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イスラエルとイラン、戦争で勝つのはどっちだ

ニューズウィーク日本版 2018年6月18日 11時30分

<対立を深める両国だが軍事力の規模とその内容を比較してみると>

イスラエルとイランは今や一触即発の状態にある。国際社会との核合意は崩壊寸前で、そうなれば核開発を再開するとイランは警告している。イスラエルはシリアにあるイランの軍事拠点を何度も空爆し、北部の国境地帯にイラン系の武装勢力が進出するのを阻止している。

どちらの国にも全面戦争に突入する気はないようだが、緊張が高まって不測の事態が起きる可能性はある。そしてどちらも、それなりの軍事国だ。

イランは国土の面積でも人口でもイスラエルを大きく上回るが、軍事力は数だけで決まるものではない。イスラエルは人口わずか850万だが、アラブ諸国に囲まれて、常に生存のために戦ってきた歴史がある。そのために最新テクノロジーの導入や有力な欧米諸国との関係強化に力を入れ、今では世界有数の戦闘能力を誇っている。

国別の軍事力を比較する組織「グローバル・ファイヤーパワー」によると、イスラエルの兵員数は約17万で、予備役は44万5000。ユダヤ人を中心とした18歳以上の国民が対象の徴兵制を敷く。

質ではイスラエルに劣るが、イランの軍事力も侮り難い。人口は8200万。兵員数は約53万4000で、予備役は40万。中東最大の兵力だ。

地上戦力では、イスラエルの戦車数が2760台でイランは1650台。イスラエルの主力戦車メルカバMk4は世界屈指の性能だが、イラン軍の戦車の大半は二級品だ。

イスラエル空軍は装備も訓練の質も世界レベルで、操縦士も経験豊富だ。戦闘機は約250機で、最新鋭のステルス機F35ライトニングⅡを含む。対するイランは古い戦闘機が約160機。操縦士の技術も経験も劣る。

両国に名高い特殊部隊が

防空体制では、イスラエルはパレスチナのガザ地区から発射されるロケット弾を迎撃する「アイアンドーム」を配備。遠距離からの攻撃には最大射程70キロの「パトリオット」がある。

イランは長年、革命前にアメリカから供与された防空システムを使っていた。最近はロシアに接近し、16年にロシア製の地対空ミサイルシステム「S300」を採用した。こちらの射程は160キロ以上で、イスラエルの最新鋭機にも対抗できそうだ。



仮にも全面戦争となった場合、イスラエルには核カードがある。秘密のベールに覆われているが、核弾頭数は75発とも400発ともされる。そして地上配備の弾道ミサイルも潜水艦発射型の巡航ミサイルもある。

一方、核合意の崩壊でイランが核開発を再開しても、完成には何年もかかる。ただし弾道ミサイルの改良には力を入れていて、十分にイスラエルを攻撃できる能力を有する。

特殊部隊はどうか。イスラエルの諜報機関モサドは大胆な暗殺作戦で有名だ。イラン革命防衛隊にも精鋭のクッズ部隊があり、秘密工作を担当している。アメリカがイラクを占領していた時期には、反米勢力に破壊力の強い簡易爆弾を提供して何百人ものアメリカ兵を殺害した。

しかもイランには、レバノンのシーア派武装組織ヒズボラをはじめ、中東各地に仲間がいる。とりわけヒズボラはレバノン政府軍よりも強力だ。

諸外国との関係はどうか。イスラエルとアメリカは同盟国であり、最近のイランはロシアに接近している。仮にもミサイルが飛び交う事態となった場合、こうした大国はどう動くだろうか。賢明に対処しなければ、中東全域が火の海と化す。

<本誌2018年6月19日号掲載>



デービッド・ブレナン

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