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おとめ座の方向で見つかった地球型惑星、大気研究の重要な観測対象となるか

sorae.jp 2021年3月6日 20時48分

系外惑星「グリーゼ486 b」の地表を描いた想像図(Credit: RenderArea)

マックス・プランク天文学研究所のTrifon Trifonov氏、東京大学大学院総合文化研究科附属先進科学研究機構の成田憲保氏らの研究グループは、「おとめ座」の方向およそ26光年先にある赤色矮星「グリーゼ486(Gliese 486)」を周回する太陽系外惑星が見つかったとする研究成果を発表しました。今回見つかった系外惑星は今後の重要な研究対象になり得るとして研究グループから注目されています。

今回発見が報告された系外惑星は「グリーゼ486 b(Gliese 486 b)」と呼ばれています。発表によると、グリーゼ486 bは地球と比べて直径が約1.3倍、質量が約2.8倍で、地球とほぼ同じ密度を持つ岩石惑星とみられています。主星のグリーゼ486は直径と質量がどちらも太陽の3分の1ほどで、表面温度は摂氏約3100度と太陽よりも小さく低温の恒星です。

サイズが地球に似ていることから生命の居住可能性も気になるところですが、主星のグリーゼ486から約250万km離れた軌道を約1日半という短い周期で公転しているグリーゼ486 bは、自転と公転の周期が同期した潮汐固定(潮汐ロック)の状態にあると考えられています。昼側の表面温度は少なくとも摂氏約430度に達すると推定されていて、その表面はおそらく地球よりも金星に似ていると予想されています。

■地球に似た系外惑星の大気を調べる上で重要な観測対象になる可能性

恒星の周囲を公転する系外惑星を直接観測するのはきわめて難しく、これまでに発見された4000個以上の系外惑星の多くは「視線速度法」や「トランジット法」といった手法を用いて間接的に検出されてきました。視線速度法とは、系外惑星の公転にともなって円を描くようにわずかに揺さぶられる主星の動きのうち、地球から見た視線方向の動きを主星の色のわずかな変化をもとに捉え、系外惑星を検出する手法です。

もう一つのトランジット法とは、系外惑星が主星(恒星)の手前を横切る「トランジット(transit)」を起こした際に生じる主星の明るさのわずかな変化をもとに、系外惑星を検出する手法のこと。グリーゼ486 bはトランジット法を利用するアメリカ航空宇宙局(NASA)の系外惑星探査衛星「TESS」が2020年3月から4月にかけて行った観測において、主星であるグリーゼ486の周期的な減光として最初に検出されています。

トランジットを起こす系外惑星の大気は、地球から見て恒星の手前を横切る際に系外惑星の大気を通過してきた恒星の光を分光観測(電磁波の特徴を波長ごとに分けて捉える手法)する「トランジット分光」や、地球から見て恒星の裏側へ回り込む前後に系外惑星の昼側が反射した光を分光観測する「二次食分光」によって調べることができます。

系外惑星の軌道を描いた模式図。恒星の手前を横切るトランジット(Transit)や恒星の裏側に回り込む二次食(Secondary Eclipse)の際に分光観測を行うことで大気を調べることができる(Credit: MPIA graphics department)

研究グループではグリーゼ486 bが薄い大気を持つ可能性があり、大気を詳しく調べることができる地球に似た岩石惑星だと考えています。研究に参加した宇宙生物学センター(スペイン)のJosé Antonio Caballero氏は「温度があと100度高ければ表面が溶岩に覆われて気化した岩石の大気を持っていたでしょうし、あと100度低ければ追跡観測には適さなかったでしょう」と語ります。

研究グループによると、トランジット分光や二次食分光を利用して大気の組成や温度分布を調べる上で、グリーゼ486 bのように公転周期が短く温度が高いことは有利な特徴だといいます。2021年10月に打ち上げられる予定の宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ」では系外惑星のトランジットや二次食を利用した大気の観測が予定されており、研究グループでは太陽系に比較的近いグリーゼ486 bがジェイムズ・ウェッブの重要な観測対象になると期待を寄せています。

 

Image Credit: RenderArea
Source: 東京大学(PDF) / IAC
文/松村武宏

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