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マインドフルネスで「太る生活」と決別しよう

ニューズウィーク日本版 2019年1月17日 18時20分

<確実に痩せてリバウンドなし健康的な食習慣が自然と身につく減量法>

今ここに意識を向けることでストレスを解消し、集中力を高める「マインドフルネス」。この画期的なストレス対処法は減量にも効果がありそうだ。

学術誌「臨床内分泌代謝ジャーナル」で発表された研究では、マインドフルネスのレッスンを受けながら減量を試みた人たちは対照群に比べ減量成功率が高かった。

肥満は世界中で猛威を振るう「現代病」だ。WHO(世界保健機関)によると、世界で年間少なくとも280万人が過体重か肥満に関連した疾患で死亡している。特に北米と南米では人口の62%が過体重で、肥満に絞っても26%に上る。

ストレスによるやけ食いやタガの外れた暴食、極端なカロリー制限とその反動による過食など、不健康な食生活が長年積み重なって肥満を招く。そのため肥満を解消するには長期にわたる生活習慣の改善が必要だが、これがなかなか難しい。

研究チームはマインドフルネスによって食べ物との向き合い方が変わるのではないかと考えた。自分の気持ちや状態に意識を向けるようになれば、過食につながる兆候を鋭くキャッチできるかもしれない。

マインドフルネスには自律神経のバランスを保つ効果があり、心臓病や癌、うつ病、不安神経症の改善にも有効だと考えられている。

減量への効果を調べる研究には、英コベントリー大学病院&ウォリックシャー国民保健サービス(NHS)財団の体重管理プログラムの登録者53人が参加した。研究チームは彼らのプログラム参加時と終了時の体重を記録し、食べ物への思いや食習慣について詳しく聞いた。

自己肯定感を高める

53人のうち33人はマインドフルネスのレッスンを受け、残り20人は対照群とした。

レッスン参加者は五感を働かせて、よく味わいながら食べる「マインドフル・イーティング」を学んだほか、太っていることで恥ずかしい思いをした経験を仲間と語り合った。また自分の体型や意志の弱さに自分でダメ出しする癖に気づき、その呪縛を解くエクササイズを実践。ありのままの自分を受け入れて自己肯定感を高め、心の健康を取り戻すセラピーも受けた。

レッスンを受けた人は平均して対照群より約3キロ多く減量できた。彼らは食べ物に対する異常な執着が減り、体重を管理しやすくなったと報告した。



今後の調査で今回の結果が確認されたら、誰でも実践できる効果的な減量補助法としてマインドフルネスを推奨できると、研究チームは期待している。

「とりわけグループセッションでは効果を上げやすい。今回の研究で参加者がすんなりマインドフルネスを習得することに驚いた」と、この研究に参加したトーマス・バーバー博士は本誌に語った。

この研究には限界もある。サンプル数が少ない上、参加者が仲間との交流で減量に意欲的になったのか、マインドフルネスの効果かはっきりしないこと。また、この研究では減量プログラムの一環として週1回病院でレッスンが行われたが、別の状況でも効果があるかは不明だ。

バーバーは減量中の人がインターネットなどで情報を得て自分で実践しても効果があるとみている。マインドフルネスの特長は思考パターンに働きかけること。思考が変われば習慣が変わり、健康的な生活習慣が自然と身につく、というわけだ。

<本誌2018年01月15日号掲載>



※2019年1月15日号(1月8日発売)は「世界経済2019:2つの危機」特集。「米中対立」「欧州問題」という2大リスクの深刻度は? 「独り勝ち」アメリカの株価乱降下が意味するものは? 急激な潮目の変化で不安感が広がる世界経済を多角的に分析する。


カシュミラ・ガンダー

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