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キリスト教徒激減のドイツ......お祈りは「自販機」で?

ニューズウィーク日本版 2024年3月12日 18時15分

<2023年、ドイツではカトリック、プロテスタントのいずれかのキリスト教宗派に属する人が人口の半数を切った......>

辛うじてまだキリスト教国ではあるものの......

教会離脱は特にカトリックに顕著で、2022年には52万人以上と記録的な数の信者が離脱した。2021年には約36万人が去っている。信者の減少は以前から見られたが、近年、異様な勢いで増えていた。

これにより、ドイツのカトリック教徒は人口の4分の1未満となった。キリスト教には正教など他の宗派もあるため、一応まだ人口の半数以上がキリスト教徒であるとはいえるが、それでもせいぜい60%程度だ。1990年には二大宗派が72%以上を占めていたのが、2002年には61%、2022年には45%となった。(NDR)
  

移民が増えたからというわけではないようだ。ドイツには「教会税」なるものが存在し、州にもよるがそれは所得税の8〜9%を占めるなど、決して安くはない。さらに、世界各地で続いたカトリック教会のスキャンダルなども追い討ちをかけたようだ。節税のため、抗議の意思表示、さらにライフスタイルの変化なども原因だろう。

信者が減れば、教会の財政も苦しくなる。2005年以来、ドイツ全土で650のカトリック教会が使われなくなり、19年から23年にかけて年平均28の教会が消失した。比較的新しい教会は解体され、老人ホームや娯楽施設などに再利用されることもあるが、歴史的建造物に指定されている教会ともなると、解体は困難だ。

お祈りも素早く自販機で

一方、ベルリンのプロテスタント教会に設置された一台の機械が話題になっている。一見、日本にもよくある証明写真機のようだが、実は素早くお祈りを済ませられるよう、証明写真機を告解室に見立てた、いわば「お祈り自販機」だ。

その名もPrayomatプレヨマート。英語のpray「祈る」とドイツ語の Automat「自販機」を掛け合わせたものだ。証明写真機を改造したものだが、カーテンを閉めればある程度のプライバシーが保てる。キリスト教、イスラム教、ユダヤ教、仏教、ヒンズー教のほか多数の宗教を含み、65言語で約300の祈りが聞けるという。機械が生成した祈りではなく、実際の礼拝場や家庭などあらゆる場所で録音されたものだという。

A prayer vending machine? It's a THING in Berlin! pic.twitter.com/DYwEmu1TBG— DW Culture (@dw_culture) November 30, 2023

どこまで機械に任せるべきか

Prayomat自体は何も新しいものではない。ベルリン在住のアーチスト、オリバー・スタームによる2008年のプロジェクトで、当初はドイツ語の「祈り」Gebet と掛け合わせてGebetomatと呼ばれていた。Prayomatは海外向けの名称で、イギリスのマンチェスターに設置されたが、ほとんど話題にならなかったようだ。

開発に9年をかけたというこの機械は、これまでにもベルリン各地や他州の大学などにポップアップ的に設置されてきた。スターム自身は空港やショッピングセンターなど人が集まる騒がしい場所に設置することに意義を感じているようだ。料金は無料だったり、50セントだったりと、その時々によって違う。

宗教を軽んじていると言う向きもあるかもしれない。だが、宗教に対する考え方が変化しつつあり、また作者自身の「今日自動化は実際どこまで推進できるのか。何を機械に任せるべきなのか」と言う問いは、AIが台頭し先の見えない今だからこそ重要な問いかけかもしれない。

A prayer vending machine? It's a THING in Berlin! pic.twitter.com/DYwEmu1TBG— DW Culture (@dw_culture) November 30, 2023



モーゲンスタン陽子

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