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大混戦の民主党予備選、結局笑うのはトランプかも - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 2019年3月7日 19時0分

<予備選に多数の候補者が出馬していることだけでなく、民主党は党全体で様々な問題をかかえている>

3月4日(月)、かねてより「民主党に鞍替え」して大統領選に出馬する意向を見せていたマイケル・ブルームバーグ前NY市長が、最終的に出馬を断念しました。またその翌日5日には前回候補だったヒラリー・クリントン氏も出馬しないと言明しています。

2人が「辞退」した動機は似通っているようです。民主党内では中道に属する2人は、同じく中道に属するとされるジョー・バイデン前副大統領との「予備選における票の食い合い」を避けたという解説がされています。おそらく、そのような計算があったのは事実でしょう。ただ、2人とも「トランプ政治を終わらせたい」という考えは強く、今後とも民主党の候補を支援するという意味では政治活動は継続するとしています。

では、これで民主党の予備選が単純化されるかというと、決してそんなことはありません。自薦他薦を含めると、20人とか、数え方によっては30人というような多数の候補の名前が出ているということもありますが、それ以前に党全体として様々な問題点を抱えているからです。

とりあえず、現時点での有力候補7人を挙げてみることにしましょう。数字は、政治サイト「リアル・クリアー・ポリティクス」が公表している、全国規模の世論調査の支持率の平均値です。(▲は出馬未表明、他はすでに立候補を表明)

・1位 ジョー・バイデン前副大統領(男性・白人・中道)▲    29.3%
・2位 バーニー・サンダース上院議員(男性・ユダヤ系・左派)  19.8%
・3位 カマラ・ハリス上院議員(女性・ジャマイカ+インド系・左派)11.8%
・4位 エリザベス・ウォーレン上院議員(女性・白人・左派)   7.0%
・5位 コーリー・ブッカー上院議員(男性・アフリカ系・左派?) 5.5%
・6位 ベト・オルーク元下院議員(男性・白人・左派)▲     5.3%
・7位 エイミー・クロブチャー上院議員(女性・白人・中道)   3.3%

このリストですが、順位も含めて問題点が3つあります。

1つ目は、上位の2人が高齢ということです。バイデン氏は76歳で仮に当選して就任すると78歳、サンダース氏も77歳で就任時には79歳ということで、これは、これまでの最高齢であるレーガン(69歳)とトランプ(70歳)の就任時よりも大幅に高齢で、1期目のうちに80代になってしまいます。

これでは、トランプサイドが「自分より6~7歳も高齢」だとして、健康不安キャンペーンを仕掛けてくると、本選では苦しい戦いになる可能性があります。それにも関わらず、高齢であるこの2人が高い支持率を得ているのは、今後の民主党の選挙戦を難しくしています。



2つ目は、民主党支持者の中には「女性と有色人種」への期待感が強いということがあります。ヒラリーの果たせなかった「女性大統領」という夢を実現したい、オバマの作った「アメリカの多様性」の伝統を継承したい、そして何よりもトランプ政権の4年間とは全く別の時代を作りたいという方向性は、非常に強いのです。この思いは、結果的に正副大統領候補の組み合わせに影響を与えると思われます。

3つ目は、中道と左派それぞれに困った事情を抱えているということです。まず、中道の場合、本格候補がバイデン、クロブチャーという2人しかいないという問題があります。他にも大勢が名乗りを上げていますが、泡沫候補ばかりです。

また左派の場合は、ハリス、ウォーレン、ブッカーの3人が「ドングリの背比べ」になっているだけでなく、29歳のアレクサンドリア・オカシオコルテス議員(AOC)が主張している政策パッケージの「グリーン・ニューディール」を支持してしまっています。つまり自前の政策を持っていないわけで、いくらミレニアル世代におけるAOCのカリスマ的人気に頼るにしても、大統領を目指すにしてはややお粗末です。

予備選というのは筋書きのないドラマです。思わぬ人物が旋風を起こしたり、無名の人物が急成長したりする可能性はいくらでもあります。ですが現時点では、ちょうど働き盛りの年齢の候補がカリスマ性をメキメキと発揮して輝くとか、女性や有色人種の候補で広範な支持を獲得できそうな人物が「ポスト・トランプ」時代への期待感を背負うといったストーリーは生まれていません。

そんな中で、6月には予備選のディベートが始まりますが、現在の雰囲気では「トランプへの批判をどれだけ大声で言えるのか?」という争いになってしまいそうです。仮にそうなると、選挙戦自体のクオリティが下がってしまい、結局はトランプの再選を許す可能性が出てきます。

すでに2020年11月を目指した長距離レースは始まっているのです。

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