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はやぶさ2、帰還カプセルの公開始まる 津田PM「現物の重みを実感して」

sorae.jp 2021年3月14日 11時19分

JAXA(宇宙航空研究開発機構)と相模原市は、「はやぶさ2」の帰還カプセルを初めて公開しました。はやぶさ2は昨年12月6日にオーストラリアのウーメラ砂漠へ小惑星「リュウグウ」のサンプルが入ったカプセルを投下。大気圏突入を経て、無事に回収され、日本に届けられました。今回公開されたのは、「背面ヒートシールド」「搭載電子機器部」「インスツルメントモジュール」「前面ヒートシールド」「パラシュート」の5つです。

手前から前面ヒートシールド、搭載電子機器部、背面ヒートシールド、インスツルメントモジュール、パラシュートが展示されている(Credit: JAXA)

展示に関して、はやぶさ2プロジェクトマネージャの津田雄一氏は「宇宙飛行をした現物の重みをできるだけ多くの皆様に実感してほしい。」と話しており、はやぶさ2の<生まれ故郷>である相模原市で展示ができることに対して感慨深い様子でした。

公開は3月16日(火)までJAXA相模原キャンパスの隣にある相模原市立博物館で行われており、一般への公開はすでに受付が終了。抽選に応募し、当選した人が展示を見ることができます。また、3月27日(土)から4月11日(日)まで東京・上野の国立科学博物館で展示が決定しています。こちらはオンラインによる事前予約が必要です。

また公開初日は、近隣の小学生120人が見学に訪れました。中にはメモを取る児童もいて、カプセルに対する関心の高さが見受けられました。加えて、同小学校からJAXAへ「はやぶさ2」の応援メッセージも贈呈。児童が手書きしたはやぶさ2のイラストを中心にメッセージが添えられています。

贈呈された応援ポスター。3人の小学生が國中均所長(左)とはやぶさ2プロジェクトマネージャ津田雄一氏(右)に手渡した(写真撮影:筆者)

■会場の様子

相模原市立博物館の特別展示室に設置された5つのコンテナ。今回、報道陣のみ写真撮影が許可されましたが、会場奥側にある「前面ヒートシールド」と「搭載電子機器部」は技術保護のため撮影禁止に加え、保護カバーが被せられていました。ただし、一般の方が見学する際には、カバーが剥がされて、現物が見学できるとのこと。JAXA宇宙科学研究所所長の國中均氏によると、「この2つの部品には製作していただいた企業のノウハウが詰まっている。近年のカメラなどは解像度が非常に良く、そのようなノウハウが世界中にアナウンスされてしまうため。」と話し、報道陣に協力を呼びかけていました。

報道記者会見時にはカバーが被せられた展示品もある(Credit: JAXA)

■展示品の見所

・前面ヒートシールド

前面ヒートシールドは、大気圏突入時の空力加熱からカプセルとサンプルを守ります。カプセルは地球の大気圏に秒速12k mというスピードで突入するため、前方の空気が圧縮されることで表面温度が3000度になります。この熱がカプセル内部に伝わるとサンプルの性質が熱で変化する恐れがあり、それを防止する役目があります。また、展示ケース内にはシールドの内部が見れるように鏡がついており、インシュレーターと呼ばれる白色の断熱材を見ることもできます。インシュレーターにより内部を約50度の常温以下に保つことが可能です。

前面ヒートシールド。手前にある青い紐は「ストリーマーリボン」と呼ばれ落下後のカプセルを探しやすくする目印となるもの。(Credit: JAXA)

・背面ヒートシールド

帰還カプセルの背中側(後ろ側)からサンプルを守ります。背面シールド側は、表面に貼られた金色のテープが大気圏突入時に燃えきらず、少し残っている様子が分かります。また、カプセルは前面ヒートシールドと背面ヒートシールドが合わさった貝のような形状をしています。背面ヒートシールドの中には、この2つのシールドを合わせて離れないようにする通称「貝柱」と呼ばれている部分も確認できます。

高温に耐えて残っている金色のテープを確認できる。(Credit:JAXA)

・搭載電子機器部

カプセルの「頭脳」。上部には再突入飛行モジュール(REMM)と名付けられた計測機器が搭載されています。この機器は、カプセルが大気圏に再突入した際に温度や加速度、姿勢、運動を計測するために設置されました。日本で初めてこれらのデータ取得に成功。現在でもすぐにデータを取り出せる状態にあるということです。

また、中央にポッカリと開いた開口部には、リュウグウからのサンプルを収めた「サンプラーコンテナ」が設置されていま した。現在、サンプルは分析中のため今回は公開されていません。

中央に開いた開口部にサンプルの入ったコンテナがあった(Credit:JAXA)

・インスツルメントモジュール

パラシュートと接続されており、地上に着陸した部分です。帰還前は母船と「アンビリカルケーブル」でつながっており、電力の供給やデータの送信などを行っていました。展示では、ケーブルが残されており、実物を見ることができます。

パラシュートは、機器の「お皿」状の部分に収められた(Credit: JAXA)

・パラシュート

カプセルはパラシュートを開き減速し、着陸します。「十字傘」と呼ばれる長方形を2枚十字に重ね合わせた形状をしており、小さくコンパクトに収められる工夫がされています。また、カプセルを探すときに電波を使用しますが、電波を反射する「レーダー反射布」も取り付けられています。

広げると大きさは3mほどになる。(Credit: JAXA)

 

Image Credit: JAXA/sorae
Source: ISAS
文/出口隼詩

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