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メキシコ国境に押し寄せる不法移民最多で米国境警備の危機

ニューズウィーク日本版 2019年3月6日 16時50分

<トランプが壁建設を主張し始めてから、皮肉なことにメキシコ国境を超えてくる不法移民が急増。家族や一人きりの子どもが増えて人道の危機に>

米国境警備当局は3月5日、メキシコとの国境を超えてアメリカに入国した不法移民の数は、2月だけで7万6000人以上に達した、と発表した。

2月に国境を超えた不法移民の数は、前年同月の2倍以上。「メキシコ国境に壁を作る」が公約のドナルド・トランプが米大統領に就任して以来、最多となった。

トランプは、国家非常事態宣言を発令し、大統領権限で壁の建設資金を確保しようとしている。米上院は非常事態宣言を無効にする見通しだというが、それでもトランプは拒否権を行使する意向だ。トランプによれば、国境では今、アメリカの存亡に関わる危機が起きているので、どうしても壁が必要なのだ。

危機は危機かもしれない。だがアメリカの存亡に関わるというよりは、人道の危機だ。

米税関・国境警備局(CBP)のケビン・マカリーナン局長と、国境警備隊のブライアン・ヘイスティングスは3月5日、不法移民に関する記者会見を開き、国境を超えた移民の数はここ5カ月で4度、最多記録を更新したと述べた。マカリーナンは、国境警備および税関当局の体制は「限界点」に達していると述べた。

家族と子供とグループ

CBPによると、メキシコとの国境で身柄を拘束された不法移民のうち60%は、家族(FMUA)と、同伴者のいない未成年者(UAC)が占めている。つい1年前までは単独の男性ばかりだったのと様変わりだ。

CBPおよび国境警備隊によると、不法移民たちはニューメキシコ、テキサス、アリゾナ各州の人里離れた場所を狙い、数十人、場合によっては数百人単位で越境を試みるという。

国境警備当局も、厳しい制限や越境可能地の削減などで対抗しているものの、国境へと押し寄せる不法移民の波を押しとどめることができない。それどころか越境を試みるグループは大規模になる一方。100人以上のグループは、3年前はたった2つだったのに、昨年は70以上に達した。また「家族単位の外国人」が「記録的な数で越境している」とCBPは指摘、身柄を拘束した家族の数は、前年から300%増加したと述べている。

マカリーナンは、「現状は国境警備の処理能力をとうに超えており、限界点でなんとか持ちこたえている」と窮状を訴えた。宿泊施設や医療施設、移動手段など何もかもが足りないというのだ。「これは明らかに、国境警備および人道的な観点からの危機と言える」

マカリーナンによれば、新たな移民希望者の90%以上はグアテマラ出身、その他がホンジュラスやエルサルバドル出身で(かつては大半がメキシコ人)、アメリカの手前のメキシコを速やかに通過するため、徒歩ではなくバスなどの移動手段を用いてくるケースが増えている。以前ならアメリカ国境にたどり着くまでに数週間を要していた中米からの移民希望者が、今は数日でメキシコを通過するケースも増えているとマカリーナンは指摘した。



税関・国境警備局の収容施設では、家族単位の移民希望者に対応できるスペースは3000人分。これに対して、アメリカ国境を越境した移民は1月だけで2万8000人以上に達した。

「家族単位や未成年者だけで国境を超える移民が大幅に増加し、ますます辺ぴな場所を選んで潜り込む傾向が強まっている。従って、彼らの移民申請手続きや身の回りの世話などをするNGOの活動も困難に直面している」と、マカリーナンは言う。

特に未成年者についてはより詳細な健康診断を行うための資金や人員の増強が必要だという。CBPは、メキシコと国境を接するテキサス州の町エル・パソに新たな申請窓口を設け、家族単位の移民希望者や、同伴者のいない未成年者に対して、より適切な保護を提供する準備を進めている。

(翻訳:ガリレオ)



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ベンジャミン・フィアナウ

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