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トランプ大学のあきれた詐欺商法が明らかに

ニューズウィーク日本版 2016年6月2日 17時25分

<トランプ大学は金融の素人を手玉にとって高額の授業料を巻き上げる詐欺ビジネスだった――米共和党の大統領候補に確定したドナルド・トランプがかつて運営していた学位を与えることのできない「大学」について、元スタッフ2人がそう証言していることが明らかになった>

裁判所命令で売り込みマニュアルが公開に

 共和党の大統領候補に決まったドナルド・トランプが設立し、現在は閉鎖中のトランプ大学は、詐欺罪などに問われ元受講生らが複数の訴訟を起こしている。カリフォルニア州の米連邦地裁に提訴された集団訴訟で、ゴンザロ・クリエル判事は元スタッフ2人をはじめ関係者や受講生らの宣誓供述書を公開。併せてセミナー運営側の内部文書の公開も命じた。トランプ大学の「営業シナリオ」は、相手の信用につけ込んで攻撃的な売り込みをかけるトランプ式セールス術を詳述したマニュアルだ。

【参考記事】「トランプ大学」詐欺訴訟でトランプに不利な判断

 その手口はこうだ。まず無料で90分のセミナーを受けさせ、有料セミナーに巧妙に誘い込む。有料コースは受講料1495ドルの「不動産で稼ぐワークショップ」から、数回の合宿や3日間の実践指導を含む3万4995ドルの「トランプ・ゴールド・エリート」まで各種あり、受講生から搾り取れるだけ搾り取る仕組みになっている。

 ニューヨーク州の司法長官が4000万ドル以上の受講料をだましとった疑いでトランプを起訴した裁判でも、多数の内部文書が公開されている。これまでに公開された文書から、トランプがセールス担当にたたき込んだ強引商法ワースト5を拾ってみた。

【参考記事】「トランプ大統領」の悪夢を有権者は本気で恐れろ

1 受講料はクレジットカードで支払わせ、利用限度額に達している場合は新規のカードをつくらせる

 クレジットカードがないか、利用限度額に達している受講生には、次のように説明する。

「上級コースを受講するには授業料が必要になります。現金で払う人はほとんどいません。私たちはOPM(Other People's Money 他人のカネ)を使う方法を教えています。クレジットカードなら月々わずかな支払いで、経費も抑えて、不動産プロジェクトに乗りだせます。不動産での成功で2、3カ月後には銀行に返済できるというわけです。こうしたレバレッジを利用できないとしても、あきらめてはいけません。今後不動産プロジェクトに投資するためのシード資金か貯金はありませんか」

2 メディアとの接触を禁止。トランプはビジネスの場でもメディア嫌いだったらしい

●トランプ大学の関係者、フリーの契約者は、記者の質問にいっさい答えてはならない。広報担当に連絡をとらせること。

●トランプ大学の素晴らしさを確信していても、ノーコメントを貫くべし。



●記者相手にオフレコの会話などあり得ない。

●記者が取材相手に共感し、味方になることはまずない。

●一言でもしゃべれば、うるさく詮索される。

●トランプ大学はイベントの撮影や録音を禁止する権限を持つ。

3 受講料が払えない人には、個人年金を担保に融資を受けさせる

「お金がないからトランプ大学に入学できないという言い訳を聞いてはいけない。売り込む人間とここの講座を信じれば、客はどこかで金を工面してくる。ためしに、個人年金積立口座から前借りできないか税理士に相談することを勧めてみよう」

4 ありふれた心理操作と昔ながらの押し売り商法でカモになりそうな相手をくどき落とす

 2段階のセールスで契約に持ち込む。まずコンサルタント(セールス担当)がクライアントと話し、クライアントに受講の素質があると思わせ、信頼関係を築く。その後プログラムディレクターに引き継いで、契約を成立させる。この2段階プロセスでは、セールスの心理学に基づいてクライアントの感情を操作する。以下が、その過程。

1)イントロ(1~5分)志望動機を聞く

2)燃え立たせる(3~5分)成功の夢を思い出させる

3)現状認識(10~15分)今の経済状況を見つめさせる

4)目標(5~10分)新たな目標を持たせる

5)契約(5~10分)今度こそ成功すると誓わせる

5 サブプライムローン危機が起こる直前の07年、セールス担当は受講希望者に「住宅価格が大幅に下がる心配はない」と請け合い、次のように言うよう指導されていた

 2007年には不動産部門の業績は全体としてやや低調になるだろうが、市場に大幅な下振れリスクはない。

テイラー・ウォフォード

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