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米中首脳会談、どこまでも平行線の両国に妥協の余地はあるか

ニューズウィーク日本版 2019年6月28日 16時45分

<大阪での米中首脳会談を前に、中国国防相は貿易、台湾、南シナ海などの争点ついて従来の主張を繰り返した。習近平は何かを譲るのか。そしてトランプは>

世界が注目する大阪での米中首脳会談を2日後に控えた6月27日、アメリカは現代に合った中国との付き合い方を取り入れるべきで、そうでなければ時代に取り残されるだろう――中国軍がこう警告した。

中国国防省の任国強報道官は記者会見で、米国防総省が6月1日に発表した「インド太平洋戦略報告」を強く批判した。これはアジアとアフリカをつないだ地域全体が連携して中国の一帯一路に対抗するもので、中国について、「軍の近代化や影響力行使、略奪的な経済手段をテコに、周辺地域を自国に都合よく再編しようとしている」と警戒している。これに対し任は「中国に関するネガティブな内容に断固異議を唱える」と述べた。

「どんな戦略も時代に逆らうべきではない」と彼は主張した。「世界の流れは強大で圧倒的だ。それに従う者は繁栄し、抵抗する者は滅びる。平和、発展とウィン・ウィンの協力が今のトレンドだ。それに反する閉鎖的で排他的な戦略は、失敗する運命にある」

また「どんな戦略も、世界中の人々の幸せを損なったり、対立を強調したりするものであってはならない」と主張。国家間の対話を増やし、一方的な行動は控えるべきだと呼びかけた。

「まだ冷戦時代の考え方の人がいる」

一方アメリカは、中国の経済的・政治的・軍事的な台頭に懸念を募らせ、中国の不公正な貿易慣行を非難する。途上国のインフラ建設などを中国が請け負って、最終的には中国のものにしてしまう「債務のワナ」や為替操作、知的財産侵害などのやり方を、アメリカは長く憂慮してきた。中国が南シナ海の大半について領有権を主張していることや、台湾統一へ圧力を強めていることにも反発を強めている。

だが任は会見で「アメリカにはまだ、冷戦時代の考え方をしている人がいる」と指摘した。そうした人々は「米中間の戦略的な競合関係を大げさに喧伝し、中台間の対立を煽る。我々はそれに強く反対する」と語った。彼はまた、中国には「大国として覇権を握ろうという意図はない」と主張。ただし台湾については「断固として領土と主権を守る」と述べた。

6月18日には、中国の空母「遼寧」が南シナ海で米海軍の哨戒機ポセイドンP-8Aの追跡を受ける事件が起きた。任は27日の会見で、この事態に中国軍は「警戒態勢を維持していた」と語り、「米軍の挑発的な行動には強く反対する」と語った。



アメリカは、中台軍が対峙する台湾海峡でも艦船の航行を続けており、「国際法で許されているあらゆる場所の飛行、航行と作戦行動を実行する」とする。

アメリカは、豊富なエネルギー資源をめぐって各国が領有権を争う南シナ海において、中国が長期的なプレゼンスを確立するために複数の島を軍事拠点化しているとも非難している。CNNは6月20日、イスラエルの情報企業イメージサットから提供を受けた画像を元に、中国が南シナ海の西沙諸島にある永興島に殲10(J10)とみられる複数の戦闘機を配備していると報じた。

27日の会見でこの報道について問われた任は、「西沙諸島に領有権問題はない」とだけコメントした。「主権国家が自国の領土に設備を配備し、訓練を実施するのは正当な権利だ。中国の行動は合法、妥当で公正なものだ」

米中間の軍事関係を改善する試みがほとんど成果をあげていないなか、最近では貿易問題が悪化の一途をたどっており、注目が集まっている。

「国際社会の声に耳を傾けて」

米政府は、中国が一帯一路イニシアチブによって世界各地のインフラに投資を行い、経済的影響力を拡大するのを阻止しようとしている。

ドナルド・トランプ米大統領が2018年5月、中国からの輸入品に高い関税を課して以降、両国は互いの輸入品に対して巨額の追加関税を課す報復合戦を繰り広げている。トランプは6月26日にFOXニュースの番組で、日本・大阪でのG20サミット(主要20カ国・地域首脳会議)で中国の習近平国家主席との会談が不調に終われば、今後さらに3250億ドル相当の中国製品に最大10~25%の追加関税を課す用意があると語った。

中国外務省の耿爽報道官は翌27日、「中国人は、追加関税の脅しには屈しない」と記者団を通じて言い返した。

「我々はまやかしの議論は信じないし、圧力を恐れてもいない。そのような小細工は我々には通用しない。アメリカに対して改めて言いたいのは、貿易戦争を起こして関税を引き上げることは、他国だけでなく自分たちをも苦しめる行為で、いかなる問題の解決にもならない、ということだ」。耿はこう語ると、アメリカに対して6月26日、アメリカに「二国間主義や保護主義やいじめに反対する国際社会の声に耳を傾けて欲しい」と、訴えた。

(翻訳:森美歩)


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トム・オコナー

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