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ケプラー宇宙望遠鏡の観測データから「重力マイクロレンズ法」で太陽系外惑星を発見!

sorae.jp 2022年4月4日 17時15分

【▲ 宇宙望遠鏡「ケプラー」の想像図(Credit: NASA/Ames/Dan Rutter)】

マンチェスター大学の博士課程学生David Spechtさんを筆頭とする研究グループは、アメリカ航空宇宙局(NASA)の宇宙望遠鏡「ケプラー」(2018年10月に運用終了)が2016年に「重力マイクロレンズ現象」(後述)を検出しており、その観測データから太陽系外惑星が見つかったとする研究成果を明らかにしました。同大学の発表によると、「宇宙からの観測」かつ「重力マイクロレンズ現象を利用」して系外惑星が見つかったのは今回が初めてとされています。

■約1万7000光年先にある木星に似た系外惑星を発見

重力マイクロレンズとは、遠くにある恒星(光源星)と地球の間を別の天体(レンズ天体)が通過する際、レンズ天体の重力の影響を受けて光源星を発した光の進む向きが変わることで、光源星の明るさが時間とともに変化する現象です。

レンズ天体が単一の恒星などだった場合、光源星の光度曲線(時間の経過にあわせて変化する天体の光度を示した曲線)はシンプルなパターンを描きます。いっぽう、レンズ天体が親星と系外惑星からなる惑星系だった場合、光度曲線は独特のパターンを描くことになります。この特徴を利用して系外惑星を検出する手法は「重力マイクロレンズ法」と呼ばれています。

【▲ 重力マイクロレンズ効果を受けた光源星の明るさの変化を示した図。レンズ天体が恒星だけの場合(左)に対し、レンズ天体が惑星系だった場合(右)は光源星の明るさの変化に惑星の重力による特徴的なパターンが生じる(Credit: 東京大学)】

関連:アマチュア天文家が見つけた重力マイクロレンズ現象から太陽系外惑星を発見!

ケプラー宇宙望遠鏡によって2016年4月~7月にかけて取得された天の川銀河中心方向の観測データを分析したところ、Spechtさんたちは重力マイクロレンズ現象の候補を5つ発見。同時期にハワイの「カナダ・フランス・ハワイ望遠鏡(CFHT)」などで実施されていた地上ベースの観測プロジェクト5件のデータとあわせて分析した結果、5つの候補のうち1つが惑星系によって引き起こされていたことが明らかになったといいます。

今回発見された系外惑星は「K2-2016-BLG-0005Lb」(以下「0005Lb」)と呼ばれています。研究グループによると、0005Lbの質量は木星の約1.1倍、親星である恒星「K2-2016-BLG-0005L」(以下「0005L」)の質量は太陽の約0.58倍で、地球からは「いて座」の方向に約1万7000光年離れていると推定されています。

また、重力マイクロレンズ現象を起こした時、系外惑星0005Lbは恒星0005Lから約4.2天文単位(※)離れていたとされています。サイズや質量が木星に似ている既知の系外惑星のなかには、親星のすぐ近くを公転しているために表面が高温に熱せられている「ホットジュピター」も数多く含まれています。いっぽう、0005Lbは質量が木星とほぼ同じであることに加えて、木星と同じように親星からある程度離れた軌道を公転しているとみられることから、発表では“木星とほとんどそっくり”と表現されています。

※…1天文単位(au)=約1億5000万km、地球から太陽までの平均距離に由来

【▲ NASAが開発中の宇宙望遠鏡「ナンシー・グレース・ローマン」の想像図(Credit: GSFC/SVS)】

なお、ケプラー宇宙望遠鏡は開発時に重力マイクロレンズ法の利用が想定されていませんでしたが、NASAが開発中の「ナンシー・グレース・ローマン」や、欧州宇宙機関(ESA)が2023年に打ち上げを予定している「ユークリッド」といった今後登場する宇宙望遠鏡では、重力マイクロレンズ法を利用した系外惑星の探査も想定されています。

既知の系外惑星の多くは、親星の光を観測することで間接的に系外惑星を検出する「トランジット法」や「視線速度法(ドップラーシフト法)」を利用して見つかってきました。今後は新たな宇宙望遠鏡による重力マイクロレンズ法を利用した観測によって、さらに何千もの系外惑星が発見されるだろうと期待されています(※トランジット法や視線速度法については以下の関連記事もご参照下さい)。

 

関連:人類が発見した「太陽系外惑星」その合計がついに5000個を突破!

Source

Image Credit: NASA/Ames/Dan Rutter マンチェスター大学 - NASA’s Kepler telescope delivers new planetary discovery from the grave Specht et al. - Kepler K2 Campaign 9: II. First space-based discovery of an exoplanet using microlensing (arXiv)

文/松村武宏

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