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人類が出したプラスチックごみは「ゾウ11億頭分」

ニューズウィーク日本版 2017年7月20日 18時10分

<人類は1950年代からプラスチックを大量生産し、これまでに83億トンのごみを出した。今回初めて科学者が推計値を公表し、その影響を警告した>

1960年代の名作映画『卒業』に、初老の男が主人公の青年に助言をする場面がある。「君に言いたいのは1つ、プラスチックだ。プラスチックには素晴らしい未来が待っている」──プラスチックの将来性を言っているのだろうと、化学業界ではよく知られたセリフだ。

当時としては先見性のある言葉だった。1950年以前はポリ袋すらあまり見かけなかったが、今は溢れるほどある。人類がこれまでに生産したプラスチック製品の総量を科学者が初めて推計したところ、驚くべき数値が出た ── 83億トンだ。

その推計は7月19日に米科学誌サイエンス・アドバンシズで発表された。研究チームは、1950年以降に世界で製造されたプラスチック製品の総量が、世界のGDP(国内総生産)成長率を2.5倍上回る年平均8.4%のペースで増加してきたことも示した。世界の年間生産量は1950年の時点で200万トンだったが、2015年は4億トンになった。しかも、今あるプラスチックの半分は、過去13年間に作られたものだ。

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プラスチックの未来は、確かに凄いことになった。

埋め立てか海へ

83億トンとは一体どれほどの重さなのか。ニューヨークのランドマーク、エンパイア・ステート・ビルディングに換算すると2万5000個分、世界最大の哺乳類シロナガスクジラなら8000万頭分、象なら11億頭分だ。米カリフォルニア大学サンタバーバラ校の准教授でこの研究の第一著者であるローランド・ゲイヤーは、もし83億トンのプラスチックを足首ほどの高さで地表に広げれば、アルゼンチンと同じ面積、あるいは米テキサス州の4倍の面積が埋まるという。

プラスチックごみの大半は、集積場や自然界に捨てられる。人類はこれまでに63億トンのプラスチックごみを出したが、再利用したのはわずか9%。全体の12%を焼却処分し、残りの79%は埋め立て処分するか海に捨てる。このままだと、2050年までに出るプラスチックごみは120億トンに達する。

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「人類は想像を超える膨大な量のプラスチックを生み出し、その量は増え続けている」とゲイヤーは言う。「人類にはプラスチックごみの処理ができない」

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一方、米イエール大学のトム・グレーデル教授は言う。「プラスチックごみの回収と再利用をもっと上手に行えば、環境への影響を最小限に抑えられる」



だが現状はそれが難しい。再利用するより新品で買った方が安く、再利用の試みに対する政治的な支援もほとんどないからだ。

プラスチックの生産量を示す様々な数値を見ると、気が遠くなる。例えば飲料用ペットボトルの世界全体の製造量は、2006年の3兆本から2016年には4兆8000億本まで増加した。

大量のプラスチックごみが水資源となる淡水や海に漂っていることを示す研究結果も、相次いで明らかになっている。海に捨てられたプラスチックは2010年だけで360~1180万トンに上ると推定され、その後さらに増えたのはほぼ間違いない。別の研究は、海面に24万5000トンのプラスチックが漂流し、海底にはそれを超える量がたまっている可能性があるという。

プラスチックの原料である炭化水素はふんだんにあるため、近いうちに原料が尽きる可能性もない。「人類が望むなら、プラスチック製品で何度も地球を埋め尽くせるだろう」とゲイヤーは言う。

(翻訳:河原里香)

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