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パックン流投資術「20年待てば、上昇確率100%」何もしない投資が一番の理由

ニューズウィーク日本版 2023年12月26日 18時35分

<朝から晩までマーケットを見張り、経済動向や会社業績をチェックして回る...そんなことしなくてOK。タレントでベテラン投資家でもあるパックンが教える「寝て果報を待つだけ」の儲け術>

社長にはなりたくない! ある調査によると、一般社員の9割がそう思っている。

分かる分かる。

今の時代、社長の主な仕事は謝罪会見だし。嫌だよね。社員のセクハラ、パワハラ、モラハラなどでいつ謝らなきゃいけないかと毎日ハラハラだろう。

それは冗談でも、社長の日常的な作業も特に興味はそそられない。

会議、人事、決算報告なんか気にしないで、もっと好きな分野(お笑いとか)でもっと楽しい作業(熱湯風呂に入らされたり、ワサビおにぎりを食わされたり)をやりたい! 

そう思う若者の気分、分かる分かる。

でも、社長並みの経済的な安心は欲しいでしょ? 

そう考えている方にご提案。社長でなく「オーナー」になればいい。

もちろん、投資の話だ。だって、そういう特集だよね?

まず、資金の確保からスタートだ! 

いつも収入を全額使ってしまうのなら、投資に回す余剰金は生まれない。今すぐ生活費の予算を立て節約を始めよう。絶対に必要な経費(ニューズウィークの定期購読など)を守りながら余計な出費を削るのだ。

そこで役に立つのは「積み立て」。

投資資金が自動的に給料から天引きされるから、必然的に残った収入の中でやりくりすることになる。だから、特に衝動買いをするような誘惑に弱い方にお勧めだ。そんな方は、節約を始める前にまず僕の本の衝動買いもお勧めしたいけどね。

資金ができたら、次は投資先を決める。不動産や債券もあるが、歴史的な利益率で考えると株式がより魅力的。

しかし、優良株でも買う前にしっかり調べるべきだ。株主総会に通って、経営陣の能力を測って、決算報告書を熟読することが大事。

へ? 会議、人事、報告書? 結局社長の仕事と変わらないじゃん!って? 

そのとおりだ。だから僕は、個別株の投資をあまりお勧めしない。

もっとお勧めしないのが、相場の変動を先読みしようとする短期の株式売買。

もちろん、上がりそうな株を見つけて買い、上がったところで売ることができたら儲かるよ。しかも、ちょっと不思議なことに、下がりそうな株を見つけて「空売り」すれば、これも儲かる。

先見の明さえあれば、ぼろ儲けできるよ!

しかし変動を読み間違ったらぼろ負けもする。

空売りは特に痛みが「空」じゃない。「地」の「獄」だ。

個別株の短期投資に挑戦するなら、とにかく情報収集と分析が本当に大事。経済記事を毎日読んで、朝から晩までマーケットを見張ろう。大学院に戻ってMBAを取得しよう。最先端のAI技術を活用しよう。大手企業の幹部に直接会ってマティーニでも飲みながら内部事情を聞き込もう。

つまり株に人生を懸けよう!

いやいや、無理無理......って? そのとおりだ。

だが、先読みで勝負するとき、対戦相手はそういうことをやっているはずだ。

アメリカの株式取引の約8割は、機関投資家によるもの。日本もおおよそ、そのくらいの割合だ。株を取引するとき、あなたと逆の読みをしている人は「霊長類最強」級のトレーダーかも。

芸人の僕は短期の株売買でプロに勝てると思わない(ショートコントの勝負なら頑張るけど)。

そもそも社長的な作業もリスクも嫌だし、株価で一喜一憂したくない。オチているか気にするのはネタだけでいい。

しかし、経済的な安心を得るため、オーナーにはなりたい。そんな人へ勧めたいのが「インデックスファンド」。

日本の日経平均やアメリカのS&P500種などの株価指数と同じ株式構成の投資信託のことだ。

投資の正解は「待機&待機」

例えるなら、競馬で1頭の単勝に賭けるのが個別株の短期投資なら、インデックスファンドは全ての出走馬の馬券を持つようなものだ。

もちろん、そんな作戦は競馬じゃ成立しないよ。だが株式ならできる。競馬と株式は違う! だったら競馬に例えるなって? それはそうだが、この違いも理解していただきたい。

負けた人のお金で儲かるギャンブルと違い、株式市場は企業の収益や成長で儲かる。

「勝ち」ならぬ「価値」の世界だ。

企業同士の競争はもちろんあるし、失敗して消える会社もある。

だが、その傍らで勢いのある新しい「馬」が登場するし、こういうファンドは価値が上がる企業への投資額が自動的に増える仕組みになっている。その上、市場は拡大するので複数の「勝ち馬」がいて、先読みしなくても自然にそれらに乗れる仕組みだ。

競馬場で全ての馬券を買うなんてばかだが、この「全馬券投資法」はとても堅実だ。

では、ファンドを買ってからどうする? 

正解は「待機」。

これも大事なリスク対策だ。上記のとおり、マーケット全体は強いけど、もちろん相場が下がることもある。だが、待てば待つほど上がる確率が高い。

例えば、アメリカの市場全体のファンドを適当に、タイミングを計らずに買って一定の期間を置いてから売ることにしよう。

歴史的に見ると、1日しか待たなければ買値より高く売れる確率は約52%しかない。コイントス並みのオッズだ。ただ1年間待てば上がる確率が約70%、10年だと約90%に上がる。20年待つと、なんと上昇する確率は100%なのだ。

過去150年を振り返ると、どのタイミングで買っても、勝った後に大恐慌やリーマン・ショック、疫病などが起きても、ずっとインフレが続いても、何があっても20年待てば実質プラスになるわけ。

このありがたさ、中年男性なら分かるよ。

ほかに20年たつと確実に上がるものは血糖値とBMIぐらいしかないからね。

待機の次は......さらに待機! 

時間があなたの強い味方だ。歴史的に米株市場は平均で年率7~8%上昇している。利益を使わずに元本にプラスして再投資すればいわゆる「複利効果」で10年おきに投資額が倍になるはず。

つまり10年で2倍、20年で4倍......50年で32倍に膨れ上がる。

今年12月に節約して1万円投資すれば50年後の自分に32万円のクリスマスプレゼントが贈れる。

これを毎月やれば、50年後のお正月やバレンタイン、ホワイトデー、エイプリルフールにも32万円ずついただける。

やらないほうがフールじゃない?

これだけだ。難しく考えず、節約・投資・待機・待機・いただき!の方程式で十分。少なくとも僕はそう信じている。

自己責任でやってもらうしかないが、僕も責任を取ります。万が一見込みが外れたら、50年後に謝りますよ。

謝罪会見で。結局社長の仕事か~い!ってね。

パックン(パトリック・ハーラン)
PATRICK HARLAN
1970年生まれ、コロラド州出身。ハーバード大学を卒業後に来日。1997年、吉田眞とお笑いコンビ「パックンマックン」を結成し人気を博す。近著の『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)ほか著書多数。

パックン(コラムニスト、タレント)

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