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『アンネの日記』から明かされた「下ネタ」でアンネが伝えたかったこと

ニューズウィーク日本版 2018年5月18日 15時0分

<時を超えて届いたアンネの皮肉の効いたジョークはお見事。アンネ自身が突っ込むほど>

『アンネの日記』と聞けば、第二次世界大戦下のナチスによるユダヤ人迫害から逃れた一家を少女目線で捉えた、戦争の痛ましさを伝える手記というイメージを持つ人は多いだろう。

しかし、現代のテクノロジーによってそのイメージは大きく変わるかもしれない。5月15日、『アンネの日記』のなかで長年解読できていなかった2ページ分の内容が明かされた。秘密のページは、1942年の9月28日、当時13歳だったアンネが書いた。

家族とともにオランダ・アムステルダムの隠れ家で生活するようになって3カ月も経たない頃だろう。米タブロイド紙「ニューヨーク・ポスト」など複数メディアが伝えるところによると、秘密のページは様々な内容を書いては線を引き、書いては線を引き、が繰り返され文字が滲んでいたうえ、茶色の紙で覆われ、現代まで守られていた。

The @annefrankhouse , with @HuygensING and @NIODAmsterdam, today presented the hidden text on two pages covered up with gummed paper in the first #diary of #AnneFrank, with its red checked cover. Thanks to new technology the text on the hidden pages has now been made legible. pic.twitter.com/cw9z0JnNFI— Anne Frank House (@annefrankhouse) 2018年5月15日

(明かされた「秘密」のページ)


アンネが一時期身を隠していた、アムステルダムにある「アンネ・フランクの家」とホイヘンス研究所、オランダ戦争資料研究所の3つの機関は共同で、秘密のページの解析に取り組み、画像解析ソフトの技術を駆使して読み明かした。

現代と変わらないガールズトーキング

オランダ戦争資料研究所のディレクターであるフランク・バン・ブリーは「新たに発見されたページを読めば、みんなが笑顔になるだろう」「いわゆる下ネタは、成長期の子どもにとって定番のネタだ。才能豊かなアンネも、例外ではなかったということだ」と語っている。

そう、アンネは、性と売春に対する考えと「ダーティジョーク」を書き連ねていたのだ。

セックスについて綴った部分で、アンネはこう残した。「女性は14歳で初潮を迎える。つまりそれは、男性と関係を持ってもおかしくないほど成熟しているっていうことだけど、もちろん結婚前にそんなことをする人はいないわ」



売春に対しても興味津津だ。「すべての男性は、『ノーマル』であるなら、女性のことが好きだわ。娼婦は道で客を捕まえたら、そのまま一緒にどこかへ行く。パリにはそのための大きな家があるみたい。『パパ』がそこにいるのよ」

極めつけは、かなり際どい4つのジョーク。アンネ自身が自分の言葉に「dirty(下品)」と突っ込むほどの。

13歳の少女は「ドイツ軍の女の子たちが何のためにいるか分かる? 兵士の『マットレス』になるためよ」などの風刺的なダーティジョークで日記に思いをぶつけた。(CNN)

今の『アンネの日記』は父親が出したもの

1944年にナチスに見つかり家族とともにアウシュビッツに送られるまで、アンネは筆をとり続けた。そして15歳のとき、ベルゲン・ベルゼン強制収容所で姉マルゴーと命を落とすことになる。

アンネの家族の中で生き残ったのは、父親のオットー・フランクだけ。彼は娘の形見となった日記を公表したわけだが、もちろん手を加えていた。家族の悪口や、関心を持たれなそうな部分を省いた。

解読に携わった機関によると、著作権の問題があるため、新たな2ページを収録した『アンネの日記』が出るかどうかは、まだ分からないという。

しかし、「アンネ・フランクの家」のエグゼクティブ・ディレクター、ロナルド・レオポルドが「この発見により、彼女自身、そしてアンネ・フランクという作家への理解がさらに深まる」と指摘するように、今も昔も変わらないティーンエイジャーのみずみずしい感性と、社会への自分なりの意見を持つことの大切さを訴える貴重なもの。世界中でベストセラーになった日記が、長い年月を経て筆者の言葉で新たな事実が加筆される意義は大きいだろう。

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ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

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