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マイケル・ジャクソンの「被害者」が、少年だった頃の性的虐待を赤裸々告白 

ニューズウィーク日本版 2019年3月5日 16時0分

<マイケルの小児性愛疑惑を扱ったHBOのドキュメンタリー映画『リービング・ネバーランド』が、ファンの反対にも関わらず放送された。その衝撃の内容とは>

故マイケル・ジャクソンの児童に対する性的虐待疑惑を告発したHBOのドキュメンタリー映画『リービング・ネバーランド』が、3月3日と4日に放送された。ファンや家族がまるで「公開リンチ」だと怒り、放送中止を求めていたいわくつきの作品だ。

映画の中心は、かつて「ポップの帝王」から性的虐待を受けたと主張する「被害者」2人、ジェームズ・セイフチャック(37)とウェイド・ロブソン(41)だ。2人は少年時代、長年にわたってマイケルからグルーミング(性的虐待者が被害者を説得・洗脳し手なずけること)を受けたと、似通った主張を行っている。ドキュメンタリーを基に、当時子役だったセイフチャックの主張を振り返ってみよう。

セイフチャックは、ペプシのCMで共演した1986年に初めてマイケルと会った。当時10歳で、マイケルの大ファンという訳ではなかったという。


セイフチャックがマイケルと共演したペプシのコマーシャル


「大ファンだった記憶はない」と、現在37歳のセイフチャックは『リービング・ネバーランド』の中で語っている。「当時はマイケルよりも(テレビアニメの)ボルトロンやトランスフォーマーに夢中だったと思う」



その後オーストラリア・ツアー中だったマイケルから「ジミー(セイフチャックのこと)」に連絡があり、2人はロサンゼルスにあるマイケルの邸宅「ヘイブンハースト」で再会することになった。そして、まだ公開前だった子ども向けSF映画『ニューヨーク東8番街の奇跡』(87年)を邸内の映画館で観た。マイケルはセイフチャックに「スリラー」のMVで着ていたジャケットをプレゼントし、帰り際に現金がパンパンに詰まった封筒を渡した。その後、マイケルはカリフォルニア州シミにあるセイフチャックの自宅にも出入りするようになった。

母親の部屋がどんどん遠くになる

「マイケルはポップコーンが大好きだった。何度も家に来たよ。よく一緒に、近所をただお喋りしながら歩いた。もちろん彼が人目を避けられる夜にね」とセイフチャックは映画の中で語っている。「(大スターと遊ぶというよりは)自分と同じぐらいの年齢の友人と遊んでいる感覚に近かった」

その後、セイフチャックの家族はハワイで開かれたペプシの年次総会をはじめマイケルの旅に同行するようになった。初めての旅では、ジミーは寝室も食事も母親と一緒だった。ドキュメンタリーにも出演している母親は、その後の旅ではマイケルと息子が泊まる部屋からどんどん遠いところに部屋が予約されるようになったと語っている。その後ジミーは学校の夏休みにマイケルのツアーに同行するようになり、楽曲「Bad」ではマイケルと一緒に踊りもした。

性的虐待が始まったとされるのは、パリ公演の時。マイケルがジミーにマスターベーションを教えたという。「みんながやっていることを見せてあげる、君もきっと楽しいよ、と。何か新しいことを教えてあげる、という感じだった。初めてあんなにやったから、性器が腫れ上がったのを覚えている」とセイフチャックは語っている。



「性器をお湯に漬けたのを覚えている。おしっこが出にくくて、出やすいようにとマイケルがお湯を入れたコップを持ってきたんだ。おしっこができなかったこと以外に、嫌な思いをした記憶はない。ある種の絆ができたような感じだった。このツアーが性的な関係のはじまりだった」

ジャクソンは、セイフチャックが彼にフレンチ・キスを教えたと主張していたそうだ。彼らは二人の間だけの合図を決めていた。相手への性的愛情を伝えるには、手をつないで手のひらを引っ掻き合うという合図だ。

「マイケルは、性行為をした相手は僕が初めてだと言っていた」とセイフチャックは言う。「マイケルは最もビッグなエンターテイナーで天才だ。その天才が僕を特別だと考えている。嬉しいに決まっているだろう?」

HBO


またセイフチャックは、マイケルから前かがみになって尻を見せて欲しいと言われ、それを見てマイケルがマスターベーションをしていたとも語った。もう一人の被害者、ウェイド・ロブソンも同様の主張をしている。

セイフチャックはさらに、マイケルが自分との性的行為が見つからないようにするためどれほど用心深かったかも詳細に語った。「彼は何度も僕に練習をさせた。ホテルの部屋にいる時に誰かが入ってくるという設定で、彼が合図をしたら僕は音を立てずにできる限り早く服を着なければならなかった」と、彼は映画の中で語っている。「誰かに見つかったら彼の人生も、僕の人生も終わりなんだと何度も言われた」

ネバーランドの邸宅内で「毎日」

マイケルはセイフチャックを家族から引き離すことにも苦心したという。母親をはじめ、女性がいかに邪悪な存在かを彼に説いたというのだ。「だから自分の両親は悪い人、マイケルはいい人だと考えるようになっていった」と彼は言う。

性的虐待は、マイケルが1988年にネバーランド牧場を購入した後も続いた。「毎晩、彼の主寝室のベッドの隣にあるクローゼットの中に毛布を敷いて寝るのがきまりだった。そうすれば誰かが来て寝室の戸を開けても、すぐには見つからずにすむ」とセイフチャックは言う。「キスもしたし、互いに性器を擦りつけ合ったりもした。オーラル・セックスもした。その後はマイケルが僕に自分の乳首を吸うように言って、彼が自分で終わっていた」

邸内のさまざまな場所で性的行為を行った、とも言う。アメリカン・インディアン風のテントやアーケード、ジャクジー、3階の屋根裏のおもちゃ部屋、ゲストハウス、映画館や、テーマパークのお城や列車の駅の上にある小さな寝室などの場所だ。

「性的行為は毎日あった」とセイフチャックは言う。「こう言うと気持ち悪いが、初めて恋人ができてやりまくるのに似ている」

マイケルの遺産管理団体は、セイフチャックの主張はつくり話だとし、作品に抗議している。

マイケルは生前にも児童に対する性的虐待容疑で2度起訴され、2度とも金を払って示談にしている。一方、セイフチャックとロブソンは裁判の過程で、マイケルの弁護側証人として「虐待はなかった」と証言したこともある(関連記事:本誌2019年3月12日号)。

(翻訳:森美歩)



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アンドルー・ウェーレン

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