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トランプ、金正恩と「恋に落ちた」の真意

ニューズウィーク日本版 2019年2月25日 14時30分

<昨秋の「恋に落ちた」発言の意味は、北朝鮮の潜在成長力、つまりカネのことか?>

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と「恋に落ちた」――ドナルド・トランプ米大統領は昨年9月、こう言った。

FOXニュースのアンカー、クリス・ウォレスは2月24日、ゲストのマイク・ポンペオ国務長官にその意味を尋ねた。

ポンペオは27日からの2度目の米朝首脳会談について話をするためウォレスの番組に出演していた。ウォレスはポンペオに「恋に落ちた」の真意を問い詰め、また複数の専門家がトランプの金正恩に対する期待を非現実的と評価していることについても尋ねた。

「昨年6月にシンガポールで行った初の米朝会談の後、大統領は『もはや北朝鮮の核の脅威はない』とツイッターに投稿した。その後も繰り返し、金委員長との関係は強固なものだと言ってきた」とウォレスは指摘。そしてトランプが金正恩との関係について自慢げに語る映像を流した。

「(金が)美しい手紙をくれた。素晴らしい手紙だった。私たちは恋に落ちた」と語る映像だ。

金正恩の権力に惚れた?

ウォレスはポンペオに尋ねた。「『恋に落ちた』とはどういう意味か」

「関係というのは大事なものだ」とポンペオは答えた。「人との関係は、非核化の壮大な戦略からもっと単純な問題まで、あらゆるものに影響を及ぼす。真に力のある指導者同士が効果的にコミュニケーションを取れることは重要だ」と彼は続けた。「私はこの数週間から数カ月、それを見てきた。2人がメッセージのやり取りをし、我々のチームがそこから自分の任務を理解する」

別のインタビューで、トランプが「もはや北朝鮮の核の脅威は存在しない」とツイートしたことについては、ポンペオはこう答えた。「大統領が言ったのは、シンガポール(の第1回米朝会談)で努力したことについてであり、この努力がアメリカ国民に対するリスクを大幅に引き下げた。アメリカ国民の安全を守るのは大統領と国務長官の使命だ。我々はその達成を目指している」



1月末には情報機関のトップが、北朝鮮と金に関するトランプの楽観的な評価を否定した。

トランプ自身が指名したダン・コーツ国家情報長官は米上院情報委員会の公聴会で「我々は北朝鮮が大量破壊兵器能力の保持を目指していると見なしている。北朝鮮の指導部は体制維持に核兵器が不可欠と考えているため、同国が核兵器とその生産能力を完全に放棄する可能性は低いと考える」と証言。「こうした見方は、我々が捉えた、完全な非核化とは矛盾する一部の活動に裏付けられている」と説明した。

情報機関の指導部は同公聴会で、イランについても大統領の外交政策とは食い違う報告を行っており、トランプはこれに反発して、彼らは「認識が甘く」「学校に戻って勉強し直す」べきだと批判していた。

24日朝、大統領は再び北朝鮮と2回目の米朝首脳会談について前向きな見方を示した。

トランプはツイッターに、「25日の早朝に、北朝鮮の金正恩委員長との首脳会談に向けてベトナムのハノイに出発する。我々はいずれも、シンガポールでの第1回首脳会談で達成した進展が継続されることを期待している」と投稿。さらに「非核化?」と問いかけている。

2月21日には、かつてCIAで朝鮮半島情勢の分析責任者を務めていたブルース・クリングナーが「(昨年6月の)シンガポールでの米朝首脳会談以降、非核化は全く進んでいない」と指摘。彼は北朝鮮が非核化とは逆の方向に進んでいることを示す報告書や衛星写真を引証し、「北朝鮮は核開発を継続している」と主張した。

しかしトランプは24日の別のツイートの中で、こう主張した。「金委員長は、核兵器を放棄すれば自国がすぐにでも世界有数の経済大国になれることを、おそらくほかの誰よりも分かっている。北朝鮮はその地理と人々(そして彼)のお陰で、ほかのどの国よりも急成長を遂げる潜在能力を秘めているからだ!」

(翻訳:森美歩)


ジェイソン・レモン

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