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トランプは娘夫妻を政権から追い出したがっていた

ニューズウィーク日本版 2019年3月13日 17時44分

<娘とその夫を大統領補佐官にするなど完全な親バカと思われたトランプだが、政権発足後半年でもう我慢できなくなっていたらしい>

ドナルド・トランプ米大統領は、娘のイヴァンカ・トランプと娘婿のジャレッド・クシュナーをホワイトハウスから追い出したがっていた。マスコミにさんざん叩かれて政権のイメージを貶めたからだ──ジャーナリストのビッキー・ワードが新著でそう明かしている。

3月19日に発売される『Kushner Inc.』によれば、トランプは当時の大統領首席補佐官ジョン・ケリーに、娘婿夫婦は「ゲームの仕方を知らない」と嘆き、彼らの権限を剥奪してワシントンから追い出してほしいと頼んだという。縁故批判をものともせず娘婿夫婦をホワイトハウスに入れて重用してきた親バカぶりからすると意外な一面だ。

もっとも、2人を政権から追い出したいというトランプの願望には波があったと、ニューヨーク・タイムズ紙の書評は書く。ケリーが政権に加わった2017年夏には、トランプはイヴァンカとクシュナーに不満を抱いていたという。

「子どもたちを追い出せ。ニューヨークへ送り返せ」。トランプはケリーにそう命じたと、ワードは書いている。だが、ケリーはトランプに、2人を排除するのは難しいと答えた。というのも、2人は大統領選の初期から、トランプの側近のなかでもとりわけ大きな影響力を持つ存在だったからだ。

クシュナー夫妻の狡猾な立ち回りが詳細に

ワードの本では、イヴァンカとクシュナーが政権内のライバルたちよりも長く生き残り、トランプの大統領就任から激動の2年が過ぎてもなお重要な地位を保つに至った舞台裏の戦略、立ち回り、権力闘争が描かれている。ワードは本書の執筆にあたり、2年にわたって220人に話を聞いた。その多くは、匿名を条件に取材に応じた。

イヴァンカとクシュナーはこれまで、極端に走る大統領に対して、穏健かつ中道的に軌道修正させる存在とされてきた。しかしワードによれば、彼ら夫婦自体も、慣例を無視することに何の呵責もないタイプだという。大統領に対する影響力を利用してみずからの野望を推し進め、トランプによる最悪の本能的言動のいくつかを助長していたとのことだ。

たとえば、元国家経済会議委員長のゲーリー・コーンは、ネオナチと白人至上主義者たちが2017年にバージニア州シャーロッツビルで開催した集会「ユナイト・ザ・ライト・ラリー(Unite the Right rally)」に対するトランプの反応をめぐって辞任を考えていたときに、イヴァンカのもとを訪ねた。集まった参加者たちが反ユダヤ主義や人種差別を公然と表明し、集会に反対する人々との衝突で死者が出たにもかかわらず、トランプはその悲劇的な結果の責任は「双方に」あると発言した。



コーンはトランプが白人至上主義者を非難しなかったことに抗議するためイヴァンカの助言を求めに行ったが、ワードの本によれば、イヴァンカはこう言った。「父は人種差別主義者ではない。そんなつもりで言ったのではない」

コーンはニューヨーク・タイムズに宛てた文書のなかで、クシュナー夫婦とは「うまくいっていた」と述べ、「今も友人だ」としているが、ワードによれば、2人に対するコーンの見方は、イヴァンカの頑なな態度により、取り返しがつかないほど損なわれたという。

また、イヴァンカ夫婦は国務省に対しても影響力を行使しようと試み、国費で旅行できる人を自分たちで決めようとしたこともあるようだ。省内の情報提供者の話としてワードが伝えているところによれば、イヴァンカは大統領専用機「エアフォースワン」での移動を求める不適切な申請をした。さらに、専用機の使用を確実なものにしたいと考えたイヴァンカとクシュナーは、スティーブン・ムニューチン財務長官を同行させるつもりだったという。財務長官が専用機を使うのであれば、なかなか文句は言えないからだ。

クシュナーの弁護士アビー・ローウェルの広報担当者はニューヨーク・タイムズに対し、ワードの本は「真実を追求しようという真摯な試みどころか、完全なフィクションだ。まちがいを残らず訂正するのは時間がかかりすぎて無意味なほどだ」と語った。

(翻訳:ガリレオ)




※3月19日号(3月12日発売)は「ニューロフィードバック革命:脳を変える」特集。電気刺激を加えることで鬱(うつ)やADHDを治し、運動・学習能力を高める――。そんな「脳の訓練法」が実は存在する。暴力衝動の抑制や摂食障害の治療などにつながりそうな、最新のニューロ研究も紹介。



デービッド・ブレナン

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