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スプリンターズステークスで外国馬は買うべきか? 過去に勝利を収めた外国馬の好走パターンから推理

日刊SPA! 2024年9月28日 8時25分

 今週は「スプリンターズステークス」。ついに秋のGⅠ戦線がスタートします。今年のスプリンターズステークスは昨年の勝ち馬ママコチャや今年の高松宮記念勝ち馬マッドクール、さらにサトノレーヴやピューロマジックといった夏に重賞を勝ってきた上がり馬もおり、非常に濃いメンバーで行われます。
 そして、その「濃さ」に一役買っているのがビクターザウィナー、ムゲンの香港馬2頭でしょう。そして同時に、予想における悩みの種かもしれません。

 これまで3頭の海外馬がスプリンターズステークスを制覇。その3頭の共通点を解説しながら、今年出走の2頭が「買いか否か?」を判断したいと思います。

◆国内トップスプリンターを完封(2005年/サイレントウィットネス)

 最初にスプリンターズステークスを制した香港馬はサイレントウィットネス。レベルが高い香港短距離界において、今でも語り継がれる名馬です。その理由は、デビューからG1 8勝を含む無傷の17連勝という圧倒的な実績。特に8連勝目にあたる初G1香港スプリントでは、前年の覇者であるオールスリルズトゥーや香港短距離三冠馬グランドデライト、南アフリカ史上最速と言われていたナショナルカレンシーといった実力馬を降したことが評価されました。

 香港馬特有の雄大な馬格が持ち味であり、馬体重は2005年のスプリンターズステークス時点で558kgを記録していました。圧倒的な筋肉量から繰り出すスピードと、強靭な足腰が織りなす粘り強さが武器。

 スプリンターズステークスでは前半3ハロン32.9秒のハイペースを3番手で追走すると、直線でも勢いは衰えず押し切り。2着には前年の勝ち馬デュランダル、3着には同年の高松宮記念勝ち馬アドマイヤマックスが追い込んでいたように、完全な差し決着でした。この流れを押し切れるのが一流のスプリンターたる所以でしょう。

◆ハイペースで影をも踏ませぬ逃げ切り(2006年/テイクオーバーターゲット)

 翌年も日本の短距離界に黒船は襲来。前年の覇者サイレントウィットネスと共に海を渡ってきたのがオーストラリアのテイクオーバーターゲットでした。

 2012年にオーストラリア競馬名誉の殿堂に選定された名馬。デビューから7連勝でG1を制すると、その後6連敗を挟んだものの2005年末に覚醒。グローバルスプリントチャレンジを目指してイギリスのG2キングズスタンドステークスを制覇。そして迎えたのが日本のスプリンターズステークスでした。

 前年の覇者サイレントウィットネスや芝、ダート問わず優れたスピード性能を見せていたメイショウボーラーが参戦したことで前半3ハロンは32.8秒のハイペース。これらを引き連れる形で逃げたテイクオーバーターゲットは厳しい流れをものともせず、2馬身半差の完勝で逃げ切りました。これにより、最終レースの香港スプリントを待たずにグローバルスプリントチャレンジの総合優勝を確定させ、世界一のスプリンターの称号を獲得しました。

 香港と同じく、オーストラリアも短距離~マイル路線の育成が盛んな国。テイクオーバーターゲットも馬体重はスプリンターズステークス時で518kgと非常に大きく、圧倒的なスピード持続力を武器に逃げ切りました。

◆人気薄での逃亡劇で波乱を演出(2010年/ウルトラファンタジー)

 その後は少し海外馬の参戦が少なくなっていましたが、2009年にシーニックブラストが久しぶりの参戦(3番人気16着)。その翌年の2010年にはグリーンバーディーとウルトラファンタジーの2頭が参戦しました。

 実はこの年、海外馬で人気を集めていたのはグリーンバーディーの方でした。同年にシンガポールのGⅠクリスフライヤー国際スプリントにて当時の短距離最強格だったロケットマンを降して勝利。日本でもセントウルステークスで2着に好走していたこともあり、その勢いに注目が集まっていたのです。

 一方のウルトラファンタジーは、G1で2着もありましたが、過去の海外馬などと比較しても実績面で劣っていました。しかし、スプリンターズステークスでは前半3ハロン33.1秒の速めの展開を4コーナー先頭で迎えると、そのまま勢いは衰えずダッシャーゴーゴー(4着降着)をわずかに凌いで押し切りました。なお、1番人気に支持されていたグリーンバーディーは後方から伸びきれず7着に敗れています。

 やはりウルトラファンタジーは香港馬らしく筋肉量の非常に豊富な馬体。540kgの巨漢を活かした粘り込みはサイレントウィットネスを彷彿とさせました。逆にグリーンバーディーは488kgと決して大型ではなく、後方から末脚を活かす脚質も合わなかったと見てよさそうです。

◆共通点は「馬格」と「スピード持続力」

 ここまで3頭の勝ち馬を振り返ってきましたが、共通しているのは2点。

 1つ目は「馬格」で、スピードを生むのは筋肉。そして筋肉量は馬体重に比例します。実際にスプリンターズステークスにおいて海外馬で馬体重が500kg未満だった馬の成績は(0.0.0.8)と好走例はありません。一方、500kg以上は(3.0.2.17)で単勝回収率は100%超え。特に540kgを超えると(2.0.1.4)で好走率はさらにアップしています。

 そしてもう2つ目が「スピード持続力」であり、中山競馬場芝1200mは前半部分が下り坂のため、ペースが速くなりやすい傾向があります。直線は短いので後方一気は決まり辛く、ハイペースを追走して粘り込むという適性が重要になります。こちらも実際にスプリンターズステークスにおいて海外馬で4コーナー3番手内だった馬は(3.0.0.1)。一方、4番手以下になってしまった馬は(0.0.1.24)と苦戦しています。

 今年出走するビクターザウィナー、ムゲンの2頭。当日の馬体重は現時点で不明ですが、2頭が参戦した今春のチェアマンズSPというレースでは前者が498kgで後者が502kgとなっています。「馬格」という面ではムゲンに分がありそうです。ただ、そのレースでは前で競馬を進めたビクターザウィナーに対して、ムゲンは後方から。「スピード持続力」という点ではビクターザウィナーが有利でしょう。

 つまりどちらも、過去の勝ち馬の好走パターンの片方しか満たしていません。よって、筆者としては馬券的にはあくまで押さえまでと予想しています。2頭の比較では「馬格」の面でわずかに劣っただけのビクターザウィナーの方がよりチャンスはあるかなという見立てです。

文/安井涼太

【安井涼太】
各種メディアで活躍中の競馬予想家。新刊『安井式上がりXハロン攻略法(秀和システム)』が11月15日に発売された。『競走馬の適性を5つに分けて激走を見抜く! 脚質ギアファイブ(ガイドワークス)』『超穴馬の激走を見抜く! 追走力必勝法(秀和システム)』、『安井式ラップキャラ(ベストセラーズ)』など多数の書籍を執筆。

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