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「この国に銃は必要ない」ニュージーランドで銃の自主返納広がる

ニューズウィーク日本版 2019年3月19日 16時40分

<50人もの死者を出した銃乱射の惨劇を目の当たりにして、事件翌日から銃を警察に返納して廃棄してもらいたい所有者が殺到>

ニュージーランドのクライストチャーチで3月15日、2つのモスクを狙った銃乱射事件が発生した。50人が死亡し、数十人が負傷した銃乱射事件は、ニュージーランドでは史上最悪。地元警察には、事件翌日から自分の半自動小銃を廃棄してほしいという依頼が相次いでいる。半自動小銃は、今回の大量虐殺で犯人が使ったとされる武器だ。

事件発生を受けて、ニュージーランドでは銃を所有する多くの人が、持っている武器を当局に引き渡し、二度と同じ悲劇を繰り返さないようにしようとソーシャルメディアを通じて呼びかけている。

農業を営む銃所有者、ジョン・ハートはツイッターにこう書き込んだ。「今日にいたるまで、私は半自動小銃を所有するニュージーランド人だった。農場では便利なツールだったからだ。しかし、自分にとっての便利さよりも、誤った使い方をされるリスクのほうが重要だ」

「私たちの国では、こんなものは必要ない」とハートは付け足した。「こんなことは絶対に起きてはならない。#NeverAgain(二度と繰り返すな)」

ハートは、自身の半自動小銃を「迷うことなく」警察に返納したと述べた。銃は廃棄されると言われたという。

ハートは、半自動小銃は農場で害獣駆除のために使っていたが、駆除方法はほかにもあり、こんな恐ろしい武器を使う必要はないと述べている。

「(銃が)なくても大したことではない。銃器を自分で所有しながら、銃を禁止せよと言うのは道義に反する」とハートは言う。「こうしたものが誤った人の手に渡れば凶器になりうることがわかった以上、それと引き換えに味わう不便さなど、ささいなことだ」

別のツイートで、ハートは自分に寄せられた「前向きな反応に圧倒された」と述べた。否定的な反応はごくわずかだったという。

ツイッターでは、「Fey Hag」というユーザー名のニュージーランド人も、銃乱射事件を受けて家族の銃をすべて返納したとツイートした。「夫が死んだとき、彼が持っていた複数の銃は、ライセンスを持つ家族が相続した。私の両親は狩猟の名人だったし、私自身も9歳のころから銃を使ってきた」



「私は今日、それらの銃を警察に返して、廃棄してほしいと頼んだ」と彼女はツイートしている。

また「Blackstone」というユーザーは、銃の所有を放棄するために警察に提出する書類の画像をシェアし、31年間にわたって銃を所有してきたが、銃を引き渡すことは「これまでで最も簡単な決断のひとつだった」と述べた。

「金曜午後に事件のことを聞いてから、これはちゃんと考えなければ、と思った」とBlackstoneはツイートしている。「月曜朝に出した答えが返納だ。これまでで最も簡単な決断のひとつだった」

ニュージーランドでは、1990年にも精神的な問題を抱えた男が13名を射殺する事件が発生し、その2年後に銃規制法が厳格化されている。ジャシンダ・アーダーン首相は今回のテロ事件発生後、すぐにも新たな銃規制法を導入すると明言した。

アーダーンは今回の銃乱射事件について「恐ろしいテロ行為」だとし、10日以内に銃規制の改革を発表すると述べた。

(翻訳:ガリレオ)



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シャンダル・ダ・シルバ

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