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「トイレが欲しい!」 インドの貧しい少女が耐えきれずに取った行動とは...

ニューズウィーク日本版 2018年3月20日 18時9分

<トイレのためにハンストする人もいれば、トイレがあっても使わない人もいる。インドの屋外排泄ゼロは実現するのか>

日本人にとって、あって当然な屋内トイレだが、これが欲しくても手に入らない人もいる。インド最北部のジャムー・カシミール州の少女は大胆な行動で、その思いを行政に訴えた。

インドではナレンドラ・モディ首相が推し進める一般家庭のトイレ設置計画「スワッチ・バーラト(クリーン・インディア)」が、2019年までに1億2000万世帯に普及させる目標を掲げているが、まだ手つかずのエリアもある。

ニシャ・ラニが住む地域もそうだ。インドのニュースサイト「Oneindia」によると、同州ユーダンプールのセカンダリー・スクール10年生の彼女の家は貧しく、トイレがない。

国の政策が行き届いていないことに異議を唱え、ラニはたった1人でハンガーストライキを決行した。地場メディア「ANI」の取材に応じたラニは、早急にトイレを設置してほしいと真剣な眼差しで訴えた。そして勇敢な少女の声は行政に届き、トイレの建設が約束されるとハンガーストライキを終えたという。

#JammuAndKashmir: A student of class 10th launched a hunger strike, demanding a toilet in her house in Kud, Udhampur. She called off the strike after local administration begun the construction of a toilet at her residence. (19.3.18) pic.twitter.com/eWYU4aWqiL— ANI (@ANI) 2018年3月19日

(ANIの報道によると3月19日に行政がトイレ建設を開始した)


トイレの大切さを学び行動を起こした

ハンガーストライキは極端な手段かもしれないが、そうするしかなかった状況に追い込まれていたとも読み取れる。そして、こうまでするほどにラニを駆り立てたきっかけは、学校で受けた衛生の意識啓発プログラムだった。

ラニは、「プログラムに参加して衛生管理の重要さを理解した」とし、トイレができるまでは食事を取らないと断言していた。ハンガーストライキを実行する前には、両親に自分の考えを伝えていたそうだ。

After an awareness program,which was held in our school,I got to know the importance of sanitation.I went to home that day & told my parents that i won't eat food,till the time a toilet is made in our house: Nisha Rani,who launched a hunger strike, demanding a toilet in her house pic.twitter.com/b8parqBHgM— ANI (@ANI) 2018年3月19日

(学校で受けた意識啓発プログラムがきっかけになったと話すラニ。その日に家に帰るなり、ハンストを実行したと言う)



あるレポートによると、スワッチ・バーラトが始動した2014年10月2日時点のトイレ設置世帯はインド全土で38.7%だったのが、2018年3月には78.9%まで増加している。しかしラニのような貧しい家庭では、トイレの設置が遅れているのも事実で、彼らには公衆トイレを使うか屋外で排泄するかの2択しかない。たとえトイレのある世帯でも、家族の人数が多すぎてやむなく外で用を足す人もいる。

もちろん政府は対応を進めており、複数の地域でトイレ建設に補助金を支給したりもしている。それでも手が及ばない世帯があるのは、補助金がトイレ建設以外のことに回されてしまうからだと、Oneindiaは指摘する。農村部では、トイレがあっても住民が使用しないケースもあるという。

2019年10月2日までにインド国内の屋外排泄の根絶という目標は、果たして達成されるのだろうか。単にトイレを作って数字だけをクリアしても、自らの意思で外で用を足す人たちを動かさなければ、屋外排泄は根絶できない。

【参考記事】トイレ普及急ぐインド 「辱め」を受ける外で排泄する人たち


ABP NEWS-YouTube

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ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

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