっている。農場の上空にドローンを飛ばして農薬でもまくのかと思いたくなるが、ドローンに関連した技術はグンと進んでいる。

 農業用のドローンには高性能のカメラや温度、湿度センサーなどが搭載されていて、農場の環境をキャッチするのだ。画像やセンサーのデータを解析するツールも揃っており、農作物の育ち具合や土壌の状態などが詳しく把握できる。地上からはなかなか見通せなかったものが、ドローンを低空で飛ばすことで見えるだけでなくデータになって示されるのだ。

 農業では他にも羊の群れを移動させるためにも利用されるようで、使い手としてはかなり有望な分野になっている。

 商業では、映画撮影での利用が一部始まったようだが、他にもアマゾンのように荷物を届けたりするロジスティクスでの利用が期待される。アマゾンのドローンが発表された頃は誰もが笑っていたが、それから1年ほどたった今、笑う人はもういない。それだけドローン技術に応用面でも現実味が出てきたからだ。

 救援では、災害地の全貌を把握したり、生存者がいないかどうかをドローンで確認したりすることができる。山崩れや津波の被害にあったところにも、ドローンならば飛んでいくことができる。センサー技術がもっと発達すれば、生存者を画像以外の方法でも把握できるようになるだろう。

 科学では、生物や動物の棲息がわかる。人間が入ってしまえば邪魔になるような場所でも、ドローンならば気づかれず、生態系を乱すことなく観察ができる。この分野も、これまで知らなかったことがドローンのおかげで発見されるようになるという、期待できるところだ。

 これら以外にも、もっとおもしろい利用方法を探っている人々もいる。

 たとえば、警備。ボストンのある会社は電気供給と通信をまかなう細いフィラメントをつけたドローンを開発。普通のドローンならばいずれバッテリーが切れてしまうが、このドローンはいつまでも飛ばしておくことができるので、工場や倉庫などの上空から人の出入りをチェックするという警備用に利用が可能という。

 また、発電もある。グーグルが買収したマカニ・パワーという会社は、ドローンを風量の強い上空に飛ばして発電をするというしくみを開発。ウィンドタービンに比べてメンテナンスも簡単で、クリーンで効率のいい風力発電ができるらしい。

 もっと面白いのは、室内でドローンを使うというアイデア。これは高齢者の役に立つ。ちょっとしたものを家のあちらから取ってくるとか、訪問者を確かめるなどといった使い方ができるはずだ。想像するだけで、楽しくなるような応用である。

 先だって、インテルのウェアラブル賞を受賞したドローンの構想は、腕につけているウェアラブルがドローンになって空中から自分の写真を撮ってくれるというもの。自分を追うように仕組まれていて、崖上りをしたり、走ったりする自分の回りでドローンが飛び続けるという案だ。こういうドローンがあれば、子供の登下校についていかせるなどして、安全のためにも役立つだろう。

 驚くのは、ドローンに関するこうした構想やアイデアがほんの数年で急速に拡大したことだ。それまではドローンと言えば、軍事用かマニア用以外にはどう使うのかが想像もできなかったのに。

 一方で、他人のプライバシーを侵害するという問題や、飛行機とのニアミス接触事件などが相次いで、ドローンには解決すべき課題も多い。だが、自律的に飛ぶだけでこんなにビジネスと社会の視点が開けるのかと思うほど、ドローンは期待される産業に育ちつつあるのだ。


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