Infoseek 楽天

高いIQは心理・生理学的に危険――米研究

ニューズウィーク日本版 2017年12月11日 15時50分

<IQは高いほうがいい――メディアは高いIQ値を売りにするタレントを取り上げ、こんな通説に従う傾向があるが...>

心理学研究レポートを掲載する「インテリジェンス」誌の論文によると、優れたIQ(知能指数)値は「心理的および生理学的な危険因子」でもあることが判明した。調査を行ったのは、アメリカのピッツァー大学とシアトル・パシフィック大学の研究者たち。人口上位2%のIQを持つ人たちが参加する国際グループ「メンサ」の会員にアンケート調査を行った。一般的なIQ値平均が100のところ、メンサの会員は132以上の高いスコアを持つ。

アンケートの結果メンサの人々は、不安障害、アレルギー、喘息、自己免疫疾患などの症状を抱える可能性が一般的なIQ値の人よりも高かった。IQ値の高い人に何らかのリスクを指摘する研究は過去にもあり、この調査を行った研究者も「有名な天才たちに、高い割合で精神病理が発現するということは全く新しい概念ではない」と言っている。

ただ、現在の情勢と紐付けてみると、そこにさまざまな「啓示」が見えてくる。

大統領のヒステリーは高IQの賜物!?

ドナルド・トランプ米大統領のIQが高いことはよく知られている。というより、トランプ自身がアピールしている。2013年にはこうつぶやいた。「私は常識と思いやりのある(IQがとても高い)人間だ」

I know some of you may think l'm tough and harsh but actually I'm a very compassionate person (with a very high IQ) with strong common sense— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2013年4月21日


トランプのIQに関するツイートは多々あり、これまでに少なくとも22回投稿したと英紙ガーディアンが報じている。10月には、レックス・ティラーソン米国務長官に「馬鹿」と呼ばれた可能性があるならIQテストの結果で比較しなければならないと息巻いていた。とにかくIQに関する話題が大好きでたまらない。同紙は「彼のヒステリーは高すぎるIQのせいだ」と、皮肉っている。

「自分のIQを誇っている人は敗者」

誰もがトランプのようにIQネタに執心しているわけではない。2004年、ニューヨーク・タイムズ紙は著名な宇宙物理学者スティーブン・ホーキング博士にIQについて尋ねた。するとホーキング博士は「自分のIQの高さを誇示する人は敗者だ」と答えた。



IQテスト自体に疑問を感じる声もある。高得点が出るということはIQテストの点数を(意図的に)上げることができると信じている人もいるようだ。結局のところIQは「知性」を測る非常に狭い尺度だと認めざるをえない。

また、社会的にも経済的にも地位が高いほどIQが高くなるという現象が複数報告されている。これはどういうことか。英ガーディアンは、IQを測定することは特権的なことだとし、操作されている可能性を指摘する。

イギリスのボリス・ジョンソン外相はロンドン市長を務めていた2013年に「IQテストの価値をどう考えていようとも、これが格差問題を議論するうえで意味を持つものであることは間違いない。人類の約16%はIQが85以下、約2%はIQ130以上だ」と言い、格差と知性との関連性を暗に示唆して反感を買った。

IQは社会経済的不平等を正当化する以外に、人種差別を強化する重要なツールにもなっている。 1994年にアメリカで出版された『The Bell Curve』は人種とIQの関連性を調査した。つまり、アフリカ系アメリカ人は白人のアメリカ人よりも低い得点だったという内容があり、一部の民族は他の民族よりも劣るということを示唆した。

しかし、IQ至上主義時代は間もなく終焉を迎えるかもしれない。もちろん指数関数的に知性を増してきた人工知能(AI)と人間の知性をいっしょくたにはできないが、コンピューターがより賢くなるにつれ「人間の知性」への考え方も大きく変わっていくことだろう。


【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を! 気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>


ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

この記事の関連ニュース