『紀州のドン・ファン』と呼ばれた会社経営者・野崎幸助さん(当時77)が2018年に自宅で死亡していた事件。殺人罪に問われている元妻・須藤早貴被告(28)の裁判員裁判が、9月12日から和歌山地裁で開かれている。初公判の罪状認否で無罪を主張していた須藤被告への被告人質問が、11月8日から始まった。黒のパンツスーツと白のマスク姿で法廷に現れた須藤被告は、野崎さんとの出会いや“結婚生活”について、弁護人からの質問に淡々と答え始めた——。
野崎さんが亡くなったのは2018年5月24日の夜。自宅2階の寝室で意識を失っているのを須藤被告が発見し、119番通報した。野崎さんの死因は急性覚醒剤中毒。解剖の結果、致死濃度を超える覚醒剤成分が血中から検出されている。
検察側は9月に行われた初公判での冒頭陳述で、須藤被告が「莫大な遺産を得るために完全犯罪をたくらんだ」と指摘し、事前に「完全犯罪」と検索していたこと、犯行時間帯に野崎さんの寝室を複数回行き来していたことを挙げた。
そして11月8日、証言台に立った須藤被告。淡々とした口調で、弁護人からの質問に答えた。
「須藤被告は2017年当時、芸能プロダクションにモデルとして登録していたといいます。同年11月、北京にモデルの仕事に行った時、モデル仲間に『お金持ちの男性に興味ある?』と誘われ、野崎さんの知人を紹介された。知人づたいに野崎さんと初めて会った日、自宅に着いた須藤被告は、その後寝室に呼ばれた」(裁判を傍聴したライター)
2階の寝室に呼ばれた須藤被告は帯付きの100万円の札束を手渡され、「結婚してください」とプロポーズを受けたという。冗談だと思った須藤被告が「毎月100万円もらえるなら結婚してもいい」と言うと、野崎さんは「わかりました」と答えたという。
その後の結婚生活について須藤被告が強調したのは、「野崎さんが何度も性的関係をせがんだこと」だった。
「はぁ? と思いました」
「須藤被告は初めて会った時、寝室でバスローブに着替えた野崎さんがオムツを履いているのを見て、〈少し引いた〉とし、〈『こんな体で性行為ができるのか、本当かよ』って思いました〉〈階段を登る時に手を貸したら『年寄り扱いしないでください』と言われた〉と供述。弁護人にどう思ったかを問われると、〈はぁ? と思いました。それ以降は手を貸すことはしませんでした〉と、声を荒らげ少し感情を露わにしていた」(同前)
一方、2018年1月、約束した100万円が自分の口座に振り込まれていることを確認した須藤被告は、結婚を決意。そして2月8日に婚姻届を出した。その日自宅にいた須藤被告は、夕食を食べたあと、野崎さんに寝室に呼ばれたという。
「須藤被告は、野崎さんが『初夜なので、私の隣に来てください』と呼び出し、性交渉をせがんだと主張。須藤被告が『約束だよね?』と性交渉をしないことを伝えると、野崎さんは自ら手を動かし始めたといいます。
自分で達することができなかった野崎さんに『手でしてください』と頼まれ、『ゴム手袋でいいですか?』と返すと、『それでいいです』と。キッチンでゴム手袋を着用し、しごいたが、全く機能しなかった。『口でしてくれませんか?』という依頼を須藤被告が断ると、野崎さんは残念そうな、悔しそうな顔をしていたといいます」(同前)
その後も同じようなことがあったというが、うまくいかなかったという。
「須藤被告が『年だから仕方ないよ』というと、野崎さんは『俺をたたせられるのは〇〇だけだ』と、他の愛人の名を挙げたといいます。須藤被告は〈『じゃあ〇〇に頼みなよ』と言いました。私を嫉妬させるつもりだったんでしょう〉とした。野崎さんがせがんだという性交渉について、若者口調で感情を露わにする須藤被告の態度が印象的だった」(同前)
検察側はその後野崎さんが結婚生活に不満を募らせ、2018年3月に須藤被告に離婚届を渡したとしている。今後、検察側からの質問に、須藤被告は何を語るのか——被告人質問はこのあと11月11日、15日に予定されている。
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