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彗星の衝突が地球の大陸を作る原動力になった可能性が判明

sorae.jp 2022年9月1日 22時4分

地球の表面は地殻という岩石の層でできています。この地殻は、薄い玄武岩でできた海洋地殻と、厚い花崗岩でできた大陸地殻とに分かれます。このように地殻が化学組成の異なる岩石に分かれているのは、他の岩石惑星には見られない特徴です。

大陸地殻の形成は、惑星科学だけでなく生命科学の分野でも興味深い対象です。風雨や河川による大陸の風化によって、海洋に流れ込む栄養分が増加し、生命の進化を手助けしたとも考えられているからです。しかし、大陸地殻がどのようにできたのかは長年の謎です。大陸地殻は、太古代(40億年~25億年前)に化学組成の異なる物質が分離する分化作用によって形成されたと考えられていますが、詳細は明らかになっていません。

今回、カーティン大学のChristopher L Kirkland氏などの研究チームは、最初期に形成されたと考えられている大陸地殻の断片を分析し、上記とは異なる可能性を導き出しました。Kirkland氏らは、グリーンランド南西部にある「北大西洋クラトン (North Atlantic Craton)」と、オーストラリア大陸西部にある「ピルバラクラトン (Pilbara Craton)」から数百のサンプルを採集し、分析にかけました。これらはいずれも太古代に形成された大陸地殻の断片であると考えられています。

分析対象となったのは「ジルコン」という鉱物です。ジルコンは物理的にも化学的にも安定な鉱物であり、何十億年も安定して存在する、いわばタイムカプセルのような物質です。ジルコンに含まれるハフニウムという元素を調べると、放射性年代測定法 (※) によりジルコンが固まった年代を特定できます。つまりジルコンを調べれば、ジルコンを含む岩石サンプルがいつ固まったのかを時系列的に知ることができるのです。

※…放射性年代測定法: 自然界には放射線を出して崩壊し、種類が変わる原子核が存在します。原子核の崩壊するペースは一定で、崩壊した後の種類も分かっています。サンプルに含まれる崩壊前と崩壊後の原子核の割合をもとに、サンプルが固化した年代を逆算する手法を放射性年代測定法と言います。

【▲ 図1: 時代ごとの酸素の同位体比率の変化。同位体比率の変化と銀河円盤の通過周期の周期はほぼ一致しています。また、特に重い同位体の少なかった35億6000万年前から34億3000万年前、太陽系は銀河腕の中に入っていませんでした。 (Image Credit: Kirkland, et.al.) 】

サンプルを時系列順に並べることができたら、次はジルコンに含まれる酸素の同位体 (※) の比率を調べます。今回の研究では、サンプルを時系列順に並べた後に、酸素の同位体比率がどのように変化しているのかが調べられました。その結果、1億7000万年から2億年という周期で同位体比率が変化していることが突き止められました。

※…同位体: 元素の種類を決定する陽子の数は同じであるが、中性子の数が異なる原子核のこと。先述のハフニウムによる放射性年代測定法では原子核が崩壊する「放射性同位体」を利用しましたが、次の酸素の同位体比率の分析では崩壊しない「安定同位体」を利用しています。

【▲ 図2: (A) 天の川銀河の地図と太陽系の移動経路。太陽系は天の川銀河内を波打ちながら公転しています。 (B) 太陽系の概略図。太陽系はその外側に、直径約3.2光年のオールトの雲があると推定されています。オールトの雲から天体が太陽系中心部へと落ちていくと、彗星として観測されます。 (Image Credit: Kirkland, et.al.) 】

このような長さの周期とよくあてはまるのが、地球を含む太陽系の移動です。太陽系は天の川銀河の中で波を描くように公転しています。この波の振動周期と、今回発見された同位体比率の変化がほぼ一致しているのです!

恒星が高密度に集まっている銀河円盤を太陽系が通過している時には、他の恒星が太陽系の近くを通過する可能性が高まります。すると、彗星の巣とも呼ばれるオールトの雲がかき乱され、太陽系の中心部へと落下する確率も高くなります。結果的に、彗星が地球に接近し、衝突する確率も高くなるわけです。

彗星が地球表面に衝突すると、地殻を砕いて多数のひび割れを形成すると共に、その下にあるマントルにまで衝撃が伝播します。これにより、衝突した地点の下側では地球深部からの物質が地殻へと供給されます。また、ひび割れた地殻には水が入り込み、岩石の融点を下げます。この2つの作用によって花崗岩の塊が形成され、後に大陸地殻の “核” になったと推定されるのです。

【▲ 図3: 彗星の地球表面への落下は、大陸地殻を形成する原動力となった可能性があります。 (Image Credit: Kirkland, et.al.) 】

このように推定されるカギは、同位体比率の変化の仕方にあります。重い同位体は軽い同位体と比べて沈みやすいため、地球の深部に行けば行くほど重い同位体の割合が高くなります。裏を返せば、他の時代と比べて重い同位体を含むサンプルは、地球の地下深くから上昇してきた物質でできていることを意味します。

そして、重い同位体の比率が特に低い時期、つまり地球深部からの物質の供給が少なかった時期は、太陽系がペルセウス腕 (Perseus Arm) を脱出してから、ノルマ腕 (Norma Arm) に進入するまでの期間と一致するのです! 銀河腕は他の場所と比べて恒星の密度が特に高いため、腕から出ている時代に彗星の衝突が少ないことも説明できます。

地球の歴史上、天体衝突が集中する「爆撃期」が何度か起きたことや、それがおおよそ周期的に起こっていることはこれまでに分かっていましたが、これが大陸地殻の形成に関わっている可能性が今回明らかとなったわけです。大陸地殻を形成するメインの作用は地球内部で完結しているという点は変わりありませんが、大陸地殻の形成を促す作用として宇宙からの天体衝突が関わっている、というのは非常に興味深い説となるでしょう。

 

Source

C.L. Kirkland, et.al. “Did transit through the galactic spiral arms seed crust production on the early Earth?”. (Geology)

文/彩恵りり

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