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生誕65周年、ゴジラの顔はこんなに変わってきた(写真15点)

ニューズウィーク日本版 2019年6月21日 16時45分

<現在、ハリウッド版ゴジラの最新作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』が公開されているゴジラだが、1954年に誕生して以来、ゴジラは常にそのスタイルを変化させ続けてきた。時代により移り変わる、その面構えの秘密とは?>

1期:恐怖の怪獣から対決の時代、そしてファミリー路線へ。

最初の着ぐるみは粘土状のゴムを窯で焼いて制作し、口も可動しないものだったが、"勢い"というものは時に奇跡を起こす。製作期間がタイトだった『ゴジラ』は高い撮影技術も相まって、生物を凌駕するが、きわめて生物的な「怪獣」を世界で初めて映像化した。

『ゴジラの逆襲』。上顎の歯が外に向かって反っており、歯並びも悪い。全体に細身で、野獣という印象が強い。 © 1955 TOHO CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

『キングコング対ゴジラ』。7年ぶりのゴジラの面構えは、トカゲ的。映画の性格からか、「暴れん坊」の雰囲気だ。 © 1962 TOHO CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

『ゴジラの逆襲』で再び制作された着ぐるみはラテックス製で口も可動、アンギラスを倒すさまは圧巻。『キングコング対ゴジラ』のゴジラは下半身が太いがこれはキングコングのスタイルと対照的にするための処置。

『モスラ対ゴジラ』。対決路線に対応し、「悪役」の立ち位置。前作よりの三白眼に磨きがかかり、スゴ味がある。 © 1964 TOHO CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

『地球最大の決戦』。初期の作品は手踊り人形、ギニョールの出番が多い。意外にこういった人形が、表情豊かだ。 © 1964 TOHO CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

『モスラ対ゴジラ』でゴジラの顔を統一しようということになり、頭部の石膏型がつくられ、以降着ぐるみが制作された。『怪獣大戦争』『ゴジラの息子』『怪獣総進撃』では同じ石膏型を使用。だがその顔つきは制作時の事情で変わっており、60年代後半のゴジラはファミリー映画の担い手へと立ち位置を変えた。

『怪獣大戦争』。顔がゴツゴツした印象になり、瞳中央に黄色の点がつけられたため、目線がはっきりしている。 © 1965 TOHO CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

『ゴジラの息子』。ミニラとの対比で大きくつくられており、頭部が盛り上がる。柔和なイメージとなる。 © 1967 TOHO CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

『怪獣総進撃』。怪獣王、ヒーローとしての属性が付加され、額も急勾配にされて精悍な表情のゴジラになった。 © 1968 TOHO CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED.



2期:子ども映画の主役として、スマートに。

子ども向けの短編作品数本を同時上映する興行形態となった70年代前半、『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』『ゴジラ対へドラ』『ゴジラ対ガイガン』の3作品で使用されたゴジラは総進撃ゴジラで、そのスマートでヒーロー然とした顔つきは子どもがテレビ発のヒーローに沸く時代のゴジラにはふさわしかったのかもしれない。

『ゴジラ対メガロ』。子どものヒーローだった時代。可愛らしいほど、ぱっちりした目が特徴だ。 © 1973 TOHO CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

『メカゴジラの逆襲』。ゴジラが劣化したため、頭部を改修。結果、ストーリーに似合う怖い表情に。 © 1975 TOHO CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

73年公開の『ゴジラ対メガロ』にてゴジラは新造形されたが、その着ぐるみは頭部がやや大きめで目が大きく、口横のラインが愛嬌を感じさせる「可愛い」ものであった。このゴジラの変貌の理由は、頭部の石膏型が破損して使用できなかったことと造形チーフが替わったためなのだが、ゴジラを取り巻くムードも影響したのかもしれない。

3期:再び、銀幕のスターとして復活。

『ゴジラ』が終了して9年、復活ムードが世の中に十分に熟成された時、一般映画として『ゴジラ』は世に問われた。再生されたゴジラは恐怖の対象で、そのフォルムも初代ゴジラを現代的にリファインする作業の結果として生まれたものだ。そして映画に出現したゴジラは十分に重量感があり、人類の脅威にふさわしい怪獣となっていた。

『ゴジラ』。再び怖いゴジラに。60年代のゴジラのイメージをミックスしたかのような頭部となった。 © 1984 TOHO CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

『ゴジラvsビオランテ』。頭部が小さくなり瞳は大きくされ、白目部分が減る。歯並びも2列となる。 © 1989 TOHO CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

ようやく復活したゴジラ映画を展開するにあたり、より生物感あふれるスタイルが検討され、『ゴジラvsビオランテ』にてそのゴジラはデビューした。背びれのバランスも上部に重心を置く力強いもので、以降小さな変更はあったものの、『ゴジラvsデストロイア』までのゴジラはこれを基本にして着ぐるみが制作されている。

4期:21世紀型ヒーローの模索、さまようゴジラ

3年間の休止を経て再び復活したゴジラは、スタイルを一新させていた。前傾姿勢で燃え上がる炎をモチーフとした巨大で鋭角的な背びれ、体色もそれまでの黒から濃緑色。『ゴジラ2000』『ゴジラ×メガギラス』のゴジラはまさに21世紀型といえよう。『ゴジラ×メカゴジラ』などのゴジラも同デザインだが、直立姿勢で色調が変わった。

『ゴジラ2000』。キンゴジのような深く裂けた口と長い数本の牙が、猛々しさを表現する。 © 1999 TOHO CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

『大怪獣総攻撃』。徹底した悪役であるため、感情移入を拒むべく白目のみとなっている。 © 2001 TOHO CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

2001年の『大怪獣総攻撃』は、監督の金子修介の希望で昭和スタイルへと先祖返りし、対決怪獣を極めて小さくし、2mを超えるゴジラの着ぐるみにした。ゴジラの属性は太平洋戦争の「無念」「怨念」で、初代と相通じる部分も多い。2004年の『ゴジラ FINAL WARS』もデザインは昭和スタイル、アクション向きの造形にされている。

『ゴジラ FINAL WARS』。細長い印象の顔つき。素早い動きで怪獣を次々と瞬殺。 © 2004 TOHO CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

<Pen+(ペン・プラス)『完全保存版 ゴジラ、再び。』掲載>

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Pen+『完全保存版 ゴジラ、再び。』(CCCメディアハウス刊)1954年11月3日、日本が世界に誇る唯一無二のキャラクター、ゴジラが誕生した。東京湾から上陸したゴジラが銀座の街を破壊する圧倒的迫力に、観客は心を奪われた。その後、これまでに30作以上のゴジラ映画が製作され、シリーズ累計動員数も、日本だけで1億人を突破。2016年の『シン・ゴジラ』の大ヒットも、記憶に新しい。そして、ゴジラ生誕65周年となる今年、ハリウッド版ゴジラの最新作であり超大作、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』として、銀幕に再びゴジラが帰ってくる。ゴジラ、ラドン、モスラ、そしてキングギドラ――怪獣たちの壮絶なバトルに息をのむ。マイケル・ドハティ監督が、ゴジラ愛全開でつくった最新作紹介はもちろんのこと、誕生秘話から全作品解説、ライバル怪獣まで、ゴジラのすべてがわかる完全保存版。







『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』
2019年5月31日(金)より全国東宝系にて公開中

出演:カイル・チャンドラー、ヴェラ・ファーミガ、ミリー・ボビー・ブラウン、サリー・ホーキンス、渡辺謙、チャン・ツィイー他
監督:マイケル・ドハティ
脚本:マイケル・ドハティ、ザック・シールズ



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