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連星のハビタブルゾーンにも生命に適した惑星が存在する可能性

sorae.jp 2021年4月21日 21時30分

【▲ 周連星惑星における日没の景色を描いた想像図。空に描かれた楕円形は連星の公転軌道を示している(Credit: NRAO/AUI/NSF, S. Dagnello)】

ニューヨーク大学アブダビ校のNikolaos Georgakarakos氏らの研究グループは、2つ以上の恒星から成る連星のハビタブルゾーン(地球型惑星の表面に液体の水が存在し得る領域)において、生命に適した惑星が存在できる可能性を示した研究成果を発表しました。映画「スターウォーズ」シリーズの舞台の一つである「タトゥイーン」のように、2つの太陽の下で生命を育む惑星もどこかにあるのかもしれません。

■複数の恒星や巨大惑星の影響を受けつつもハビタブルゾーンに留まれる可能性

太陽は単独の恒星ですが、複数の恒星が共通の重心を周回し合う連星も宇宙では一般的な存在で、その数は恒星全体の半分から4分の3を占めると推定されています。これまでに4300個以上が見つかっている太陽系外惑星のなかにも、連星の周りを公転する「周連星惑星」と呼ばれるものが幾つか見つかっています。

研究グループは今回、連星の周囲に安定したハビタブルゾーンが存在し、地球に似た周連星惑星が存在できるかどうかを調べました。対象となったのは、アメリカ航空宇宙局(NASA)が2018年まで運用していた宇宙望遠鏡「ケプラー」によって周連星惑星が発見された9つの連星です。

分析の結果、「ケプラー34」「ケプラー35」「ケプラー38」「ケプラー64」「ケプラー413」の周囲には恒久的なハビタブルゾーンが存在する可能性があり、生命に適した環境を持つ惑星も存在し得ることが示されました。ハビタブルゾーンはこれらの連星の重心から数えて0.6~2天文単位(※)から始まり、0.4~1.5天文単位の幅があるといいます。

※…1天文単位(au)=約1億5000万km、地球から太陽までの平均距離に由来する

いっぽう、残る4つの連星については、生命に適した惑星が存在する可能性は低いことが示されました。その理由は、周連星惑星を取り巻く複雑な環境にあります。

研究グループによると、周連星惑星の公転軌道は2つの恒星がもたらす重力相互作用の影響を受けて、時間の経過とともに軌道の形が楕円形になっていく可能性が従来の研究で示されているといいます。楕円形の軌道を公転する惑星は1回公転する間(その惑星にとっての1年)に日射量そのものが変動するため、惑星全体の気候が大きな影響を受けることになります。

また、分析対象となった連星でこれまでに発見された周連星惑星は、いずれも海王星以上のサイズを持つ巨大惑星だといいます。巨大な惑星はより小さな天体の軌道を乱して恒星に落下させたり、惑星系から放り出してしまったりすることもあり得ます。つまり、地球に似た周連星惑星がハビタブルゾーンに留まる可能性は、連星や巨大惑星からの複雑な相互作用に左右されることになるわけです。

Georgakarakos氏は、特にケプラー38(こと座の方向およそ3970光年先)について「海がある地球のような惑星の存在に適しています」とコメントしています。

【▲ 周連星惑星「ケプラー64b」を描いた想像図(Credit: Haven Giguere/Yale)】

 

関連:「タトゥイーン」のような太陽系外惑星は、大きく傾いた軌道に形成されることがある

Image Credit: NRAO/AUI/NSF, S. Dagnello
Source: Science and research news | Frontiers
文/松村武宏

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