大正11年(1922年)に信託法と信託業法という信託二法が制定されてから100年が経過しました。1924年に信託業法に基づく我が国最初の信託会社として三井信託が、翌1925年には住友信託が設立され、当社グループも100周年を迎えます。
歴史を振り返ってみると、この信託二法が可決された国会で当時の高橋是清・大蔵大臣は「日本の国で家計の資産を適当に管理する人がなくて散逸してしまうことが非常に心配だ。こういうことを防ぐためにも信託というのは必要なのだ」という趣旨の演説を行っています。法成立の背景に、当時 信用力の乏しい信託会社が乱立しており、顧客が損害を被ることも多かった事情が読み取れます。
そして、この信託二法が施行された大正12年9月に関東大震災が日本を襲います。信託二法に基づく、我が国初の信託会社設立に奔走していた三井信託初代社長・米山梅吉は、財産を失った多くの人々の悲惨な姿を目の当たりにして一時呆然としましたが、その時、外国の友人から「こういう時のためにこそ信託会社というものが必要なのではないか」と励まされ、ますます財産管理を使命とする信託会社の必要性を痛感したといわれています。
住友信託の設立趣旨書には「受託者は最善至高の信義、誠実をもってこれを行うのでなければ決して信託は成立するのもではありません。信託の根本要素はどこまでも信任と誠実とでありまして、自ずと『信託制度は信用制度の最後の産物なり』と言わなければなりません」とあります。
また、我々の源流の一つである中央信託銀行は1962年(昭和37年)に「清新強力な信託銀行をつくりあげてゆこう」という思いから設立され、信頼と創造を合言葉として信託事業に取り組んできました。
100年前、信託会社ができた頃の宣伝チラシが残っています。「未亡人の財産はいかにしてなくなったか」という表題の4コマ漫画です。亡くなったご主人が未亡人と令嬢に十分な財産を残す。そこに悪い金融業者が来て、値上がり確実と言ってボロ株を買わせる。財産を失った2人はやむなく女工として働くことになる。その後、未亡人は信託会社の存在を知り、もう1年早く知っていたら、かくまで身を落とさずに済んだのにと嘆く筋書です。当時の世相をよく表していると思います。
それから100年を経た今日、「信託」の果たす役割は益々大きくなっています。例えば、家計においては、人生100年時代を迎え、財産の管理運用の重要性は増しており、貯蓄から投資への流れの中で信託銀行の果たす役割は更に広がっています。また次世代への資産承継も大きなテーマであり、信託の仕組みが生かされています。
一方、気候変動問題は人類共通の課題であり、脱炭素を進めるには巨額の投資が必要です。政府や機関投資家の資金に加え、家計の金融資産をこうした分野に循環させるためにも信託機能の活用が期待できます。
信託は委託者(お客様)と受託者(信託銀行等)の高度な信頼関係の基に成り立つものであり、お客様本位の姿勢を貫くとともに、高い専門性をもって、商品サービスの提供に努めなければなりません。
そのためにも創業当時の人々の「信託」にかける熱い思いを振り返ることは有意義でしょう。創業100年を機に今一度「信託」の原点を確認し、次の新たな100年に向けてその発展を期したいと思います。
歴史を振り返ってみると、この信託二法が可決された国会で当時の高橋是清・大蔵大臣は「日本の国で家計の資産を適当に管理する人がなくて散逸してしまうことが非常に心配だ。こういうことを防ぐためにも信託というのは必要なのだ」という趣旨の演説を行っています。法成立の背景に、当時 信用力の乏しい信託会社が乱立しており、顧客が損害を被ることも多かった事情が読み取れます。
そして、この信託二法が施行された大正12年9月に関東大震災が日本を襲います。信託二法に基づく、我が国初の信託会社設立に奔走していた三井信託初代社長・米山梅吉は、財産を失った多くの人々の悲惨な姿を目の当たりにして一時呆然としましたが、その時、外国の友人から「こういう時のためにこそ信託会社というものが必要なのではないか」と励まされ、ますます財産管理を使命とする信託会社の必要性を痛感したといわれています。
住友信託の設立趣旨書には「受託者は最善至高の信義、誠実をもってこれを行うのでなければ決して信託は成立するのもではありません。信託の根本要素はどこまでも信任と誠実とでありまして、自ずと『信託制度は信用制度の最後の産物なり』と言わなければなりません」とあります。
また、我々の源流の一つである中央信託銀行は1962年(昭和37年)に「清新強力な信託銀行をつくりあげてゆこう」という思いから設立され、信頼と創造を合言葉として信託事業に取り組んできました。
100年前、信託会社ができた頃の宣伝チラシが残っています。「未亡人の財産はいかにしてなくなったか」という表題の4コマ漫画です。亡くなったご主人が未亡人と令嬢に十分な財産を残す。そこに悪い金融業者が来て、値上がり確実と言ってボロ株を買わせる。財産を失った2人はやむなく女工として働くことになる。その後、未亡人は信託会社の存在を知り、もう1年早く知っていたら、かくまで身を落とさずに済んだのにと嘆く筋書です。当時の世相をよく表していると思います。
それから100年を経た今日、「信託」の果たす役割は益々大きくなっています。例えば、家計においては、人生100年時代を迎え、財産の管理運用の重要性は増しており、貯蓄から投資への流れの中で信託銀行の果たす役割は更に広がっています。また次世代への資産承継も大きなテーマであり、信託の仕組みが生かされています。
一方、気候変動問題は人類共通の課題であり、脱炭素を進めるには巨額の投資が必要です。政府や機関投資家の資金に加え、家計の金融資産をこうした分野に循環させるためにも信託機能の活用が期待できます。
信託は委託者(お客様)と受託者(信託銀行等)の高度な信頼関係の基に成り立つものであり、お客様本位の姿勢を貫くとともに、高い専門性をもって、商品サービスの提供に努めなければなりません。
そのためにも創業当時の人々の「信託」にかける熱い思いを振り返ることは有意義でしょう。創業100年を機に今一度「信託」の原点を確認し、次の新たな100年に向けてその発展を期したいと思います。