男性との収入格差が縮まらない女性の不当な現実 改善しているように見えても実態は違った
東洋経済オンライン / 2024年4月18日 16時0分
女性の就業率は近年7割を超え、M字型カーブと呼ばれる20~30代の女性の離職も減っているようにみえる。しかし、女性の出産年齢、職種、正規/非正規などを調べるとまったく違った実態がみえてくると、「階級・格差」研究の第一人者である橋本健二教授は語る。働き続ける女性は本当に増えているのか。
※本記事は橋本健二著『女性の階級』(PHP新書)の内容を一部抜粋・再構成したものです。
男女間賃金格差は一貫して大きい
戦後70年間にわたり一貫して、男女間の賃金格差は規模別賃金格差や産業別賃金格差より大きかった。日本の産業には二重構造があり、大企業と中小企業の間に大きな格差があるというのは、誰でも知っている常識である。また産業分野の間には賃金格差があり、金融保険業の賃金が高く、小売業の賃金が低いというのも、広く知られた事実である。
しかし実際には、男女間賃金格差は1980年ごろまで1.8倍から2.3倍にも達しており、1.2倍から1.4倍程度にとどまる規模別賃金格差や産業別賃金格差よりはるかに大きかった。そしてその後、規模別賃金格差や産業別賃金格差が急速に拡大していくものの、男女の平等が少なくとも表向きは当然のこととされるようになった今日でも、依然として男女間賃金格差のほうがかなり大きい。つまり男性と女性の間の格差という観点からみれば、日本は昔から一貫して格差社会だったのである。
しかも男性と女性の間の格差は、現実にはさらに大きい。なぜなら、ここに示されている賃金格差はあくまでも常用労働者の賃金格差であり、それ以外にも低賃金の女性非正規労働者、無給の家族従業者として家業の自営業に従事する女性たち、そして無職の女性たちがいるからである。
下の図表は、働いているかいないか、またどのような形で働いているかを問わず、20歳から69歳までのすべての男性と女性を対象に、個人年収の格差の推移を示したものである。
全体平均を1としたときの男性、女性それぞれの年収は、1985年で1.684と0.413、2015年では1.517と0.576である。格差は縮小傾向にはあるものの、2015年時点でも男性の年収は女性の2.63倍に達している。
このように男性と女性の間の格差に注目すれば、格差社会という言葉が使われるようになるはるか以前から、日本は紛れもない格差社会だった。
すでに何人かの論者が指摘していることだが、2000年代に入ってから格差拡大が注目されるようになったのは、男性の間の格差が拡大し、とくに学校を出たあとに正規雇用の職を得ることができず非正規雇用のフリーターとなり、貧困に陥る若い男性が増加したことによる部分が大きい。
M字型カーブのからくり
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