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「動かぬ」証券取引等監視委、詐欺事件多発で役割問われる

財界オンライン 2021年8月30日 18時0分

不正取引を摘発する「市場の番人」である証券取引等監視委員会の存在感が急速に低下している。証券不祥事をきっかけとして1992年に発足した監視委は30年の節目が迫るが、近年は摘発件数が大幅に減少、20年度の検察への告発件数はわずか2件にとどまった。かつては村上ファンドによるニッポン放送株のインサイダー取引事件や、オリンパスの粉飾決算事件などを果敢に摘発し、刑事事件化するなど存在感を発揮してきた。

 近年、監視委が精彩を欠く背景には、複数の要因が指摘される。一つは人材の問題。「職員の世代交代が進み、大規模なインサイダー事件など捜査・調査の経験を積んだスタッフが減っている」(金融庁幹部)という。実際、課徴金事案では、調査の詰めの甘さから、処分を不服とした個人や企業が取り消しを求めた裁判で、監視委側が敗訴する例が目立っている。

 また、検察当局との関係の変化も影響していると見られている。前監視委員長の佐渡賢一氏(元東京地検特捜部検事、元福岡高検検事長)体制ではインサイダーや粉飾決算事件など不正取引に大胆に切り込んだ。東京地検が動かなければ、他の地検に案件を持ち込んでまで刑事事件化する勢いだった。

 ところが、佐渡氏が摘発に執念を燃やしていた東芝の不正会計事件では検察当局の厚い壁が立ち塞がり、事件化が見送られた。関係筋によると東芝案件での”挫折”をきっかけに、監視委内では「検察当局の意向をうかがうムードが強まった」とされ、その流れは今も続いている。

 コロナ禍による相場の乱高下に乗じた相場操縦紛いの取引や、再生可能エネルギーブームを背景にした太陽光発電絡みの悪質業者の跋扈など、市場を巡る怪しい動きは枚挙に暇がない。

 市場では「今、番犬が吠えなくてどうする」(大手証券幹部)と嘆く声も出ており、監視委はどう応えるか。監視委は大きな岐路に差し掛かっているようだ。

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