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【血みどろの王家】サウジ皇太子側近は、女性活動家の拷問も担当していた?

ニューズウィーク日本版 2018年12月10日 17時30分

<「凶悪」と恐れられたカハタニ王室顧問は、ムハンマド皇太子の数少ない政治顧問で、女性の権利拡大を求める人々の弾圧も担当していたようだ>

ジャーナリストのジャマル・カショギがイスタンブールのサウジアラビア領事館で殺害された事件をめぐり、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子の側近の1人が更迭された。この側近はサウド・アル・カハタニ元王室顧問で、逮捕された女性活動家に対する拷問にも深く関与したと伝えられている。

カハタニは10月、サウジアラビア検察が政府関係者のカショギ殺害への関与を認めた際に更迭された。カハタニはムハンマド皇太子に非常に近い立場にあるが、サウジアラビア政府は皇太子が事件について何も知らなかったとの立場を貫いている。

ロイター通信は12月6日、5~8月の間にサウジアラビアのジッダにある留置施設において、少なくとも1人の女性活動家が男性当局者の手により組織的に拷問されるのをカハタニが指示監督していたとする2人の関係者の証言を伝えた。拷問には性的嫌がらせや電気ショック、むち打ちといった手段が使われたという。

もしこれが真実なら、ムハンマド皇太子ら王族が幅広い人権侵害に関わっていたことを示すさらなる証拠となる。女性活動家への拷問をめぐっては、11月に人権団体のアムネスティ・インターナショナルとヒューマン・ライツ・ウォッチからも報告書が出ており、ジッダの留置施設で天井から吊されたり「無理やり抱きつかれたりキスをされた」との活動家の証言が明らかになっている。

カショギ殺害の実行を指示した張本人?

ムハンマド皇太子は当初、女性の自動車運転を解禁したり女性だけのコンサートなどのイベントを容認するなど、欧米では「改革派」と評されていたが、その一方で反対派への弾圧でも広く非難されてきた。非常に保守的なサウジアラビアの法制度に異議を唱えたとして著名な女性活動家たちが逮捕されているほか、シーア派イスラム教徒に対するスンニ派政府の差別的な政策を批判したとして死刑に直面している女性活動家もいる。

サウジアラビアはイエメン内戦に介入して数多くの民間人を殺したとして批判されていることもあり、カショギ殺害のあと、皇太子の人権侵害に対する世界の目は厳しくなっている。CIAの最近の報告書では皇太子とカショギ殺害を結ぶ証拠とされるものが挙げられており、CIAは事件の数時間前の皇太子とカハタニの間の通話を11件以上、傍受したと言われている。

カショギは死の直前、本誌の取材に対し、カハタニは皇太子の数少ない政治顧問の1人で、「凶暴」で「人々から恐れられている」と述べていた。カハタニは領事館内でカショギを襲うよう、皇太子の警護担当者に命じたと言われている。



カショギ殺害に皇太子が関与したことを示す証拠が次々と積み上がり、アメリカ国内からも相応の対応を求める圧力が高まっている中、ホワイトハウスはサウジアラビアの肩を持ち続けている。武器売却契約や産油国としての影響力の他、サウジアラビアがイランとの対抗上、欠かせない存在であることも理由だという。

だがドナルド・トランプ大統領や政権幹部の意に逆らう形で、超党派の上院議員がイエメンにおけるサウジアラビアへの軍事支援をカットするという踏み込んだ決議案を提出している。

サウジアラビアとは深い関係にあるトランプ大統領とその娘婿のジャレッド・クシュナーは、カショギ殺害の身の毛もよだつ詳細や他の残酷な犯罪の数々が明らかになった今もサウジアラビアをかばい続けている。トランプはその理由の1つとしてサウジアラビアの「カネ」を挙げている。

(翻訳:村井裕美)


トム・オコナー

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