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ダイアナ追悼イベントに、自身のプロジェクトをぶつけたメーガン夫人...英王子兄弟の「対立」は修復不能

ニューズウィーク日本版 2024年3月15日 17時5分

<ウィリアム皇太子がダイアナ・レガシー・アワードでスピーチする直前に、メーガン妃は豪華ライフスタイルブランドをローンチ>

[ロンドン発]英王室から離脱したヘンリー公爵(王位継承順位5位)とメーガン夫人は3月14日、デジタル世界で変革を起こしている人を称える全米黒人地位向上協会(NAACP)アーチェルウェル財団のデジタル公民権賞2024年受賞者を発表した。

受賞者は米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボを拠点に人工知能(AI)の人種・性差別的偏見を克服する研究に取り組むジョイ・ブオラムウィニ博士。顔認証ソフトで認識されなかった同博士は白マスクを着けると登録されたことをきっかけに、「アルゴリズム正義同盟」を立ち上げた。

メーガン夫人とヘンリー公爵は国際女性デーの3月8日、米テキサス州オースティンで開幕したテクノロジーと音楽・映画の祭典「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」でブオラムウィニ博士に事前に受賞を伝える動画をX(旧ツイッター)に投稿した。

ブオラムウィニ博士は「AIの急速な普及に伴い、ゲートキーパーとして機能するアルゴリズムが社会から疎外されたコミュニティーの公民権を阻害しないようにすることは極めて重要だ。受賞はAIが社会に与える影響についての認識を高める活動を継続する助けとなる」と話した。

バーチャルでも同席を拒む兄弟

このニュースが底意地の悪い英大衆紙デーリー・メール(3月14日付)にかかると「タイミングは偶然ではない。メーガン、ダイアナ元皇太子妃追悼イベントでウィリアム皇太子がスピーチする数分前にジャムやキッチン用品を売る豪華ライフスタイルブランドを立ち上げる」となる。

「皇太子は14日夜、ロンドンの科学博物館で開かれたダイアナ・レガシー・アワードに弟のヘンリー公爵と一緒に参加。しかし米カリフォルニア州を拠点にする公爵夫妻は、皇太子がイベントに出席している間にデジタル公民権賞を発表する衝撃的な展開を見せた」

ヘンリー公爵はウィリアム皇太子がイベント会場を去った後、ビデオリンクで参加した。バーチャルでも2人は一緒にいるのが我慢ならない。ヘンリー公爵とメーガン妃の結婚、王室離脱、王室の人種的偏見告発、回想録の出版で兄弟の関係は完全に破綻した。

ライフスタイルブランド「アメリカン・リビエラ・オーチャード」はメーガン夫人が出演する動画配信大手ネットフリックスの料理番組が始まるのに合わせてローンチされる。皇太子のスピーチのほんの数分前、同ブランドの立ち上げがインスタグラムの動画で公開された。

過去の社会階層へのノスタルジー

英王室の伝記作家イングリッド・スワード氏は英大衆紙デーリー・ミラー(3月14日付)に「ダイアナ妃はビデオリンク越しで短時間でも2人が一緒にいることを望んだと思う。ダイアナ妃は兄弟の確執がここまで悪化するのを防ぐために全精力を注いでいただろう」と話している。

わが道を行くメーガン夫人に比べ、1月の腹部手術から公務を離れているキャサリン皇太子妃は子ども3人と一緒に写った家族写真の加工で6つの通信社から一斉に配信を撤回される騒動を引き起こした。自身の健康状態を巡る心無い陰謀論にさらに傷付けられた。

王室に反旗を翻したヘンリー公爵夫妻を散々叩いてきたデーリー・メール紙は「多くの人は皇太子との結婚以来、キャサリン妃は素晴らしい仕事をしてきたので、手術から回復するのに必要なだけの時間をとり、非難する人たちを無視すべきだと言っている」と読者の手紙を紹介した。

しかしリベラルな米紙ニューヨーク・タイムズのゼイネップ・トゥフェクチ氏は3月13日付コラムで「キャサリン妃はメーガン夫人に与えられてきた大打撃に比べ、これまで極端に恭しく扱われてきた。過去の社会階層へのノスタルジーを演出するため2人の関係は脚色された」と指摘する。

メーガン夫人は危険でくだらない新参者

「現代英国で王族は娯楽と気晴らしの役割を担ってきた。キャサリン妃は美しく、気高く、白人の『英国のバラ』。これに対して義理の妹メーガンは危険でくだらない新参者。ダブルスタンダードがまかり通ってきた」とトゥフェクチ氏は厳しい見方を示す。

王室では君主制の維持が最優先事項となり、自分や個人の感情を殺してでも伝統やプロトコルに従わなければならない。その定めがさまざまな悲劇を生み出してきた。一方、自分を生きる軸に据えるメーガン夫人には王族の一員として生きることは最初から無理だった。

キャサリン妃には良き妻、良き母としての生き方しか認められていない。それが多くの保守的な英国人女性を慰める。これに対して自分のアイデアで妻として母としてキャリアウーマンとしてたくましく生きる非白人のメーガン夫人は保守的な英国人女性には目障りな存在に映る。

家族写真の加工で落ち込むキャサリン妃と、叩かれて強くなるメーガン夫人。どちらの生き方を選ぶかはそれぞれの女性の自由だが、欧州連合(EU)離脱で取り返しがつかない大失敗をしてもまだ自覚のない英国の傲慢さを見ると、答えは自ずとわかろうというものだ。


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