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なぜ女性はクラウドファンディングの資金調達に成功するのか...「男性のような勇気」は必要がない理由

ニューズウィーク日本版 2024年4月24日 9時20分

レシュマ・サウジャニ (「ガールズ・フー・コード」創設者兼CEO) for WOMAN
<男性と同等に働く女性を受け入れる寛大さは、残念ながらない。しかし、次世代がこの悪しき状況を変えることはできる。そのために今、私たちがやるべきこととは?>

容姿、言葉づかい、服装、仕事と家庭の両立...etc. 完璧を求められるのは、いつも女性なのはなぜなのか。しかし、私たちにはもっと清々しい生き方がある......。

世界中の女性たちの社会進出をプログラミングで支援するNPO「ガールズ・フー・コード」創設者兼CEOによる、世界的ベストセラー『完璧じゃなくていい、勇気ある女になろう』(海と月社)より「4章 勇気があるとは、どういうことか?」を一部抜粋。

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自分らしい勇気を見せる

女性が何かしら大胆なことや勇気のあることをすると、それを世間では「男まさり」と表現し、素直にほめないことが多い。

勇気と権力の座にあるのは男性だ、と言いたいのだろう。まあ、わたしたち女性は男性のような勇気をもつ必要はないし、男性のような成功を手にする必要もない。「男性ばりに」というのは古臭い考え。いいかげん飽きた。

男性のようにしたからって、どうなるわけでもない。仕事で男性と同じように出世したとしても、給料は低いまま。どっちを選んでもうまくいかないというジレンマは、耳にタコができるほど聞いてきた。

女性は愛情たっぷりで、思いやりがあって、優しくなければ好かれないのに、そういう人はリーダーシップを発揮する地位からは締め出される。かといって、自信たっぷりに、歯にきぬ着せずに発言し、勇ましく行動すればボロクソに批判される。

さまざまな研究が示しているように、女性がタフだったり、相手が話しているときに相手の目をじっと見るなどして無言の圧力をかける、典型的な「男らしい」特徴を示したりすると、待っているのは強烈な反感だ。

積極的にふるまう女性を受け入れる寛大さは、残念ながら職場にはない。ただし、「今は」とつけ加えたい。わたしたちが子どもたちの育て方を改め、性差に基づいた行動をやめさせていけば、あとの世代がこの悪しき状況を変えていけるはずだ。

わたしたちの世代はまだ、ジレンマから逃れるのに勇気がいる。とはいえ、わたしたちに必要な勇気は、男性のような勇気ではない。昔ながらのルールや定義にとらわれず、わたしたちのやり方で、自分たちの強みを生かした勇気を示すのだ。

たとえば、女性のほうが感情が豊かだと言われる。すばらしい。それが不都合ではなく強みだということは、多くの調査でも証明されている。

プライスウォーターハウスクーパーとクラウドファンディングセンターの報告によれば、クラウドファンディングにおける資金調達の成功率は、男性よりも女性のほうが32%以上も高い。

女性は売りこみの際、情緒のある言葉や性差別を避ける言葉を使うことが多く、それが、スポーツや戦争にちなんだ使い古された比喩や、典型的で冷たいビジネス用語よりはるかに投資家の心に響くからだという。

また、女性は概して男性よりもリスクを回避する傾向にある。および腰だからと言われるかもしれないけれど、わたしは、聡明で慎重で思慮深いからだと思う。

 

リーマン・ブラザーズがリーマン・シスターズだったら金融危機は回避できた、と考える人が多いのには理由がある。

わたしたち女性は長い間「どうすれば男性が決めたルールに従ってゲームに参加できるか」を必死に考えてきた。

でもそれは、誰かの歩いた道を通って、地図に載っていない場所を探検しようとしているようなもの。他の人のやり方を真似したところで自分らしくなんかできないし、他の人の定義した成功を求めて頑張ったところでたいした成功はできない。

そもそも、他の人の決めたやり方で成功したところでなんになるだろう?

そろそろ、やり方を変えて臨まなければ。「自分らしい勇気」は、世間で言われる成功ではなく、自分が望むことや自分が幸せになれることを基準にする。上院議員やフォーチュン500にランキングされる企業のCEOになるのが、自分の心から望む目標ならそれでいい。

でも、誰にとってもそれが望みなわけじゃない。勇気をもつための「正しい」道がひとつではないように、成功への「正しい」道もひとつではない。

よくご存じのように、職場でも、政界でも、その他いたるところでも、女性に対する偏見がある。そもそも構造に問題がある。

たとえば、アメリカで公職に就いているのはおよそ50万人だが、そのうちの79%を白人男性が占めている。褐色の肌をした女性は立候補すべきでないってこと? 

もちろん違う。現実を直視し、失敗するかもしれないことを踏まえたうえで、それでもやってみる価値はある。

わたしが言いたいのは「目標を高く掲げろ」ではない。「不安や恐れのせいで目標を追い求めるのをやめないで」だ。

挑戦する前に諦めちゃダメ。勇気を出して成功すれば、言うまでもなくハッピー。成功しなかったら? もちろんがっかりするだろうけど、それでもきっと自分を誇りに思うにちがいない。キャロル・ドゥエック(スタンフォード大学心理学部教授)が言っているように「死に物狂いで頑張った」のだから。

残念ながら、男女平等にまつわる状況が大きく変わるには、まだしばらく時間がかかる。喜ばしくない話だけど、見方を変えれば「この先に待ちかまえるさまざまな障害にどう対応し、行動していくかは、わたしたち次第」だということでもある。

 

権限や尊敬や機会を、他者から力ずくで奪いとるのではなく、勇気をもって、自分たちで生みだしていけたらすばらしい。

文化を変えていくには「働きかけつづける」ことが大切だ。現実ばなれした美の基準や、プログラミングの学位をとるのも自分の意見を堂々と言うのも男性の専売特許みたいなことがまかり通る世の中も、変えなくてはいけない。

すぐでなくていい。いつかきっと、もっといい世の中をつくっていくことが、わたしたちにはできる。その日のために、自分らしい勇気を定義し、その勇気を育み、ひとつずつ実践していこう。

レシュマ・サウジャニ(Reshuma Saujani)
9万人を超す参加者を誇るNPO「ガールズ・フー・コード」の創設者兼CEO。テクノロジーの世界におけるジェンダーギャップ解消に努めながら、若い女性たちに自信と勇気をもつことの大切さを教えつづける。2014年にウォール・ストリート・ジャーナル・マガジンの「イノベーター・アワード」受賞。これまで、フォーチュン誌が選ぶ「40歳以下の若手リーダー40人」や、フォーブス誌による「世界を変えた最もパワフルな女性」のひとりにも選出されている。アメリカ議会に立候補した初のインド系アメリカ人としても話題を集めた。著書に『Girls who code 女の子 の未来をひらくプログラミング』(日経BP)など。

 『完璧じゃなくていい、勇気ある女になろう』
  レシュマ・サウジャニ [著] 岩田佳代子[訳]
  海と月社[刊]

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【動画】レシュマ・サウジャニの「Girls Who Code」公式YouTube

 

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