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『ザ・ノンフィクション』話題の婚活回、密着された男性がエゴサをした結果「人生でもっとも辛い出来事」に

日刊SPA! 2024年3月2日 8時54分

 2月4日、11日に前後編で放送された『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ)の「結婚したい彼と彼女の場合 ~令和の婚活漂流記2024~」がSNSで大きな反響を呼んだ。番組の舞台となったのは、東京・青山の結婚相談所「マリーミー」。会員の3人が相談所代表の植草美幸氏の激励に導かれながら、婚活に奮闘する模様に密着した内容であった。
 SNSでとりわけ“話題”となったのは、30歳の男性会員・進藤氏(仮名)だ。旧Twitter(現X)では、違法に切り抜かれた動画や静止画とともに、番組内での言動を揶揄する言説が多数飛び交っていた。無論、彼の婚活を応援する声も多く上がっていたのだが、悪質な誹謗・中傷も少なくなかったのである。

 今回は放送を経て思うこと、そして婚活の現況について、植草氏との対談形式で進藤氏から話を伺った。

◆「自分を変えるチャンス」だと思った

——はじめに取材の経緯から教えていただきたいです。どうして進藤さんに密着することになったのでしょうか。

植草美幸氏(以下、植草):コロナ禍を経て、人とのコミュニケーションがうまく取れない会員さんが格段に増えています。進藤さんの婚活を阻む大きな壁の一つも、コミュニケーション能力でした。このタイミングで密着いただくのであれば、そういった社会背景もお伝えしながら、懸命に頑張っていらっしゃる姿を見てほしいなと思って。そこで番組の担当ディレクターと相談し、ディレクターから内容や取材の密着度、放送後に懸念される事柄などを進藤さんに説明してもらい、本人の意思を確認した上で受けて頂くことになりました。

進藤さん(以下、進藤):高校生のころ演劇をやっていて、同期にはデビューした人もいるので、人前に出ることやカメラで撮られることへの抵抗感はほとんどありませんでした。それに、何より「自分を変えるチャンス」だと思って、お受けしました。

◆大きな反響に驚き「恐る恐る出社していた」

——とはいえあまりに大きな反響でした。放送後、影響などもあったのではないでしょうか。

植草:周りから「見ました!」と声をかけられることや、番組をきっかけにしたお問い合わせが多くありました。「番組に出ていた人に会いたい」「入会したい」といった方も見えています。

進藤:取材については、実は母から反対されて喧嘩になったんです。それでも自分の意思は変わりませんでしたが。その後母は放送もSNSも見ていないようなので、感想などは聞いていないです。そもそも取材中に一人暮らしを始めたことで話す頻度が減ったこともあり、いまだに番組に関することは話題にのぼりません。

 会社では、直属の上司を含む一部の人にのみ、事前に取材のことを話していました。ここまでSNSで騒がれてしまうとは思っていなかったので、しばらくは恐る恐るの出社でしたね……。現状のところは幸い、問題にはなっていません。

◆今では美容やファッションに興味を持つように

植草:眼鏡も放送後に変えたんだよね。

進藤:一度だけですが、街中で声をかけられたんです。そのときは応援していただいたのでとてもありがたかったものの、少し人目が気になったので色つきを……(笑)。でも、今後はコンタクトレンズかレーシックにもチャレンジするつもりです。

——眼鏡もですが、放送時と雰囲気が違うように感じます。今日の方が若々しい印象です。

進藤:植草先生に第一印象の大切さを教わって、見た目への意識が大きく変わりました。最初は化粧水や乳液すらも知らなかったのに、今や美容が楽しくて。美容師さんなどが配信されている変身系のYouTubeにもハマって、やりたいことが色々と増えています。コンタクトへの挑戦もその一環ですね。

植草:入会時、進藤さんは私のコースではなかったんです。難航していたので私が担当することになったのですが、コミュニケーションに課題があるとはいえ、彼はなぜここまで苦戦しているんだろうと当初は不思議でした。というのも、プロフィール写真はとても格好良くて。

 しかし実際に会ってみると、本人に身だしなみのスキルが全然なかったんです。ヒゲは朝剃っていると言うけれど、夕方の時点で青ヒゲになってしまっているし、眉毛も繋がっていました。まず改善すべきは「第一印象=見た目」だと、口を酸っぱくして伝えました。

進藤:先生のご指導前は、服もスーパーで買っていたほど無頓着でしたね。それをユニクロベースに変更しました。最近ではもう少し値の張るブランドの服もたまに買うようになって、以前とはお金の使い道もまるで変わっています。

◆「清潔感のなさ」で断られることが減った

——見た目が変化することで、婚活にはどんな好影響が出ましたか?

植草:お見合いで断られる確率が大幅に下がりました。もちろんコミュニケーション能力の改善や、お母様との同居から一人暮らしにプロフィールが変わった影響も大きいでしょうが、お断りの理由に「清潔感のなさ」が挙がらなくなった。

進藤:最近のお断りでは、「フィーリングの不一致」と伺うことが多いです。この場合は相性の問題がほとんどだと思うので、成長はできているのかなと。先生の指導の賜物ですね。

◆直前まで「放送中止」を願っていた

——ちなみにお二方は前半で放送されていたシーンが初対面だったのでしょうか。

植草:マリーミーで見かけたことはありましたが、面と向かってカウンセリングを行うのは初めてでした。あの日も最初のうちは警戒して、心を閉ざしてアドバイスにも一切耳を傾けないような姿勢だったので、これは大変だと匙を投げそうになりました(笑)。ただ、放送でも取り上げられていた中盤あたりから、ヘアスタイルやヒゲのことを指摘したら「わかりました」とすぐに行動に移してくれて。この素直さがあれば大丈夫だと思えましたし、どんどん心も開いていってくれました。

——SNSでは、「印象操作するような編集だったのではないか」などの憶測もありましたが、そのままのやりとりだったのですね。

進藤:そうなんです。ほかの方がどう思っているかはわかりませんが、カウンセリングやお見合いも色々と撮られていたので、放送前夜はどんな場面が出るんだろうとナーバスになって眠れませんでしたし、実は放送中止にならないかと願ってしまうほどでした(笑)。

植草:当日は進藤さんと、もう一人の協力者である内田さんと、うちの女性会員2人とリアルタイムで上映会をしたんですが、たしかに進藤さんはかなり緊張していましたね。

進藤:見てしまえばスッキリしたんですが、その後が最悪でした。先生にもディレクターの方にも「エゴサはしない方がいい」と言われていたのに、ついつい検索してしまって……。帰り道からはずっとTwitterに張り付いていました。

植草:一時期はSNSでの盛り上がりに本格的に参ってしまったようで、憔悴した様子で相談の連絡が来ました。もう乗り越えられたようなので一安心ですが、当時は心配でたまりませんでした。

進藤:メンタルは強い方だと思っていたので平気だと考えていたんです。けれど、現実は想像をはるかに上回っていました。キツい内容のコメントがどうしても目に付くし、投稿件数もインプレッション数もいいね数もとんでもなく多くて、恐怖そのもの。人生でもっとも辛い出来事でした。

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 進藤氏が真に堪えたのは「失敗を含めた自分の姿を多くの人に見られたこと」ではなく、「有象無象のSNSのコメントとそれに一様に賛同しているように思えた群衆」だった。一方で「気持ちが落ち着いた今では、エールをくださっているコメントがたくさんあることにも気がつけました。そうした声に励まされ、引き続き婚活を頑張っていこうと思えていますから、結果的にはいい経験ができたと思っています」と気丈に語る。

 人を傷つけるも励ますも、指先一本でできるこの時代。もはやSNSを利用する以上、「閲覧しているだけ」「いいねを押しているだけ」でも、部外者面は許されないのかもしれない。

 ともあれ、少なくない応援の声を胸に、植草氏との二人三脚で成婚に向けて邁進していってほしい——。

<取材・文/海原あい>

【海原あい】
コンビニで買えるビール類はほぼ全制覇しています。本は紙派。さらに調味料と服とスペースエイジ系のインテリアを収集しているため、収納不足に陥りがちです。好きな検索ワードは「備忘録」

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