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トランプ政権「万年閣僚候補」クリスティーの恨み節が炸裂

ニューズウィーク日本版 2019年3月12日 16時10分

<トランプ政権顧問のクリスティー前ニュージャージー州知事が、1月に出版した回顧録でクシュナーやバノンら政敵たちにリベンジ>

クリス・クリスティー前ニュージャージー州知事とドナルド・トランプ米大統領は似た者同士だ。どちらも出世至上主義のニューヨークの風土で育ち、どちらも騒がしく、どちらも中身のない大言壮語を本人の魅力で埋め合わせてきた。そして批判されるとすぐに個人攻撃だと受け取ってしまう。

クリスティーは16年の大統領選に名乗りを上げたものの「ブリッジゲート事件」と呼ばれるスキャンダルで撤退を余儀なくされ、その後トランプの政権移行チームの責任者になったがクビを言い渡された。だからなのか、1月に出版した回顧録『最後まで言わせろ』には復讐の思いが満ちている。この本は、トランプの首席戦略官・上級顧問を務めたスティーブ・バノンやトランプの娘婿で上級顧問のジャレッド・クシュナーへの復讐の手段でもあるわけだ。

クリスティーはバノンのことを「あれだけうぬぼれた様子でありながら、同時に乱れたままのベッドみたいな男はこれまで見たことがない」と表現し、クシュナーについては「サラダばかり食べている奴」と評している(これはクリスティー流の侮辱表現だ)。

しかもクシュナーは、クリスティーを副大統領候補にという話が持ち上がった際に横やりを入れた。クシュナーはトランプに対し、クリスティーが連邦検事だった00年代前半に「私の父を(脱税などで訴追して)破滅させようとした」と話したらしいのだ。クリスティーによればクシュナーはその後、バノンに自分を政権移行チームから追い出させたという。

トランプ政権で続く混乱は自分を登用しなかったせいだと言うクリスティーに、本誌ニコール・ストーン・グッドカインドが話を聞いた。

***


――今なぜこの本を書いたのか。

ブリッジゲート事件が起きて、大統領選に出て、ドナルド・トランプを大統領に推した。そしてこれまでの2年間、彼の相談役として政権に関わってきた。つまり本を書く理由がどんどん積み上がっていたわけだ。また、私がどのように物事を見ているかについて人々に真実を語りたかった。それを期待されていると思ったからだ。

――政権内のポストが欲しくて書いたのではとの声もあるが。

違う。閣僚になりたければ最初からなれた。労働長官のオファーも受けたし、国土安全保障長官や大統領特別補佐官のオファーも受けた。しばらく前には首席補佐官の話も出た。大統領には最初から言ってある。私が欲しいのは副大統領か司法長官の2つのポストだけで、それ以外には興味がない。

――トランプは次の大統領選で再選を目指すつもりだと思うか。

大統領が「これ以上やってられるか」と言い出す日がいつか来てもおかしくない。人生を政治に懸けてきた人ではないし根っからの政治家でもないから、辞めるのは他の人たちと比べてずっと容易だろうと思う。



――大統領は今の時点で辞めることを考えているのか。

そうは思わない。非常に厳しい状況に置かれると、彼は意地になる。(逆に)退屈していれば、出馬しない可能性はずっと高くなるだろう。彼は圧力をかけられるとやり返すタイプだ。

――大統領とはどのくらいの頻度で話をしているのか。

2~3週間に1度くらいだ。たいていは夕方に住まいのほうに電話をして、最近の様子を確かめる。私の意見を伝えたくてかけることもあるし、いまテレビで何を見ているのかと尋ねることもある。

――あなたはわが子を自分の下で働かせたいと思うか。

思わない。家族をクビにして、その後で感謝祭のパーティーを一緒に過ごすのはつらいからだ。この点では私と大統領とは考えが異なるし、その点について本人に話をしたこともある。私は「あなたは子供たちをホワイトハウスで働かせる決断をしたが、それは大統領にとっての生活をより困難にする決断であり、首席補佐官にとってはあり得ない決断だ」と言った。

そんな人々(大統領の家族)を部下にされたら首席補佐官はたまらない。なぜなら重要な報告があるときに彼らは(首席補佐官の頭越しに)直接、大統領のところに行ってしまうからだ。

――民主党に目を向けると、20年大統領選に最も出馬の可能性が高いのは誰か。

ジョー・バイデン(前副大統領)が難敵になるかもしれない。長年の功績があり、長年にわたって民主党の各方面から点を稼いできているからだ。彼はまた、オハイオ州やミシガン州などのトランプが勝たなければならない白人労働者階級の多い地域でトランプと渡り合えるかもしれない政治家の1人だ。だがバイデンは高齢だから(現在76歳)、職務に耐え得ることを証明しなければならないだろう。

――民主党のアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員が提案する、年収1000万ドル以上の高所得者層を対象に所得税の最高税率を70%に引き上げる税制案をどう思うか。

成功した人を罰するのはいかがなものか。どこまで公平さを追求したいのか。それはどういう数字なのか。それは70%なのか80%なのか。一定水準を超えて成功に罰で報いるのは社会にとって害悪だ。

――だが全米での世論調査では、アメリカ人の過半数がこうした極端な税制に賛意を示している。

誰だって他人に対する課税ならOKと答える。だがそれがチャンスに対する阻害要因になることを説明すれば、状況は変わるはずだ。

――賛成した人々の大半の所得は、1000万ドルに近い数字になることすらないはずだ。

ニュージャージー州では、それに近いくらい稼いでいる人はたくさんいる。事実、そうした人々は住む場所をよく変えるし、カネをよそに持って行ってしまう方法を見つけ出すだろう。ケイマン諸島の金融機関が税逃れのための口実をひねり出すのにたけているのは、人々のニーズがあったからだ。勧めるわけではないが、それが現実だ。

――24年の大統領選はどうするつもりか。

私は今56歳だから、いかなる可能性も否定するつもりはない。人生先は長いし、やるべきことはたくさんある。『最後まで言わせろ』は「私はまだやり残したことがある」とみんなに言うための本だ。

<本誌2019年03月12日号掲載>


ニコール・ストーン・グッドカインド

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