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米中間選挙の直前情勢、上院は共和党が優勢か - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 2018年10月23日 19時0分

<下院は民主党が優勢だが、上院では共和党が優勢......選挙戦がヒートアップするなかで民主党が左傾化して中道票が逃げている一面も>

アメリカの中間選挙が11月6日(火)に迫っています。現時点での直前の情勢ですが、下院(435議席全員改選)は民主党がやや優勢、その一方で焦点は、上院において共和党が過半数を維持するかどうかにかかっています。

この上院選ですが、上院の定数は100で、今回は3分の1の33が改選のはずですが、ミシシッピとミネソタでは補選が同時に行われるため、事実上は35が改選になります。残りの65は非改選で、全体を整理するとこうなっています。

▼民主党・・・非改選23、改選26
▼共和党・・・非改選42、改選9

ということで、今回の選挙についていえば民主党は26議席を守らなければならない一方で、共和党は9をベースに議席を積み上げる、つまり攻める側という構図になっています。これは、前々回の2006年の際に、イラク戦争の行き詰まりとハリケーン「カトリーナ」被災への対応失敗でブッシュ政権与党の共和党が大敗した影響が残っているからです。

現時点での情勢ですが、著名な政治サイトを見てみますと、

まず、「Real Clear Politics」では、
「民主党44、共和党50、トスアップ(僅差)6」

次いで、「Electoral Vote Predictor」では、
「民主党47、共和党52、タイ1」

という数字となっています。

注目される州ですが、一番僅差となっていて、この2つのサイトの双方から「僅差もしくはタイ」という判定になっているのがフロリダ州です。共和党は、民主党の現職ビル・ネルソン議員をかなり追い詰めたのですが、ハリケーン被災という事態を受けてトランプ大統領の災害被害者への冷たさが嫌われる中で、流れが変わったようです。



一方で、テキサス州では、IT起業家のビト・オルーケ候補(民主)が、大統領候補にもなった現職のテッド・クルーズ議員(共和)を一旦は追い詰めたのですが、クルーズ候補は2016年の予備選における確執を越えて「なりふり構わぬトランプ支持作戦」をスタート。攻勢に転じています。

10月22日(月)には大統領自身がテキサス入り(ヒューストン)して「嘘つきテッドなどと言った過去は水に流す」として「今は、ビューティフル・テッドだ」などとクルーズ候補支持を訴える集会を開いていました。

全体的に上院で共和党が勢いを強めているのには、構造的な理由があります。上院議員選挙は各州が1選挙区ですから、基本的に民主・共和両党の支持者がいる中で、中道票の取合いと、消極支持層の棄権防止、相手の消極支持層の棄権誘導といった作戦が有効で、そこで「トランプ流の選挙目当て政策」が効果を発揮しているのです。

具体的には、最高裁に保守派のカバナー判事を送り込むことで宗教保守派を喜ばせる、保護貿易を徹底し国内の製造業を重視している姿勢を見せる、ロシアとの中距離核弾頭削減条約を破棄するなどロシアとの癒着を否定する効果を狙い、中国との確執を演出する、など様々なことをやっていますが、どれも中間選挙の投票日を計算してのことです。

例えば、10月22日の週の時点では、中米ホンジュラスから約5000人の難民が、ギャング集団の迫害から逃れるために、グアテマラ、メキシコ経由でアメリカを目指しています。これに対して、トランプ大統領は「国境に軍を配備しても入国を阻止する」などと発言しています。これも国境州を中心に、保守派にはアピールする姿勢でしょう。

では、民主党は押され気味かというと、決してそうではなく、トランプ政治のほとんどすべて否定したいという情熱で、選挙戦を戦っています。特に、カバナー判事の最高裁入りという事態を許したことで、強い危機感を抱えています。ただ、その思いが強ければ強いほど、主張は左にシフトしてしまい、中道票を遠ざけているのも事実です。テキサスで一度は優勢と言われたオルーケ候補などはそのいい例でしょう。

投票日まで残りわずかとなりましたが、「政局の一寸先は闇」という言葉はアメリカにも当てはまります。何かをきっかけに投票日までに大きく情勢が変わる可能性はまだ十分に残っています。

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