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ベルリン:男女の賃金格差は21%、だから女性の運賃を21%割引に

ニューズウィーク日本版 2019年3月14日 18時15分

<ドイツはヨーロッパで男女間の賃金格差が最も大きい国の一つ。この格差解消を訴えるキャンペーンの一環として、ベルリン公共交通BVGが施策を発表した>

来る3月18日月曜日はドイツのイコール・ペイ・デイ「同一賃金の日」だ。男女間の賃金格差問題への注意を喚起するのが目的だ。欧州委員会の統計局ユーロスタットの2017年のデータによると、ドイツはヨーロッパで男女間の賃金格差が最も大きい国の一つで、21%の差がある。ドイツより格差が大きいのは、エストニアとチェコのみだ。

格差解消を訴えるキャンペーンの一環として、首都ベルリンではベルリン公共交通BVGが、女性のために通常の1日券より21%安い「女性チケット」を3月18日限定で販売することを公表した。

男女賃金格差を示すイコール・ペイ・デイの日付

イコール・ペイ・デイは世界的に見られるが、その日付は国、そして年によって異なる。これは、その国の男女間の賃金格差によって算出されるもので、差が21%であるドイツでは女性が男性より77日多く働いてやっと同一賃金が達成されるということになり、それが2019年では3月18日というわけだ(2018年1月1日を基準にした時)。したがって、イコール・ペイ・デイの日付はその国の格差状況を如実に表しているといえる。

BVGはこの象徴的な数字を使用し、この日、通常7ユーロする1日乗車券より約21%安い「女性チケット」を5.5ユーロで販売する。ベルリンは今年始め、ドイツで初めて3月8日の「国際女性デー」を祝日にすることを決定し、先日さっそく実施したばかりだ。ドイツでは全国的な祝日のほかに州による祝日があるのだが、ベルリンはもともと他の州より祝日の数がやや少なかったため、増やす方向での議論が長く続いていた。「国際女性デー」のほかにも、ベルリンの壁が崩壊した11月9日なども新祝日として検討されていたようだ。

首都が一丸となって女性を支援、巷の反応は?

市が有する公共の交通機関であるBVGの今回のキャンペーンにより、ベルリンは市としての女性への支援を連続して前面に押し出す形となった。ポリティコEU版によると、BVGは「ベルリンのほとんどの男性は、今回のアクションを理解しているだけでなく、サポートもしている」と考えている。

だがSNSなどの反応を見ると、巷での評判はいまいちのようだ。「イコール・ペイ」とは本来「同一の仕事に対する同一賃金」を目指すものなので、平均的な21という数字を利用して、職業の区別なく女性にだけ一律にディスカウントを提供するのはおかしいと言う男性もいる。



さらに、BVG は今週14日にストライキを予定していること、バス全線でWi-Fiの使用可能を目指すなど「無駄なコスト」をかけすぎていること、そして時間に正確でないことなどから、今回のキャンペーンを諸問題から市民の目をそらせるためのポーズだと見る向きもある。

また、ドイツ人はこのような形の割引に慣れていないのかもしれない。以前日本に来たドイツ人男性は、日本の居酒屋や旅館などでよくある「女性割引」について、「女性を(子供のように)格下に見ているようで、おかしい」と苦言を呈した。

国ごとの男女賃金格差を如実に表す

しかしながら、大半は「たった1日、イコール・ペイへの注意を喚起するためのアクションに目くじらをたてることもなかろう」という意見のようだ。賛成する者も多い。「女性チケット」は女性の使用に限られ、男性が使用した場合は、子供やシニアなど通常の割引チケット使用適用外のときと同じように罰金を課される。つまり、女性であることを身分証明書などで証明する必要があるわけだが、性の定義が複雑になってきた昨今、どのように対処するのか興味深いところだ。

肝心のBVG自体ではイコール・ペイが実現されているようだ。また、現在1万5千人いる従業員のうち約20%が女性だが、これを2022年までに27%に増やすことを目標としているという。

ちなみに今年、スイスのイコール・ペイ・デイは2月22日だった。アメリカでは4月2日が予定されている。日本では昨年、4月6日がイコール・ペイ・デイとされ、各種の催し物が行われたようだが、今年の情報はまだ見当たらない。

男女間の賃金格差ワースト常連国の日本。格差が縮まれば縮まるほどイコール・ペイ・デイの日程は早くなる。いつかイコール・ペイ・デイそのものがなくなることを願う。



Equal Pay Day 2018-ZDF

モーゲンスタン陽子

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