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英国で悪徳大家のブラックリスト公開へ......家賃の代わりに性的な見返り要求など

ニューズウィーク日本版 2019年7月26日 16時30分

<イギリスで詐欺や暴力行為などを行なった「悪徳大家」をまとめたデータベースが、一般公開されることになりそうだ......>

賃貸契約締結前にチェック可能に

英国で、水準を満たさない賃貸物件を貸しに出していたり、詐欺や暴力行為などを行なった「悪徳大家」をまとめたデータベースが、一般公開されることになりそうだ。これによりテナントは、賃貸契約を結ぶ前に、自分の大家となり得る人が悪徳大家としてブラックリストに載っていないかをチェックできるようになる。公開のスケジュール詳細は未定だ。

この「悪徳大家データベース」は、2016年に英国で新しい法律「住宅・計画法」が制定された際に構築が決まり、2018年4月の同法の施行と同時に運用が始まっていた......はずなのだが、物件のある地域の関連当局のみが閲覧できる状態になっているという。

この運用法に疑問を呈し、一般公開を求める声が上がっていたが、これに応えて今月中旬、当時のジェームズ・ブロークンシャー住宅・コミュニティ・地方自治相は、「テナントにとって大切な情報を公開しなくてはいけない」と話し、一般の人が閲覧できる状態にしたい考えを明らかにした。

同相は、データベース公開に向けて専門家と協議する期間を12週間設けるとしていた。英国政府はボリス・ジョンソン氏の首相就任に伴い、24日に内閣も刷新されており、悪徳大家のデータベース公開はブロークンシャー氏の後任となるロバート・ジェンリック氏に任されることになる。

住宅法違反の他、性犯罪、薬物で有罪でも登録へ

英国では住宅難が続いており、英統計局が2018年に発表したデータによると、2017年時点で賃貸に出されていた民間の物件数は450万戸で、2007年から10年で170万戸増加した。そのため安全や健康の基準を満たさない住宅も賃貸市場に出回っており、2017年に英インディペンデント紙が行なった分析では、民間の賃貸住宅の29%が、健康基準や安全基準を満たしていなかった。つまり、暖房設備がなかったり(英国はセントラルヒーティングの住宅が多い)、水道が通っていない、火災報知器がない、などだ。

また2018年には、本サイトでも報じたように、家賃の代わりに性的な見返りを求める大家が社会問題となっていた。



そのため、悪徳大家のデータベースは家探しをする人にとって心強い味方となりそうだが、一般公開されても、一体どのくらいの人数が登録されているかは不透明だ。

英国政府のウェブサイトによると、データベースに登録される対象となるのは大家や賃貸不動産仲介業者で、違法な立ち退きをテナントに強要するといった住宅法の違反の他、性暴力や薬物乱用、ハラスメント、ストーカー行為、暴力、詐欺といった犯罪行為で有罪判決を受けた人物となる。

英ガーディアン紙は、データベースには大家や仲介業者が個人名で登録され、テナント候補者が閲覧できるようになるとしている。英国ではこうした悪徳大家は1万500人ほどいると推定されているが、情報公開法に基づきガーディアンが今年公開を求めた運用開始済みの同データベースの情報には、わずか4人しか登録されていなかったという。同紙は政府の見解として、現在起訴中の案件が結審すれば、まずは600人ほどの悪徳大家が登録される見込みだとしている。

なお、ロンドンではすでに「悪徳大家チェッカー」がオンラインで公開されている。これはロンドン市が独自にデータを収集してデータベース化したもので、住宅に関連した法律で罰金や有罪判決を受けた大家と賃貸不動産仲介業者が登録されている。大家や業者の氏名か、対象の賃貸物件の住所から検索することができる。



Banned but still in business: Rogue landlords exploiting loopholes


松丸さとみ

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