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NASA火星探査車Perseveranceが2本目の岩石サンプル採取、地下水が長期間存在した可能性も示される

sorae.jp 2021年9月16日 8時52分

アメリカ航空宇宙局(NASA)は現地時間9月10日、火星探査ミッション「マーズ2020」の探査車「Perseverance(パーセべランス、パーサヴィアランス)」による3回目のサンプル採取を実施し、2本目の岩石サンプルを採取・保管することに成功したと発表しました。

採取成功の発表と同時にPerseveranceによる岩石の組成の分析結果も明らかにされており、Perseveranceが着陸したジェゼロ・クレーターにはかつて微生物の生存に適した環境が一定期間持続していた可能性が高まりました。

■サンプルが採取された岩石は正確な形成年代を求めやすい火山岩だった

【▲ Perseveranceによる2本目のサンプル採取後に撮影された岩石「ロシェット」(中央)。採取時に空けられた穴が2つ(右:1本目、左:2本目)見えている(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

現地時間2021年9月8日、Perseveranceは9月1日に1本目の岩石サンプルを採取したのと同じ「Rochette(ロシェット)」と呼ばれるブリーフケースサイズの岩石からの2本目の岩石サンプル採取を実施しました。2本のサンプル採取後に撮影されたロシェットの画像とサンプル採取前の画像を見比べると、採取後に撮影された画像には掘削時に空けられた2つの穴が写っていることがわかります。

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マーズ2020の主な目的は火星に存在していたかもしれない微生物の痕跡を探すことですが、NASAは欧州宇宙機関(ESA)と共同で火星からのサンプルリターンミッションを計画しており、Perseveranceは火星探査史上初めて地球に運ばれる火星のサンプルを採取するという重要な役割も担っています。ロシェットから採取された2本のサンプルも、早ければ2031年に地球へ届けられることになります。

【▲ サンプル採取に先立って分析のために研磨されたロシェットの一部。研磨面の直径は5cm(Credit: JPL-Caltech/MSSS/LANL/Photon Systems/CIW/University of Pittsburgh)】

NASAによると、2回のサンプル採取に先立って8月下旬に行われた研磨面の分析の結果、ロシェットが玄武岩質の火山岩であることが判明しました。火山岩であれば、放射年代測定を利用して形成された時期を比較的正確に求めることができるといいます。

直径45kmのジェゼロ・クレーターに着陸したPerseveranceは、クレーター内部のさまざまな場所で合計30本程度の岩石サンプルを採取することになっています。クレーターの形成、湖の出現と消滅、火星の気候の変化といった出来事を含む歴史の時系列にあわせて各サンプルを並べ替える上で、正確な年代測定結果は役立つはずです。

■ロシェットの分析結果は地下水が長期間存在していた可能性を示唆

また、Perseveranceに搭載されている観測装置「SHERLOC」による研磨面の分析結果から、ロシェットに硫酸塩やリン酸塩が含まれていることも明らかになりました。塩は流れる地下水と岩石の鉱物が反応して形成されたか、液体の水が蒸発した際に残されたとみられています。

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これらの塩には小さな水や気泡が閉じ込められている可能性があり、火星の古代の気候や生命の居住可能性についての情報を今に伝えるタイムカプセルとして利用できるかもしれないといいます。地球ではこうした塩に古代の生命の兆候が保存されていることがあるといい、将来火星から持ち帰られたサンプルの分析に期待が高まります。

【▲ 研磨面の中央部分の拡大画像。黄色い点は硫酸塩、青い点はリン酸塩が検出された場所を示す(Credit: JPL-Caltech/MSSS/LANL/Photon Systems/CIW/University of Pittsburgh)】

ロシェットの分析結果は、液体の水が存在していた期間を推定する上でも重要です。ジェゼロ・クレーターにはかつて湖が存在していたと考えられていて、Perseveranceが着陸した地点の西側にはクレーターの外部から流れ込んだ水によって形成されたとみられる三角州が広がっています。NASAによると、この湖がどれくらいの期間存在していたのかはわかっておらず、わずか50年で干上がった可能性も否定できなかったといいます。

しかし、分析によって判明したロシェットの組成は、地下水が長期間存在していた可能性を示唆しているといいます。具体的にどれくらいの期間存在していたのかは依然としてわからないものの、微生物がより生存しやすい環境をこの地域で支えるには十分な期間だったと研究者は確信を深めているといいます。ミッションのプロジェクトサイエンティストを務めるカリフォルニア工科大学のKen Farley氏は「ロシェットは居住可能な環境が持続的に存在していた可能性を示しているように思われます。水が長期間存在していたのは重大なことです」と語っています。

ロシェットから2本の岩石サンプルを採取したPerseveranceは、このあと200mほど離れたところにある「South Seitah」と呼ばれるエリアに向けて移動し、次のサンプル採取を目指します。複数の尾根が砂丘や大小の岩に覆われているSouth Seitahは、ロシェットよりも古い時代に形成されたとみられています。

なお、火星は10月8日に合(地球から見て太陽の向こう側に位置するタイミング)となるため、NASAの火星探査ミッションは数週間休止されます。PerseveranceによるSouth Seitahでの探査活動は休止期間が明けてからになる予定です。

 

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Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA/JPL
文/松村武宏

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