―[インタビュー連載『エッジな人々』]―
こわもてで高潔な役柄とは裏腹に、声色も高く、口調も穏やかで、『虎に翼』とは違う「笑顔」で答えてくれる。高い演技力を持つ叩き上げ女優が、“ブレイク”という翼を得た今だから明かす、半生、役者論とは?
日本初の女性弁護士、そして裁判官となった三淵嘉子をモデルにしたNHK連続テレビ小説『虎に翼』が話題だ。見どころの一つは、道なき道を進む個性的な登場人物陣。
なかでも一際存在感を放つのが、主人公・寅子(伊藤沙莉)の同級生で、男装姿の「山田よね」を演じる土居志央梨だ。その才能を高く評価し更なるブレイクを断言する作家・樋口毅宏が、彼女の素顔に迫った。
◆硬派な役柄とは正反対。笑い上戸で、性格も楽観的
──実は僕の妻が弁護士でして。『虎に翼』は、妻につられる形で見始めたんですが、今は僕のほうが熱心に毎日見ています(笑)。土居さん演じる「男装の麗人」山田よねは、すごくスパイスの効いた役ですが、改めて反響の大きさ、いかがですか?
土居:私が一番ビックリしていると思います(笑)。街中でも「もしかして“よねさん”ですか?」と同世代くらいの女性に声をかけられることが増えました。とても嬉しいですよね。
──よねは寅子が通う明律大学の同級生。貧しい農村出身で、姉は女郎に売られ、自身も売られそうになった過去があります。いわば貧しい境遇から脱却するために弁護士を目指しているので、「女だからとナメられてたまるか!」と常に無愛想な表情をしている。
なのでNHKの情報番組『あさイチ』にゲストで登場した土居さんの笑顔をお見かけしたときは「おぉ、よねさんが笑ってる!」と嬉しくなりました。
土居:素の私自身は笑い上戸で、性格も楽観的。撮影中も女子部のメンバーとワイワイ騒いで笑ってました。ただ私が笑っている様子に見ている方がビックリしたという話を聞き、改めてよねが笑わないと思われていることに気づきました。
◆よねの強い言葉は「愛情の裏返し」
──そこは撮影になると切り替わるんですね。
土居:そうですね。ただ、よねは最初から「絶対に笑わない」設定というわけではないんです。どうしても「おまえ」「やめろ!」など台詞が強いので、「笑うタイミングがなかった」と言ったほうがいいかもしれません。
――笑わないよねの姿に共感している女性って実は多いと思うんです。いまだに「女はいつもニコニコ笑顔で」という同調圧力は日本社会に残っていますし。そんなよねに脚本家である吉田恵里香さんは、ある種の女性の理想像を託したのではないかなと思います。
土居:たしかに「女は愛嬌」みたいな風潮、ありますよね。
――そしていかんせん、よねは寅子に厳しい(苦笑)。寅子が出産を機に司法の道を一度、断念したときも「こっちの道には二度と戻ってくるな!」とか、終戦後、生き延びて再会したときも、寅子には笑顔ひとつ見せず、素直じゃない。そんなよねを土居さん自身、どうご覧になっているでしょうか?
土居:正直私も演じながら「なにもそこまで頑なじゃなくても……」と思ったことがあるし、寅子役の伊藤沙莉ちゃんと話したこともあります。よねは寅子を誰よりも信頼しているんですよね。
自分を常に律しようとする彼女にとって、寅子はさまざまな感情を刺激してくる特別な存在。だからこそ、よねの強い言葉も寅子への「愛情の裏返し」だと思って演じていますね。
◆15年続けたバレエをやめて、世界が色づき始めた
──土居さんは、子どもの頃からクラシックバレエをやられていたのだとか。
土居:クラシックバレエは3歳から18歳まで続けていました。母親が若いときにジャズダンスをやっていて、私にはバレエをやらせたいと思ったみたいで。ただ私は基礎的なバーレッスンは好きじゃなくて(苦笑)。
発表会で衣装を着て、役を演じるのが楽しかったんですよね。毎回、幕が上がるとき、スポットライトを浴びながら舞台の袖から出ていく瞬間がなによりも好きでした。「表現するって楽しいんだ」と感じられるようになった原点はバレエですね。
──15年も続けたバレエをやめるのは、大きな決断でしたね。
土居:そうですね。高校1年のときに大きなコンクールに出たのですが、それが終わってからいわゆる「燃え尽き症候群」になってしまったんです。でもバレエ推薦で高校に入学している手前、やめたいとは自分からなかなか言えず。朝も起きられなくなって、正直限界でした。
親も私の様子に気づいていて、私が「もうバレエを続けられないかもしれない。普通に進学したい」と告げたら、すんなり理解してくれました。
──似たような話をバレエ経験者である他の女優さんからも聞いたことがあるんです。その方は、自分を抑圧し続けてきたけど、バレエをやめた瞬間、「これからは好きなことをしていいんだと思った」とおっしゃっていましたよ。
土居:まさに。それまで灰色だった世界がようやく色づき始めたみたいな感じで。今でこそ撮影前もぐっすり眠れる能天気な私ですが、それもすべてのネガティブはその時期に置いてきた感じです。
◆オープンキャンパスで映画監督・林海象に出会う
――バレエ、大変だなあ……。そこからなぜ俳優業に?
土居:それまで受験勉強を一切してこなかったので、その時点で受けられる大学を探して、いろいろと資料を取り寄せたんですが、パンフレットが一番きれいだったのが京都芸術大学で(苦笑)。
最初は、ダンスコース(現:演技・演出コース)を志望する予定だったんですが、オープンキャンパスに行ったとき、たまたま参加した「エチュード(即興演劇)」のワークショップに参加したら、それがすごく楽しくて。
教授であり映画監督の林海象さんも、おもちゃの拳銃を振り回したりしていて面白い人だなと思って見ていました(笑)。
――運命ですね。また話しますがうちの妻も海象さんに導かれた人生だったんです。
土居:そうなんですか。大学に入ってから、お芝居もすごく楽しめて今もどんどん解放されていっている感覚で、その意味で導かれました。
――きっとご家族も喜んでいらっしゃるのでは。
土居:今回は父が一番ソワソワしているみたいです(笑)。母も、3歳下の弟も、これまでも私の舞台を毎回見に来てくれて、一家総出で応援してくれてますね。
◆印象に残っている俳優は天海祐希
──ここで改めて土居さんのこれまでの経歴を振り返ると、いろいろと研鑽を積まれていらっしゃる。映画『リバーズ・エッジ』では、主人公の友人「小山ルミ」役で、性的表現を含むシーンにも挑んでいます。
土居:懐かしいですね。この映画は大学卒業後、上京して初めてつかんだ役なので、とても印象深くて。あの行定勲監督だし、岡崎京子さんの原作も好きだったので強い思いでオーディションに臨みました。
――共演した中で印象に残っている俳優さんはいますか?
土居:天海祐希さんです。ドラマ『緊急取調室』にゲスト出演したとき、初めてお会いしたのですが、まるで後光が差しているようでした。その後、『広島ジャンゴ2022』という舞台で共演させていただいた際には、「こんなに“背中”で導いてくれる、カッコいい座長がいるんだ!」と思って。
後輩にあれこれアドバイスするというより、天海さんが稽古している姿を見ていると、こちらも自然と「頑張ろう」と思えてくるんです。とても優しくて素敵な方で、またぜひご一緒したいですね。
――あと、これも僕、びっくりしたんですけど、土居さん10年ほど前には先ほど名前が挙がった林海象さんの作品にも出ていらっしゃる。
土居:京都芸術大学に在学しているときですね。当時、海象さんが私が在籍していた映画学科の学科長だったんです。
──実は僕の妻を弁護士に導いてくれたのも海象さんなんですよ。東大に入学したものの、飲んだくれてた時期に「ふさこ、お前は弁護士になれ」と海象さんに一喝されたんです。
土居:そんなつながりがあったとは! 海象さんは先生でもありますが、“近所のおじいちゃん”のような存在。遊び心がある方で、とても楽しい方ですよね。
◆よねと自身との共通点は幼少期の体験
──これまで演じられたことがある役は、いずれもロングヘアだし、笑顔がある役が多い。いずれもよねとはギャップがありますね。
土居:今回のお話をいただいたとき、演出の方から「みんなから“一歩引いて”見ている感じが、よねだと思った」と言われたんです。そのときはピンとこなかったんですが、よくよく考えてみると子どもの頃、父の仕事の都合で転校がとても多くて。
転校先の学校では人気者になることもあればいじめられることもあり、周りの大人やクラスメイトの様子を常に観察していたんですよね。「この人たちは、今何を求めているんだろう」「どうやったらこの輪に入っていけるんだろう」って。
――『虎に翼』でも、よねが寅子たち女学生の輪から離れているシーンがたびたび描かれていましたね。
土居:女子部のみんながワイワイお弁当を食べているとき、よねだけひとりパンをイライラしながらかじっているシーンは、自分以外の人が楽しそうにしていて、自分は輪に入っていけない当時の気持ちが演じながらも蘇ってきました。
◆次作はよねとはまったく違う役
――今、土居さんには出演オファーが殺到していると思います。よねのイメージとしばらくの間は闘わないといけないのでは。
土居:そうですね。『虎に翼』がきっかけで私を知ってくださった方が多いと思うので、ここからどう変化していくのか、楽しんでもらえるように頑張りたいです。ちなみに今はまだあまり詳しいことを話せないんですけど、次作はまったく違う役で、長い髪のウィッグを被って演じることになると思います。
──先ほど話に出たように、作品によっては性的なシーンも演じられているようですが、自分なりにお仕事を受ける基準って何か決めてらっしゃいますか?
土居:明確な基準というのはなくて、あくまで「直感」ですね。今はとにかくお芝居が楽しいので、どんな役にも挑戦したいです。
◆ドラマのような意外なつながり!?
──いや~今日はおもしろかったです。あっ、そうそう最後になりましたが、こちらどうぞ。妻が出した本なんです(三輪氏の著書を手渡す)。
土居:え、待って。私、知ってる、三輪さんだ。京都にいたとき、三輪さんの事務所に行ったことある。
──はて?
土居:それこそ海象さんのゼミで、弁護士事務所のオフィスを借りて撮影したんですよ。そのとき、きっとお世話になってます。でも私が二十歳になる前のことだし、三輪さんは覚えていないと思います。
──本当ですか。ちょっとドラマみたいですね……。帰って妻にも伝えてみます。今日はありがとうございました!
【Shiori Doi】
1992年、福岡県出身。京都芸術大学卒業。’13年、林海象監督作品『彌勒』でデビュー。その後、映画『リバーズ・エッジ』『二人ノ世界』などの作品に出演。’24年、NHK連続テレビ小説『虎に翼』にレギュラー出演。主人公・佐田寅子の学友、山田よね役を熱演。
取材・構成/樋口毅宏、週刊SPA!編集部 文/アケミン 撮影/植田真紗美 スタイリスト/中村剛 メイク/国府田圭
―[インタビュー連載『エッジな人々』]―
こわもてで高潔な役柄とは裏腹に、声色も高く、口調も穏やかで、『虎に翼』とは違う「笑顔」で答えてくれる。高い演技力を持つ叩き上げ女優が、“ブレイク”という翼を得た今だから明かす、半生、役者論とは?
日本初の女性弁護士、そして裁判官となった三淵嘉子をモデルにしたNHK連続テレビ小説『虎に翼』が話題だ。見どころの一つは、道なき道を進む個性的な登場人物陣。
なかでも一際存在感を放つのが、主人公・寅子(伊藤沙莉)の同級生で、男装姿の「山田よね」を演じる土居志央梨だ。その才能を高く評価し更なるブレイクを断言する作家・樋口毅宏が、彼女の素顔に迫った。
◆硬派な役柄とは正反対。笑い上戸で、性格も楽観的
──実は僕の妻が弁護士でして。『虎に翼』は、妻につられる形で見始めたんですが、今は僕のほうが熱心に毎日見ています(笑)。土居さん演じる「男装の麗人」山田よねは、すごくスパイスの効いた役ですが、改めて反響の大きさ、いかがですか?
土居:私が一番ビックリしていると思います(笑)。街中でも「もしかして“よねさん”ですか?」と同世代くらいの女性に声をかけられることが増えました。とても嬉しいですよね。
──よねは寅子が通う明律大学の同級生。貧しい農村出身で、姉は女郎に売られ、自身も売られそうになった過去があります。いわば貧しい境遇から脱却するために弁護士を目指しているので、「女だからとナメられてたまるか!」と常に無愛想な表情をしている。
なのでNHKの情報番組『あさイチ』にゲストで登場した土居さんの笑顔をお見かけしたときは「おぉ、よねさんが笑ってる!」と嬉しくなりました。
土居:素の私自身は笑い上戸で、性格も楽観的。撮影中も女子部のメンバーとワイワイ騒いで笑ってました。ただ私が笑っている様子に見ている方がビックリしたという話を聞き、改めてよねが笑わないと思われていることに気づきました。
◆よねの強い言葉は「愛情の裏返し」
──そこは撮影になると切り替わるんですね。
土居:そうですね。ただ、よねは最初から「絶対に笑わない」設定というわけではないんです。どうしても「おまえ」「やめろ!」など台詞が強いので、「笑うタイミングがなかった」と言ったほうがいいかもしれません。
――笑わないよねの姿に共感している女性って実は多いと思うんです。いまだに「女はいつもニコニコ笑顔で」という同調圧力は日本社会に残っていますし。そんなよねに脚本家である吉田恵里香さんは、ある種の女性の理想像を託したのではないかなと思います。
土居:たしかに「女は愛嬌」みたいな風潮、ありますよね。
――そしていかんせん、よねは寅子に厳しい(苦笑)。寅子が出産を機に司法の道を一度、断念したときも「こっちの道には二度と戻ってくるな!」とか、終戦後、生き延びて再会したときも、寅子には笑顔ひとつ見せず、素直じゃない。そんなよねを土居さん自身、どうご覧になっているでしょうか?
土居:正直私も演じながら「なにもそこまで頑なじゃなくても……」と思ったことがあるし、寅子役の伊藤沙莉ちゃんと話したこともあります。よねは寅子を誰よりも信頼しているんですよね。
自分を常に律しようとする彼女にとって、寅子はさまざまな感情を刺激してくる特別な存在。だからこそ、よねの強い言葉も寅子への「愛情の裏返し」だと思って演じていますね。
◆15年続けたバレエをやめて、世界が色づき始めた
──土居さんは、子どもの頃からクラシックバレエをやられていたのだとか。
土居:クラシックバレエは3歳から18歳まで続けていました。母親が若いときにジャズダンスをやっていて、私にはバレエをやらせたいと思ったみたいで。ただ私は基礎的なバーレッスンは好きじゃなくて(苦笑)。
発表会で衣装を着て、役を演じるのが楽しかったんですよね。毎回、幕が上がるとき、スポットライトを浴びながら舞台の袖から出ていく瞬間がなによりも好きでした。「表現するって楽しいんだ」と感じられるようになった原点はバレエですね。
──15年も続けたバレエをやめるのは、大きな決断でしたね。
土居:そうですね。高校1年のときに大きなコンクールに出たのですが、それが終わってからいわゆる「燃え尽き症候群」になってしまったんです。でもバレエ推薦で高校に入学している手前、やめたいとは自分からなかなか言えず。朝も起きられなくなって、正直限界でした。
親も私の様子に気づいていて、私が「もうバレエを続けられないかもしれない。普通に進学したい」と告げたら、すんなり理解してくれました。
──似たような話をバレエ経験者である他の女優さんからも聞いたことがあるんです。その方は、自分を抑圧し続けてきたけど、バレエをやめた瞬間、「これからは好きなことをしていいんだと思った」とおっしゃっていましたよ。
土居:まさに。それまで灰色だった世界がようやく色づき始めたみたいな感じで。今でこそ撮影前もぐっすり眠れる能天気な私ですが、それもすべてのネガティブはその時期に置いてきた感じです。
◆オープンキャンパスで映画監督・林海象に出会う
――バレエ、大変だなあ……。そこからなぜ俳優業に?
土居:それまで受験勉強を一切してこなかったので、その時点で受けられる大学を探して、いろいろと資料を取り寄せたんですが、パンフレットが一番きれいだったのが京都芸術大学で(苦笑)。
最初は、ダンスコース(現:演技・演出コース)を志望する予定だったんですが、オープンキャンパスに行ったとき、たまたま参加した「エチュード(即興演劇)」のワークショップに参加したら、それがすごく楽しくて。
教授であり映画監督の林海象さんも、おもちゃの拳銃を振り回したりしていて面白い人だなと思って見ていました(笑)。
――運命ですね。また話しますがうちの妻も海象さんに導かれた人生だったんです。
土居:そうなんですか。大学に入ってから、お芝居もすごく楽しめて今もどんどん解放されていっている感覚で、その意味で導かれました。
――きっとご家族も喜んでいらっしゃるのでは。
土居:今回は父が一番ソワソワしているみたいです(笑)。母も、3歳下の弟も、これまでも私の舞台を毎回見に来てくれて、一家総出で応援してくれてますね。
◆印象に残っている俳優は天海祐希
──ここで改めて土居さんのこれまでの経歴を振り返ると、いろいろと研鑽を積まれていらっしゃる。映画『リバーズ・エッジ』では、主人公の友人「小山ルミ」役で、性的表現を含むシーンにも挑んでいます。
土居:懐かしいですね。この映画は大学卒業後、上京して初めてつかんだ役なので、とても印象深くて。あの行定勲監督だし、岡崎京子さんの原作も好きだったので強い思いでオーディションに臨みました。
――共演した中で印象に残っている俳優さんはいますか?
土居:天海祐希さんです。ドラマ『緊急取調室』にゲスト出演したとき、初めてお会いしたのですが、まるで後光が差しているようでした。その後、『広島ジャンゴ2022』という舞台で共演させていただいた際には、「こんなに“背中”で導いてくれる、カッコいい座長がいるんだ!」と思って。
後輩にあれこれアドバイスするというより、天海さんが稽古している姿を見ていると、こちらも自然と「頑張ろう」と思えてくるんです。とても優しくて素敵な方で、またぜひご一緒したいですね。
――あと、これも僕、びっくりしたんですけど、土居さん10年ほど前には先ほど名前が挙がった林海象さんの作品にも出ていらっしゃる。
土居:京都芸術大学に在学しているときですね。当時、海象さんが私が在籍していた映画学科の学科長だったんです。
──実は僕の妻を弁護士に導いてくれたのも海象さんなんですよ。東大に入学したものの、飲んだくれてた時期に「ふさこ、お前は弁護士になれ」と海象さんに一喝されたんです。
土居:そんなつながりがあったとは! 海象さんは先生でもありますが、“近所のおじいちゃん”のような存在。遊び心がある方で、とても楽しい方ですよね。
◆よねと自身との共通点は幼少期の体験
──これまで演じられたことがある役は、いずれもロングヘアだし、笑顔がある役が多い。いずれもよねとはギャップがありますね。
土居:今回のお話をいただいたとき、演出の方から「みんなから“一歩引いて”見ている感じが、よねだと思った」と言われたんです。そのときはピンとこなかったんですが、よくよく考えてみると子どもの頃、父の仕事の都合で転校がとても多くて。
転校先の学校では人気者になることもあればいじめられることもあり、周りの大人やクラスメイトの様子を常に観察していたんですよね。「この人たちは、今何を求めているんだろう」「どうやったらこの輪に入っていけるんだろう」って。
――『虎に翼』でも、よねが寅子たち女学生の輪から離れているシーンがたびたび描かれていましたね。
土居:女子部のみんながワイワイお弁当を食べているとき、よねだけひとりパンをイライラしながらかじっているシーンは、自分以外の人が楽しそうにしていて、自分は輪に入っていけない当時の気持ちが演じながらも蘇ってきました。
◆次作はよねとはまったく違う役
――今、土居さんには出演オファーが殺到していると思います。よねのイメージとしばらくの間は闘わないといけないのでは。
土居:そうですね。『虎に翼』がきっかけで私を知ってくださった方が多いと思うので、ここからどう変化していくのか、楽しんでもらえるように頑張りたいです。ちなみに今はまだあまり詳しいことを話せないんですけど、次作はまったく違う役で、長い髪のウィッグを被って演じることになると思います。
──先ほど話に出たように、作品によっては性的なシーンも演じられているようですが、自分なりにお仕事を受ける基準って何か決めてらっしゃいますか?
土居:明確な基準というのはなくて、あくまで「直感」ですね。今はとにかくお芝居が楽しいので、どんな役にも挑戦したいです。
◆ドラマのような意外なつながり!?
──いや~今日はおもしろかったです。あっ、そうそう最後になりましたが、こちらどうぞ。妻が出した本なんです(三輪氏の著書を手渡す)。
土居:え、待って。私、知ってる、三輪さんだ。京都にいたとき、三輪さんの事務所に行ったことある。
──はて?
土居:それこそ海象さんのゼミで、弁護士事務所のオフィスを借りて撮影したんですよ。そのとき、きっとお世話になってます。でも私が二十歳になる前のことだし、三輪さんは覚えていないと思います。
──本当ですか。ちょっとドラマみたいですね……。帰って妻にも伝えてみます。今日はありがとうございました!
【Shiori Doi】
1992年、福岡県出身。京都芸術大学卒業。’13年、林海象監督作品『彌勒』でデビュー。その後、映画『リバーズ・エッジ』『二人ノ世界』などの作品に出演。’24年、NHK連続テレビ小説『虎に翼』にレギュラー出演。主人公・佐田寅子の学友、山田よね役を熱演。
取材・構成/樋口毅宏、週刊SPA!編集部 文/アケミン 撮影/植田真紗美 スタイリスト/中村剛 メイク/国府田圭
―[インタビュー連載『エッジな人々』]―