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フーシ派のミサイルを撃ち落とせなかったPAC3は頼りになるのか

ニューズウィーク日本版 2017年12月6日 18時40分

<イエメンからサウジアラビアに発射されたミサイルは、アメリカ製ミサイル防衛を突破して着弾していた。これで対北防衛は大丈夫か>

北朝鮮が予想を上回るスピードでミサイルの射程と威力を増大させているというのに、アメリカが誇るミサイル防衛システムの性能に疑問が生じている。最新の報告書は、アメリカの同盟諸国にとってさえ信頼に値しないレベルかもしれないと示唆している。

11月、サウジアラビアに関連した重大な出来事が相次いで起こった。レバノンのサード・ハリリ首相は一時サウジアラビアから帰国できなくなって辞任に追い込まれ、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の主導で大規模な汚職摘発も行われた。イエメンでの戦争も激しさを増している。そんな時、一発のミサイルがサウジアラビアの首都リヤドめがけて発射された。

ミサイル攻撃をしたのは、イエメンを拠点に活動するイスラム教シーア派系の武装組織「フーシ派」だ。サウジアラビア主導の連合軍は、イランが支援するフーシ派と代理戦争を戦っている。サウジアラビアは、フーシ派のミサイルはアメリカ製の地上配備型迎撃ミサイル「パトリオット」(PAC3)よって撃ち落とされた、と発表した。アメリカが世界各地に配備しているミサイル防衛システムだ。

ところが、アナリストのジェフリー・ルイス率いるミドルベリー国際大学院モントレー校の調査チームは、最新のレポートのなかで、それとは異なる「発見」を明らかにした。サウジアラビア当局やドナルド・トランプ大統領の言葉に疑問を投げかけるものだ。

ルイスはニューヨーク・タイムズ紙に対し、「各国政府はPAC3の性能についてとかく嘘をつく。あるいは誤った情報を伝えられている」と語る。「だとすれば、大いに憂慮すべきことだ」

ブルカンH-2は防衛網を突破した

ルイスの調査チームは、ソーシャルメディアで入手した写真や動画を分析した結果、サウジアラビアのPAC3から発射された5発の迎撃ミサイルは、飛んできたミサイルに当たらなかったと結論づけた。フーシ派が発射した短距離弾道ミサイル「ブルカンH-2」は、ミサイル防衛網を突破して着弾したという。

フーシ派が発射したミサイルは目標とみられる国際空港から約0.5マイル(800メートル)逸れて着弾したが、「スカッドの場合、このぐらい逸れることはよくある」とルイスは言う。フーシ派のブルカンH-2は、旧ソ連のスカットミサイルをベースにしたものだ。

「あと一歩で空港は壊滅するところだった」と、ルイスはニューヨーク・タイムズに語っている。

イエメン周辺でフーシ派と戦うサウジアラビア連合の広報担当者は、11月4日の攻撃の直後にBBCニュースで、ミサイルは「迎撃した」と語った。



サウジアラビアのムハンマド皇太子は今回の攻撃について、「イラン政府による直接的な軍事侵略であり、サウジアラビアに対する戦争行為とみなされる可能性もある」と言った。イランを敵視するトランプも、ここぞとばかりにアメリカの軍事技術の有意性を強調した。

CNNによれば、11月5日に大統領専用機エアフォースワンで会見したトランプは、「われわれは世界最高の兵器を有している」と言った。「......ミサイルが消えるのを見ただろう? アメリカの防衛システムが空中で撃ち落としたのだ。それほどアメリカは優れている。どの国もアメリカの真似はできない。アメリカはいま、それを世界中に売っているのだ」

しかしルイスの調査チームは、もしサウジアラビアの迎撃ミサイルが当たっていたとしても、フーシ派が発射したミサイルの後方部分に当たっただけで、それは弾頭から切り離された不要な部分だったと推定している。弾頭は、ほぼ間違いなく地面に着弾したという。

フーシ派は、米軍にとって大きな脅威ではないかもしれない。だが、ミサイル攻撃を阻止できなかったとされるPAC3は、それよりはるかに怖い敵、すなわち北朝鮮に対する防衛の主力として位置づけられている。

(翻訳:ガリレオ)


トム・オコーナー

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